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偶然。  作者: 璃維
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【30代半ばの話】

淡い期待は願望になって執着を生む。

失われた先にあるものは。

どうしてこうなったのかが全く分からない。

ただ認められたくて、褒められたくて、難関中学を受験し合格、娯楽を断ち勉強に打ち込み、模試でも全国1位を狙うために分析を続け弱点をつぶし、定期考査の校内順位は常に1位が当たり前。

周りからは「勉強が娯楽」と言われていたけれど、実際は自分で自分の首を絞めているだけだった。

自傷した数などもう覚えていないし、今も少しだけ痕が残っている。

そして国公立大に進学、地方公務員になった。

最初はこれでようやく褒められる、認められると思っていた。

けれどそんなことはなかった。

上に行けば行くほどさらに上を求められ、終わりなどないことを知った。

これまで褒められたい一心で自分が築き上げてきたものは一体何だったのかと思うと、これから何のために生きていけばいいのかわからなくなった。


今やなんでもデジタル化、機械の手助けや調整、その他の雑務をこなすのが人間の仕事のようだ。

こんなことをしたいのではなかった。

地方公務員でなくてよかった。

国公立大でなくてよかった。

進学校でなくてよかった。

難関中学じゃなくても。

なんだってよかった。

どうせ何をしても、満たしてほしい相手から、満たしたい対象を与えられることなどないのだとわかっていたら、もっと早く気づけていたら、もっと、もっと、もっと、親に愛されるように生きていけたら、理想通りになれていたら、親が望むだけのものをすべて用意することができたならこんなことにはならなかったはずなんだ。

こんなことを考えながら、それでもいつものように業務をこなして定時退勤してきてしまった。

いつもより脳を使ったからか、うまく思考が働かない。

心なしか脚もがくがくと震えている。

いつもなら躓くことなどない段差に躓き転びかけてその場に蹲った。

ゆっくりと立ち上がり、歩いているのに這いつくばっている気分になりながらなんとか列に並ぶ。

電車が近づいていることを音で知り、すぐにでも乗り込みたくて、人をかき分け電車に近づいた。


7月21日、18時54分。

いつものアナウンスが聞こえて、なんか痛くて、軋み、砕ける音がしたような気がする。

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