【10代後半の話】
誰かにとっての完璧は、当人にとってはそうではないかもしれない。
周囲に言われるまま高校に進学、自分の学力で行ける高校で、一番偏差値の高いところへ行った。
授業に追いつけないわけではない。部活もしている。ついでに恋人もいる。
成績は上位1割で、このままなら推薦枠をもらうことができるため、進学にさほど労力を割かなくて済む。
部活は書道にした。もともと硬筆が得意なほうで、筆を使うのも悪くないと思った。
さすがに鉛筆と同じようにはいかなかったが、いくつか賞を取ることもできたので、悪くはないほうだと思う。
恋人とも概ね良好な関係を築くことができている。
人の見た目で良し悪しを決めるわけではないが、客観的に見てもいいほうに入ると思う。
周囲はすごいとか勝ち組だとか言ってくるけれど、実際そんなことはない。
毎日同じことの繰り返しで、適当に生きていたらこうなっただけのこと。
羨むなら変わってほしいくらいだ。
なんの面白みもない人生なんて、生きるに値するのか教えてくれ。
昨日、恋人と待ち合わせをしていた。
公園に着くと、恋人はまだ来ていなかった。
そして、普段は人などいない公園なのに小学生がいた。
傍らには国語の教科書とカードが置いてあり、宿題があることを察した。
時間にはまだ余裕があったため、挨拶から軽く話して音読を聞いてやった。
よく通るいい声で変なクセもなく聞きやすかった。
つい聞き入ってしまい、一人で満足したまま恋人と合流してしまったが、きっとそこまで気にされてもいないだろう。
そんなことよりも、恋人と一緒に行ったカフェで話しているときに切り出された別れについて考えるほうが先だ。
あれはどういう意味なのだろうか。
まさか本当に関わりたくないと思っているのだろうか。
今日は補講がある。
補講が終わったら、恋人と話をしよう。
そして昨日の公園に行って、音読の感想を伝える事にしよう。
学校に向かうため、もうすぐ来る電車を待ちながら考えていると、ふいに後ろから何かに押されたような気がした。
7月18日、9時24分。
視線の先に放り出された携帯で身体が落ちていることを知り、先に地面に叩きつけられた携帯に表示されていた画面がそれだった。




