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58 婚活パーティーよ!!




サザンジール家の一室に、華やかな会場が設けられた。そこには、軽食の並んだテーブルを囲み、紳士・淑女が談笑している。


私はその会場に一歩踏み出して、隣にいるアデルに微笑みかけた。


「さて。婚活パーティーよ!!」


「‥‥‥‥‥」


隣にいるアデルが遠い目をしているのは、言うまでもない。


さて。何故、こんなことをしているのか。これは、サイモンを取り戻すため、王宮騎士団を辞めてしまった十人をモトサヤさせる作戦の一端だ。

辞めてしまった十人のうち五人は、婚約者がいない。そこにつけ込み、婚約者を探すためのパーティーを開いて全員を一気に同じ場所に集めたのだ。

機会を見て、辞めた事情を聞き出し、説得しようと思っている。

また、騎士団を辞めた彼らは、現在無職の状態に当たる。パートナーが見つかれば、「働かなければ」と思い、騎士団に自然と戻ってくれることを期待している。王宮騎士団は給金がいいしね!


「こんな突拍子もないことを思いつかれるなんて‥‥‥」


アデルはため息をついた。確かに、この世界では婚活パーティーなど珍しい。というか、聞いたことがない。元の世界では当たり前だったのにね。


「ケイト様に変な虫がついたらと思うと、気が気じゃありません」


「そうねえ。でも、私もそろそろ婚約者も決めなければならないしね」


「え?」


アデルが虚を突かれたような顔をする。


「今までが異常なのよ。私は公爵家の一人娘だし、はやく婿を取らなきゃいけないの」


性格が悪すぎて婚約者もろくに作れなかったが、そろそろ本格的に考えなければならない時期にはなっていると思う。お父様は何も言わないけどね。

条件としては、まず第一に声優の仕事を理解してくれる人。次に、声を聞いていて癒される人。このくらいかな。あとは、公爵家として信用できるかとか、家格が釣り合っているかとか、家としての問題ね。


「まあ、私のことは二の次よ。出来たら、ラッキーくらいで。今回は騎士団の人に話を聞くことがメインだからね」


私はカラッと笑ってアデルの肩をポンポンと叩く。しかし、彼の表情は晴れない。


「あ。アデルもいい人見つけたら、その人と話してもらって大丈夫よ!」


「そうですか」


全然大丈夫だ。推しに恋人がいようが、結婚相手がいようが、オールオッケー。


そりゃね。前世で、中村さんの結婚発表を聞いたときは、三日間くらい体調が優れなかったよ。ごはん美味しくなかったし。

けど、三日目に想像して、発見してしまったんだ。


子供がいる推しの姿を。子供にしか向けない優しい声色を。


それはそれは、萌えしかないとね。


推しが恋人や家族を大切にするのは解釈一致でしかない!そんな姿を見せてくれるなんて、なんて推しは尊い存在なんだ‥‥!


もちろん、そこから浮気とかのスキャンダルはダメ。解釈不一致だし、演じているキャラクターのイメージを崩しかねないからね。


「アデル?」


「いえ。それならば、ケイト様とずっと話していなければならないと思ってしまって」


「気を使わなくてもいいのに。でも、嬉しいわ」


さあ。気を引き締めて、話を聞きに行こう。はじめて体験するパーティに、参加した人達は戸惑っているようだった。しかし、全員と僅かな時間で一対一で話す企画や、ミニゲームによって、場は大分あたたまっている。

皆が思い思いに、気になる人と会話をしていた。


まずは、一番若い人から。騎士団で最年少の彼は、気弱そうな印象で、ちょうど女性と会話が終わったところだった。


「はじめまして。ケイト・サザンジールと申します」


「は、はじめまして!今回はこのような会に呼んでいただき‥‥」


「堅苦しいことはおっしゃらないで。それよりも、交流を深めましょう」


「は、はい‥‥‥」


私が微笑みかけると、彼は僅かに顔を赤くした。

そこからいくつかの会話を重ねた。趣味はとか、好きなものとか、最近の楽しみとか。

私の場合、全ての答えが声優だから、誤魔化すのが大変だった。


いくつかのターンを経て、私は核心を突きにいく。


「ところで、ご職業は何をされてらっしゃるのですか?」


「‥‥‥今は、子爵家の手伝いをしています」


彼は少し恥ずかしそうに俯く。やはり、騎士団を辞めたことに後ろめたさを感じているようだった。


「そうなんですね。ご実家の手伝いをされて、親孝行なのですね」


「いえ。以前は、王宮騎士団に入っていたのですが、辞めてしまい‥‥‥」


「そうだったんですね」


さも、はじめて聞いたかのように相槌を打つ。


「差し支えなければ、どうして辞めてしまわれたのか聞いても?」


その瞬間、彼の顔が曇った。これは聞いてはいけない質問だったのかもしれない。ケイトは慌てて質問を取り下げようとしたのだが。


「実は、騎士団の団長に関して変な噂が流れて。最初は信じていなかったんですけど‥‥‥」


これは、さっそく耳寄りな情報だ。変な噂の正体を絶対に聞き出さなければ。


「けど、その証拠が出てきて。俺、団長がそんなことしてたなんて、嫌で嫌で」


「それは、なんですか?」


私は彼の肩を掴んで勢いよく尋ねた。彼は瞬きを二回して、ゆっくり口を開いた。


「それは、言えません。それに、言うべきことではありませんので」


あとちょっとなのに。もどかしい。けれど、無理やり口を割らせるのはよくない。


それにしても、「言うべきことではない」とはどういうことなのだろうか。騎士団長が犯罪を犯していたとか?まさか。彼に限ってそれはあり得ないだろう。


「あの。でも、俺。頑張って働くし、貴族としての役割も果たすので。ケイト様‥‥‥」


「え?」


彼はケイトの手を握る。うん?


「俺、騎士団やめてよかったと思いました。騎士団には、少なからず命の危険が伴いますし、好きな人を一人にしてしまいますから‥‥‥」


「へ?」


まってまってまって。そっちじゃないってーーーーー!



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