57 悪役令嬢の見せ所
お久しぶりです‥‥‥!そして、お久しぶりになってしまってすみません!!
一度書いていた第二部の内容に行き詰まってしまい、シナリオを直しておりました。お知らせもなく更新停止してしまって申し訳ございません。これから、少し不定期に更新していくことになると思います。よろしくお願い致します。
長々とすみません‥‥!
↓久しぶりですので、簡単なこれまでのあらすじです↓
前回までのあらすじ。乙女ゲームの悪役令嬢に転生したケイト・サザンジール。前世、声優オタクだったケイトは、この世界で声優という職業を作ろうと決意。執事のアデルや騎士のサイモンを声優として、ラジオでデビューさせた。
声優としての仕事を確立すべく、人気ロマンス小説をラジオで使わせてもらえないかと交渉に行くも、出版社から追い出されてしまう。その帰り、強盗に襲われたところをリアリスという国家騎士団の団長に助けられる。ケイトたちは、彼に呼び出されたのだがー‥‥
「お願いだ。サイモン君を国家騎士団に入れてくれないだろうか?」
「え?」
リアリスは縋るように、私とサイモンを見た。
「彼は優秀な騎士だ。それは、この間見ていてすごくわかった。‥‥‥だから、君に俺たちの騎士団に所属してほしいんだ」
「ちょちょちょ、ちょっと待って下さい!!」
私はリアリスの言葉を遮る。そして、首を大きく横に振った。
「そんなこと急に言われても、私もサイモンも困ります。仕事もあるし‥‥‥」
そう、声優という大切な仕事があるのだ。苦労して声優になってもらったサイモンに抜けてもらっては困る。
「そうだよな」
リアリスは大きく頷き、眉を寄せた。その表情は本当に心苦しそうで、戸惑ってしまう。そして、彼はもう一度、頭を下げた。
「すまない。先程のは事実ではあるが、建前にすぎなかった」
「え?」
「ここ数日、騎士団員が一気に辞めていてな。正直、人手が足りないんだ」
想像もしていなかった言葉に、私は驚いて次の言葉を発せなくなる。その間に、リアリスはどんどんと現状の説明を始めた。
「強盗に遭遇した日に騎士団に戻ると、十人も騎士団を辞めてしまったんだ」
十人。こう聞くと人数は少ないように感じるが、実力主義の騎士団の中では大きな損失。代わりの面子が簡単に見つかるわけでは決して無い。
しかも、辞めることを宣言されたその日には騎士団を出て行ってしまったため、王宮を
皆が寝不足で、警備体制の量も、質も下がってしまっているという。
「一応、欠員募集はしているが、十人の代わりになるような人材はなかなか見つからない。そこで、サイモン君ほどの実力を持った人が一人でもいると違うんだ」
リアリスは再び頭を下げた。このように頭を下げられるのは、今日、何回目かが分からず、困ってしまう。
「頼む。一ヶ月‥‥‥‥いや、一週間でいい。体勢が整うまで、騎士団に身を置いてもらうことは出来ないか」
私がサイモンをチラリと見ると、彼は気まずげに視線を泳がせる。
リアリスはそう提案してくれるが、実際、一時的とはいえサイモンを入団させるのは厳しいと思う。サイモンは部外者だ。なんの面接もなく、王宮騎士団に入れることはいくら騎士団長とはいえ、出来ないのではないだろうか。サイモンも同じことを思ったようだった。
「あー‥‥‥その、俺みたいな部外者がいきなり入っていったら、問題あるんじゃないですか?」
「そこは大丈夫だ。君はスティール家のご令息だろう?ほとんど問題はない」
ご、ご令息‥‥‥!
身元がしっかりしているから、信頼できる。それに、緊急事態だから、王宮側もこれを認めるだろうとリアリスは説明する。
しかし、私は静かにショックを受けていた。最近忘れていたが、確かにサイモンにも貴族位があったのだった。
サイモンの方を見ると、どうやら彼も忘れていたようで目を見開いている。
「迷惑だろうが、人助けだと思って、頼まれてくれないか」
リアリスは最後の念押しとばかりに頭を下げた。サイモンは「頭を上げてください」と言って、少しだけ息を吐いた。そして‥‥‥
「いいですよ。一週間と言わず、一ヶ月くらい」
「えっ!」
その返答に、思わず私が反応してしまった。サイモンはそんな私の額を軽く押した。
「期間限定で、だよ。別に一生戻ってこないわけじゃない」
サイモンはそう言うが、一ヶ月はかなり長い。新しく始めたいこともあるし、何より忙しくなったらラジオ放送なんて出来ない。
それに‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
私は胸の奥底に湧き上がってきた感情を慌てて振り払った。
「ラジオ放送はどうするのよ!中途半端に投げ出すなんて許さないわよ!!」
「それはしっかりやる。‥‥‥‥すみません。ラジオ放送の時だけ抜けてもいいですか?」
サイモンはリアリスに目を向けると、彼は大きく頷いた。
「ああ。それは勿論だ!」
「ほら。俺も仕事はきっちりこなす」
「そう、だけど‥‥‥‥」
そうだけど。そうだけどさ。絶対に質は下がっちゃうし、外国語講座のシナリオも私が一人で考えなくちゃいけないし‥‥‥‥
でも、サイモンはもう決めてしまったようだ。彼は私の騎士だけど。騎士なのに、言うことは何にも聞いてくれないから、仕方がない。
「分かりました!サイモンが行きたいと言うなら、それでいいわ!」
決めた。サイモンがそう言うなら、それに異論はしない。けれど、黙って従うほど私は優しくない。
「けれど、欠員分の五人が見つかったら、すぐにでもサイモンには戻ってきてもらいます!」
「しかし、そんな簡単には見つからなくてな。訓練時間を考えると、少なくとも三ヶ月はかかるんだ」
リアリスは困ったように眉を下げる。私はふふっと口角を上げた。
「新たに見つけるとは言ってませんよ?」
そこで、副団長のクライヴ・ラドフォードが入ってきた。彼は「まだいたのか」という表情を惜しげもなく見せてくる。それに気づいていないフリをして、私は言葉を続けた。
「いなくなってしまった、十人を連れ戻します」
「それは‥‥‥」
不可能だと思うだろう。けれど、こちらには乙女ゲームの知識も財力もあるから。
「もちろん、一週間以内に」
不可能ではない。アテがないわけでもない。
さて、悪役令嬢の力の見せどころだ。




