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テラの不満

番外編です。テラの本音ダダ漏れにしたくて書いた話だったりします。



私、テラ・アストローラは、ここ最近苛々していた。理由は単純明快。

我が愛する主人に、男どもがよりついているからだ。


私の主人である、ケイト・サザンジール様は昔から大人泣かせの我儘令嬢だった。それ故に、お嬢様付きの侍女は誰もがやりたがらなかった。しかし、私は彼女のお世話を嫌だと感じたことはない。


母がケイト様の乳母であった関係から、ケイトのお世話を幼い頃から任されていた。なので、ケイトのことはなんでも知っている。


私はわがままを言う裏で、母のいない寂しさに泣いていたケイトを知っている。

友人が出来るようにと、人形と話して練習していた後ろ姿を知っている。

虐められていた子を助けたのに、自分がいじめっ子の烙印を押されて俯いていた姿を知っている。


そんな時代を経て、彼女は今、沢山の人に囲まれて毎日を過ごしている。楽しそうに笑っている彼女を見ると、「よかった」と純粋に思うのだ。

私は、そんな彼女を可愛らしく思っているし、幸せになって欲しいと心から願っている。


だからこそ、だ。ここ最近、ケイトによりついている男どもではダメなのだ。


「テラさん。ケイト様へお届け物がきているから、運んで下さる?」


「かしこまりました」


先輩侍女に頼まれて、私は荷物を持ち、ケイト様の部屋へと足を進める。

荷物は手のひらに収まるほど小さく、軽いため、運ぶことに労力は強いられない。しかし、私はその配送元を見て、そっとため息をついた。


配送元の名は「ルーク・ビリアン」ビリアン公爵家の長男である男からだった。公爵家とは色々あったケイトだったが、最終的にルークを恋に落とすという結果に帰着した。その報告をアデルから受けた時、思った。


どうしてそうなった、と‥‥


その答えは、今でもよく分かっていない。しかし、彼はケイトに相応しくないことだけは確かだ。


さて、彼の何がダメなのか。もちろん、彼の身分に申し分はない。性格も、多少融通が効かず、人を信じすぎてしまうきらいがあるが、基本真面目で実直、頭もいいらしい。

女性関係がだらしないということもなく、なかなかの好条件だ。


しかし、だ。ケイトを危険な目に合わせた時点でアウト。親交を深めるのでさえ、私的にはNGだ。

楽観的なケイトは、ルークからの贈り物を受け取り、手紙の返事を出し続けている。


「あの時のことは気にしなくていいって言ってるのに」と。彼からの贈り物がお詫びだと思っているのは、ルークが憐れで笑えてくるが。


若干の憐憫が湧いてくるとはいえ、ダメなものは駄目だった。


私はケイト様の部屋に辿り着く。コンコンと扉を叩く。人の気配はするものの、返事はない。仕方がないので、ゆっくりと扉を開き、中を伺う。


「失礼しますー‥‥‥」


「だから!難しめの文法よりも、簡単なのを出した方がいいって!」


「いーや。お前の提案する文法は簡単過ぎる。こんなの誰でも解けるだろう」


中では、文法書を開いて、ケイトとサイモンが喧嘩を繰り広げていた。その様子に、いつものことかと思った私は、会話が終わるのをそっと待つ。


「だから、それは貴方みたいに頭がいい人でなければ、出来ないって言ってるの!!」


何度か言い合いをしていたところで、ケイトが叫ぶ。と同時に、サイモンは一瞬固まり、そして頬を緩ませた。


「へえ、ふーん。お前、俺のことを頭がいいと思っているのか」


「はあ?!そういう話じゃないでしょ!」


「へえ」


「聞きなさいって!」


彼の赤くなった顔を見ればすぐに分かる。彼は、ケイトを好いていた。もちろん、恋愛的な意味で。


彼は伯爵家。家柄としても、問題はない。何より幼なじみという関係もポイントが高い。

性格は粗野な部分もあるが、情に厚く、妹がいることから、面倒見もいい。騎士としての才能もあり、優良物件ではあるが‥‥

彼は、ドのつく鈍感だから、却下。

いまだ自分のケイトへの気持ちにも気づかない鈍感さ。鈍感な男は気遣いが出来ない可能性があるため、認めることは出来ない。


それにしても、サイモンはケイトをからかいすぎだ。そろそろ間に入って、二人の言い合いを止めようかー‥その際に”うっかり”サイモンの足を踏もうかー‥いやいや。と考えていると、私の後ろからスッと人影が出てきた。


「サイモン、何をしているのですか?」


笑顔を浮かべながら、サイモンの腕を強く握るのは、他でもないアデルであった。彼もケイトに惚れ込んでいる一人‥‥‥いや。一番タチの悪い一人だった。


私的に、彼は何もかもがアウトだった。

彼は、かつてケイトに害を成そうとした人物である。にも関わらずしれっとケイトの側に居続けているのも気に入らない。


何より彼は。


「サイモン、駄目ではないですか」


「いや、これは‥‥」


「駄目ですよね」


「おう‥‥」


性格が、悪い。

ただこれに尽きる。彼は腹黒で計算高く、どうでもいい人には冷徹無慈悲になれる、そんな男だ。身内には甘い分、余計タチが悪い。


結婚したら、絶対独占欲の強さを押し付けるタイプ。嫉妬が行き過ぎたら絶対監禁するタイプ。どんなタイプだ。

とにかく、私はケイトが監禁されるところなんて見たくない。


「はあ、今日もいい声だなあ‥‥」


しかし、等のケイトは呑気に心の声を漏らしている。


「ケイト様、心の声が‥‥」


「大丈夫。テラの声もいいわよ」


何も大丈夫じゃない。もう少し危機感を持って欲しいと思う。そうでなければ、アデルは調子に乗ってしまうだろう。


「テラさん。何か文句でも?」


「‥‥‥いいえ」


ほら!こういうところ!!


こんな風に鋭くて、敵を確実に認識して排除しようとしているところ!腹黒い証拠だから!

私はアデルを斜めに見上げて、睨みつけた。


「‥‥ケイト様は渡しませんから」


「なんの話をしているのやら」


いけしゃあしゃあと、よく言う。


等のケイトは、「今日も供給が沢山だ」とホクホクしている。なんて?

本当に危機感がなくて、不安になってくる。それでも、私は別の仕事があるため、この部屋から出ていかなければならない。

後ろ髪を引かれながら業務に戻ろうとした時、彼女はこそっと私に耳打ちをした。


「テラ、心配はいらないわよ」


「‥‥‥‥‥‥‥存じております」


彼女は最後ににっこりと笑ってアデルとサイモンの元へ戻っていく。


その後ろ姿を見て、「ああ、本当に変わられたな」と思った。


意地を張って我儘しか言えなかった昔のケイトは、もういない。

今のケイト様は、天然なのに鋭くて。可愛らしいのにカッコよくて。隙だらけなのに抜け目がない。

そして、好きなのことに真っ直ぐで、キラキラしている。


‥‥‥私は、彼女の幸せをずっとずっと祈っている。だから、これからも見守っていこう。彼女が幸せな選択を出来るように。




裏話。

テラは自分の結婚相手にも高い理想を求めています。しかし将来は、最初は「絶対に好きにならない」と思っていた、少し頼りない軟派な男(テラが大好き)に絆されて、結婚を果たしそうです。

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