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EP 7

サーバーダウン! オタク軍団の経済力(税金還付)

「おい! 見ろよこれ! 魔法網(T-ネットワーク)にヤバいサイトができてるぞ!」

ルナミス帝国・第三兵士寮。

非番の屈強な兵士たちが、魔導端末の画面を囲んでざわめいていた。

「『ポポロ村・ふるさと納税』……? 寄付すると、翌年の住民税や所得税が控除される……だと?」

「おいおい、それってつまり、俺たちが国に払ってる重い税金が、そのままポポロ村への寄付にスライドできるってことか?」

「ああ。しかも……見てみろ、この『返礼品』のリストを!」

兵士たちの一人が、震える指で画面をスクロールする。

『ルチアナ様の直筆サイン入り・ガチャ運爆上がりお守り』

『リーザちゃんのカニ剥きASMR動画(カニの殻付き)』

『魔王ラスティア様にハイヒールで踏まれながらゴミを見るような目で見下される権利』

「「「な、なんだってえええええええええええっ!?」」」

寮の中に、兵士たちの絶叫が響き渡った。

「ば、馬鹿な! 推しの限定グッズがもらえる上に、俺の今年の住民税が安くなるだと!? 実質負担額はたったの2000G(2000円)じゃねぇか!」

「ラスティア様に踏まれる権利が、実質2000G……!? 風俗行くより圧倒的に安い! いや、むしろお釣り(精神的な)がくるぞ!!」

「俺はリーザちゃんのカニの殻を煮出して出汁を取るんだァァァッ!」

オタクにとって、「推し活」は常に金欠との戦いである。

だが、この『ふるさと納税』というシステムは、その常識を根底から覆した。「どうせ国に持っていかれる税金」を推しに貢ぐことができる。

それは彼らにとって、免罪符どころか『神が与えた奇跡バグ』に他ならなかった。

「今年のボーナス全額ぶち込めェェェッ!」

「俺の控除上限額ギリギリまで寄付だ! 手続き(ワンストップ特例)の書類も全部送れェェェッ!」

ルナミス帝国だけではない。

国境を越えたレオンハート獣人王国でも、同じ現象が起きていた。

数万、数十万というオタク兵士たちの『税金』が、ポチッ、ポチッという狂気的なタップ音と共に、ポポロ村の口座へと向けられたのだ。

――ポポロ村、村長宅。

「……ん? おい、なんか画面がおかしくないか?」

サイトをオープンして数分後。

俺は、コタツの上に浮かぶ魔導モニターを胡散臭そうに見つめていた。

ポータルサイトのアクセス数を表示するカウンターが、まるで壊れたスロットマシンのように高速で回転している。

「あら? 100、1000、1万……アクセス数が桁違いに増えていくわよ?」

ルチアナが目を丸くする。

その瞬間。

ピロリン♪

『ポポロ村に 10万G(ガチャお守り) の寄付がありました!』

ピロリン♪

『ポポロ村に 50万G(ドM踏まれチケット) の寄付がありました!』

ピロリロピロリロピロリロリロリロリロリンッッ!!!!

「うわああああっ!? な、なんですかこの音の嵐はぁっ!?」

リーザが耳を塞いで叫ぶ。

『寄付がありました!』『寄付がありました!』『寄付がありました!』というシステム音声が、千手観音のビンタのような速度で連続再生され、もはや一つの不協和音と化していた。

「……おいおい、マジかよ」

俺は【世界編集】のステータス画面を開き、ポポロ村の『村の予算(口座残高)』を確認した。

つい数分前まで、ブレイドの兵糧攻めで「ほぼゼロ」だった数字が、滝を登る鯉のような勢いで跳ね上がっていく。

1000万G……5000万G……1億G……3億G……。

「ひぃぃぃっ! ご主人様、魔導モニターが熱を持って煙を吹いていますぅ!」

クロエが、火花を散らし始めたモニターに慌てて冷却ポーションをぶちまける。

「大陸中の魔法網(T-ネットワーク)の帯域を、うちのサイトの決済トラフィックが完全に食い潰してるんだ……! オタクの執念、恐ろしすぎるだろ!」

大国のインフラですら耐えきれないほどの、凄まじいスパチャ(寄付)ラッシュ。

わずか一時間で、ポポロ村の口座には、ルナミス帝国の『年間国家予算の数パーセント』に匹敵する、莫大な額の現金(税収)が雪崩れ込んでいた。

「アハハハハハッ!! 見たか人間ども! これが私の魅力(需要)よぉっ!」

ラスティアが高笑いする。

「ちょっと待って! 踏まれチケット、1000枚以上売れてるわよ!? あんた、これから毎日1000人のオタクを踏みつけなきゃいけないのよ!?」

「えっ」

ルチアナのツッコミに、ラスティアの顔が青ざめた。

「わたくしも……カニの殻が足りませんぅ! もう一回蟹工船に乗って殻を回収してこないと……っ!」

リーザも、売れすぎた自分の返礼品に戦慄している。

「まあ、労働のことは後で考えろ。……とりあえず」

俺は、煙を吹くモニターの前で、ニヤリと口角を釣り上げた。

「ブレイドの野郎が物流を止めたせいで、俺たちには『金』が入ってこなかった。だが、これだけ莫大な『大国の税収(予算)』を合法的に引っこ抜いてやったんだ」

キャルルが、トンファーを下ろし、ワクワクした顔で俺を見る。

「リクトさん。このお金で、どうするんですかぁ?」

「決まってるだろ。ブレイドが作った商社の物流網ルートなんか、もう必要ない。……この金で、他の大陸の商人たちを直接金で叩いて、ポポロ村専用の『新しい物流ルート』を構築してやる」

経済制裁に対する、最も残酷なカウンター。

それは、敵の国の『税収』を奪い、その金で敵の『ビジネス』を無力化することだ。

オタク兵士たちの狂乱の『ふるさと納税』により、ポポロ村は一夜にして、大国すら凌駕するほどの圧倒的な資金力リソースを手に入れたのだった。

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