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虹時代 出来損ないの亡霊  作者: 小型旧人
常用薄明編
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機械仕掛けの黒い巨人

 地球軌道上で日本・ア連連合艦隊による決死の防空作戦が行われる中、太平洋のど真ん中の人工島――太平洋連邦首都――の地下では、学者らによる会合が開かれていた。

 会場に大量の椅子が、一方向を向いて並べられ、それらと向き合うように長机が置かれている。

 長机に並んだ席に着く白衣の人らは、和気藹々と雑談をしている。

「レイジヤシマのことを、軍事機密とか国家規模で探求することになるとは思わなかったな」

 若い男が呟くと、中年の男は得意げに口髭をなぞった。

「俺は昔から、レイジヤシマは宗教上の神よりも実在の英雄だと思っていたがな」

「先見の明がありますね。流石っす」

 若い男がそう讃えると、彼の隣の若い女が俯き加減に言った。

「私の親がレイジ教にどっぷり漬かってたので、ちょっと複雑な気持ちです……」

「おっと、それはすまない」

 その時、長机の先に設置された演台にいるスーツの男が声を張った。

「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。準備が整いましたので、これより『レイジ・ヤシマに関する研究成果発表及び質問会』を始めます。それでは、お願いします」

 スーツの男は、長机に並ぶ研究者たちに目配せした。

 それに合わせ、中年の男が立ち上がる。

「えー、私は、このたび設立された『火星関連歴史研究所』所長の金田です。これより、研究の中間報告を始めます。大原君」

 呼ばれ、若い男が立ち上がった。

「はい。まずは、通説や様々な文書として残っている、所謂『レイジ・ヤシマ伝説』ですが、今回の調査により、あれはほぼ脚色されていない事実である事が分かりました」

 会場が低く静かにざわめいた。そのざわめきが収まるのを待ったのち、背後に映し出された立体映像を見ながら男は話を続ける。

「……レイジヤシマは佐渡島から戦いを始め、ほぼ単独で日本列島を制圧。その後、複数の仲間と合流してオセアニア、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南アメリカ、アメリカ、の順で制圧。その頃には一個中隊規模の人数だったようです。たったそれだけで?と思うと思いますが、我々も思いました。しかし、これは既に様々な裏付けによって証明された事実です。多田」

 男が座り、若い女が立ち上がる。

「次に、レイジヤシマ自身の出生及び彼の仲間の出生の話になります。まず、レイジヤシマの父親が火星軍の男であることはご存知だと思いますが、特異体として生まれた理由は単純な偶然と思われます。他の虹力子を使う仲間たちは、火星軍に捕えられていた女性などから生まれた……性的暴行により生まれてきた子供であり、父親に火星人を持っているが故に虹臓を持っていたようです。現在の我々が虹力子を使えるのは、彼らの遺伝子が顕性遺伝して広まったからと考えられます。続いて、レイジヤシマの戦闘に関する話になります。彼は基本的に火星軍を単独で圧倒していましたが、一人……いや、一体だけ、苦戦した相手がいました。千年前の映像が残っています。これです」

 彼女は背後の立体映像を指した。その映像は平面へと姿を変え、黒い巨大な機械を映した。鋭利で角張った印象を持たせる形状で、ところどころに黄色いラインが入っている。その周りを虹の光が飛んでいる。

「この虹がレイジです」

 推し量るに、この機械は全長十メートル余り。大きさに反して動きは素早く、レイジ・ヤシマの放つ熱線を軽々と交わし続けている。映像の視点側に体を向けた時、それは凡そ人型である事が分かった。

 その人型の機械は、虹の揺らぎを身に纏い、時に噴射し、投射する。

「虹力子?まさか、これは人間なのか?」

「バカな、人間の筈が無い。こんな巨人など……」

「その方が馬鹿げてる。現代でさえ、虹力子の機械的模倣はできていないのだぞ」

 などと口走りながら会場の面々が食い入るようにそれを見る。

「この巨大な人型機体については、欧州解放日記に記述がありました。ロシアが開発した、半機械脳による半人、半機械の兵士のようです。寿命や老衰による制約なく戦闘を続けさせる事ができる兵士として試作されました。機械の体の中には小型原子炉が入っていたり、大量の固形燃料予備スラスター、高い電力による強度の高い虹力子防壁、威力の高い虹力子熱線、誘導弾、高出力推進など、様々な高性能兵器としての機能が入っています。最終的にこれはレイジに破壊されることはなく、火星に退却しました」

 一人、どこかから質問が飛んできた。

「要するに、そいつはまだ存在している可能性があると?」

「質問は後から――」スーツの男が言いかけると、彼女はそれを遮った。

「いえ、今答えましょう。可能性としては、有り得るかと」

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