星降る薄明
「お、めっちゃ火星のやつらニュースになってる。三国がそれぞれ独自で地球の軌道上で防空網張ってるんだって」
そう言いながら、暁斗は携帯端末の映し出す立体映像を見つめている。
緩降下中の飛行車の中、暁斗の隣で皐月は眼下の白い景色を見下ろしながら言う。
「火星の話がネットに出てから三日だ、連邦も既に各国に色々伝えてんだろ」
「なんで?」という暁斗の質問は皐月に向けて言われたものだが、答えたのは恵真だった。
「そりゃ、あっちは惑星丸々一丸になって総戦力出してんでしょ?対して地球で情報共有もなしじゃ、勝ち目ないじゃない」
恵真の隣に座る暁音が呟く。
「火星対地球、ただし地球はバリバリ内戦しているって状態な訳ね、確かに勝ち目ない」
「そういうこと」と言った恵真は少し得意げだ。
暫くしたのち、四人の乗る飛行車は神社の宿泊施設の隣に着陸した。
既に日は落ちかけ、空を覆う雲は橙色の光を乱反射している。
四人は飛行車を降りた。
恵真と暁音は足早に施設内に入る。
施設外に取り残された皐月と暁斗は、神社の職員に声をかけられた。
「ちょっと、こっちの雪かき手伝ってくれるかい?」
暁斗は「えっ」と軽く驚いたのち、施設のアクリル製自動ドアの向こうに向けて叫ぶ。
「おい、暁音、恵真、手伝っ……」だが、二人はもういなかった。
「クソ、逃げ足が早い」
と暁斗は毒づく。その様子を見た皐月は、暁斗に気休めを言った。
「今度あいつらにやらせよう」
暁斗はため息をつきながら、神社の職員のもとに駆け寄った。
暁斗と皐月は職員から携帯型の除雪機を渡され、掃除機をかけるように足元の雪を吸い取り、雪の排出ノズルから雪を吹き飛ばす。
厚く重なった雪を見ると、除雪が完了する様子の想像ができなくなる。
心を無にして除雪に専念しようとした皐月は、ふと空を見上げると、橙色の空の奥で、青白い閃光が走ったのを見た。
――――
「取りこぼしは無視しろ!飛来するミサイル群の対処に専念!」
「了解!」
艦橋の中で怒号が飛び交う。
地球を背に、平面グリッド状に並んだ艦隊は、一斉に主砲から虹の熱線を放った。
それら熱線は一直線に進んだのち、はるか遠方で、媒体のない真空の中音も無く爆発を起こした。
遅れて、強烈な耳鳴りが周囲一帯に鳴り響く。
熱線の爆発を追うように、実弾ミサイルの白煙が伸びて行った。
軍服を着た男は叫んだ。
「太平洋の艦隊はまだか!」
乗員が返す。
「月軌道、ラグランジュ点、いずれも動きありません」
「くそっ、ア連の連中と手を組んでまで防衛しているというのに、なんなんだ奴らは!人類の存亡を賭けた戦いだぞ!」
男は机を殴った。反動で磁気靴が床から少し離れ、焦って地面に足を伸ばす。
乗員が叫ぶ。
「取りこぼしのミサイル、来ます!」
「総員、衝撃に備え!」
そう叫んだ直後、艦内と定義される空間は消え去った。
艦隊の中央に大穴が空き、そこにいたはずの艦艇は僅かな破片と虹力子の残滓を残して、消えた。
恐怖する間も無く、艦隊の艦艇の艦橋に指示が響く。
「全艦、陣形修復!次の運動エネルギーミサイルに備え!」
虹の光を煌めかせながら、艦艇らは陣形の穴を埋めた。
彼方の宇宙から、彗星の如きダーツの矢の群れが近づいてきている。




