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トリプルクラウンの争奪者  作者: 夏を待つ人


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23話 交流戦優勝決定戦VSウォーリアーズ②

 三回の裏が終わる。


「ナイスピッチ! 糠さん」


 三塁側ダグアウト、島岡の声が響いた。

 一回二回と連続でノーアウト満塁のピンチを作ってしまったカウボーイズ先発投手、木佐糠。

 三回も満塁のピンチを背負ったものの、またしても本塁を踏ませることなく、相手の攻撃を凌いだ。


 三回を終えての投球数は72球。

 対するウォーリアーズ先発上菅の三回を終えての投球数は38球で、その数なんと倍近い。

 木佐糠の被安打は六、四球は四つ、ゼロで抑えているのがミラクルとしか言いようがない投球内容だ。

 三回連続で満塁を背負って一点も取らせないなんて、一試合完封するより難しいかもしれない。


 木佐糠が驚異的な粘りを見せている間に先制したいカウボーイズだったが、対峙するのは難攻不落の上菅だ。

 四回表、五回表ともにあっさりと三者凡退に終わる。


 陽翔は四回表、二打席目に立ったが、上菅の多彩な球種の前に的を絞ることができず、三振に終わった。

 球審が三振をコールした瞬間、上菅が陽翔へ向けてなんか叫んだ。

 どうせ楓絡みのことだろうが、歓声に埋もれて聞こえなかったので、陽翔は無視をした。


 四番の三浦がショートゴロに終わった後、陽翔へ言った。


「案ずるな、野球は九回だ」


 対して木佐糠は四回裏、ウォーリアーズ打線を三人で抑える。

 五回裏は一人ランナーを出したものの、ゼロに抑える。

 投球数は100球を超え、十人以上のランナーを出しながらも五回無失点。

 ベテランらしい粘りの投球で、先発投手としての役割を果たした。

 いや、何点取られるやらという一回の出来を考えれば、ゼロに抑えたのは役割を果たすどころか、十分すぎる働きだ。


 六回表の攻撃が始まる前、カウボーイズはダグアウト前で円陣を組んだ。

 上菅への対策、先制点の大事さ、チームの意識を共有して、攻撃に向かう。

 しかし、


「ストライク! バッターアウト!」


 球審の三振のコールで、この回が終わる。

 陽翔の体感的には一分も満たない内に攻撃が終わったように感じる。


 ここまで上菅を前にして、出したランナーは三浦の四球のみ。

 つまり無安打。


 昨日の試合、ヴィンセント・ケント相手に一本も安打ヒットを許さないノーヒットノーラン――ノーノ―をカウボーイズはくらっている。

 陽翔の脳裏に二試合連続ノーノ―という最悪のシナリオが浮かぶ。


 六回裏、カウボーイズのマウンドには中継ぎエース、平山が上がる。

 上菅の出来を考えると、一点もあげられない。

 今日は交流戦最後の試合で、明日から三日間試合がない。

 それらを踏まえると、この試合は中継ぎを出し惜しみせず、一点もやらないようにリリーフ総動員でいくべきだ。


 平山は七番の秋定を得意のフォークで三振。

 さらに八番の松本もセカンドゴロに打ち取る。


 三十歳中盤に差し掛かろうかというベテラン右腕は、ウォーリアーズの若き下位打線を簡単に打ち取っていく。

 その姿は頼もしく、見ていて打たれる気がしなかった。


 九番、打席にはピッチャーの上菅が入る。

 一打席目にヒットを打っているとはいえ、所詮はピッチャーで、野手より打力は格段に劣る。

 ささっとこの回を終わらせてしまい、七回の攻撃に移りたい。


 七回のカウボーイズの攻撃は、二番のパーキンスから始まり、三番の陽翔、四番の三浦へと続いていく。

 そこで初安打が出る、あるいは点を取る、といったことができなければ、なかなかこの試合しんどい。


 なんてのことを陽翔が考えていた時、快音がドームに響いた。

 平山の高めのストレートを見事に捉えた打球は、陽翔の頭上を越え、センターバックスクリーンに突き刺さった。


 上菅と対峙するカウボーイズにとっては重すぎる一点。

 上菅にとっては自身を大いに助ける先制の一発。

 試合の均衡を破り、決定づけようかという一点は、九番ピッチャー上菅のホームランによってもたらされた。


 ホームランを打たれた平山だったが、続く一番の吉村はきっちり打ち取り、この回を最少失点で終えた。

 守備を終えたカウボーイズのダグアウトには、重々しい空気が漂っていた。


『二番、レフト、パーキンス』


 上菅は自らのホームランで勢いづいたか、パーキンス相手にテンポよく投げこんでくる。

 150キロ後半のストレートで空振り、一つ目のストライク。

 内角へのツーシームにバットを出させず、二つ目のストライク。

 最後はスプリットに手を出させず、見逃し三振であっという間。


 三番の陽翔が打席に入ると、上菅は睨みつけるように仁王立ちした。

 楓のことでなぜだか陽翔を敵視している上菅だが、今の陽翔にとっては知ったことっちゃない。

 チームの勝利のため、この打席で打つため、グラウンドの外のことは忘れて、この勝負に集中しなければならない。


 初球、伸び上がるストレートが陽翔の胸元を襲った。

 陽翔に当たりそうではあるが、絶対に体には当たらない球。

 バッターの目線を内角に寄せるためのボールだろう。

 判定はもちろんボール。


 必死に上菅ピッチャー阿田キャッチャーの考えを読み、次の球へと思考を巡らせる。


 その最中、『セーフティーバント』という考えが浮かんだ。

 送りバントとは違う、自らがセーフになろうとするバント。

 上菅らの警戒は今なら、ほとんどないだろう。

 上手く転がせば、ほぼ内野安打になる。


 正直、普通に打つよりヒットになる確率は高いかもしれない。

 塁に出さえすれば、次を打つ三浦がなんとかしてくれる。

 セーフティーでノーヒットノーランを終わらせたとすれば、上菅は納得せず怒り狂うだろう。

 実際メジャーリーグでは、ノーノ―や完全試合がかかった試合の終盤でセーフティーバントを行うことはご法度で、それをやった場合、報復をくらってしまうという。


 しかしここは日本。

 チームのことを考えると、まずは安打ゼロという状況を終わらせなければならない。


 二球目、上菅の投球が指を離れようかという瞬間、陽翔はヒッティングの構えからバントの構えに移った。

 スプリットだった。

 沈んでいくボールに対し、態勢を低くし、バットでボールを追っていく。


「ファウル!」


 落ちていくボールを陽翔のバントは追い切れず、ファウルとなった。


「おいおい五十嵐! 怖気づいたか?」


 マウンドから上菅の野次・・が飛んでくる。

 今度ははっきりと聞こえたが、陽翔は無視を決めた。


 三球目はわずかに動く。

 真っすぐな軌道からわずかに陽翔の体の方へとボールが曲がる――カットボールがくる――陽翔はストレートだと思い打ちにいったが、ボールが動くの瞬時に察知し、バットの軌道を変える。

 外から中へと入ってくる球を、バットの芯はかろうじて捉えた。

 それは決して真芯ではなく、打球に角度はつかない。

 ライナーで、上菅ピッチャーの横を襲った。


 上菅は左手グラブを伸ばした。

 捕られるかと思ったが、打球はグラブをはじく。

 陽翔は懸命に一塁へ向けて走った。


 後ろへと転がっていったボールを、すぐさま上菅は取りにき、右手で拾い、態勢の悪いまま一塁へ送球する。


「セーフ!」


 上菅の送球を一塁手が捕球するより早く、陽翔の足は一塁へとたどり着いた。

 電光掲示板にはHのランプが光る。

 投手前内野安打で、カウボーイズのこの試合初安打、二試合連続のノーヒットノーランという屈辱は回避された。


 上菅はグラウンドに片膝をつき、項垂れたままだ。

 よっぽどノーヒットノーランが破られたのが悔しかったか、それとも陽翔に打たれたのが悔しかったか。


 ワンアウトランナー一塁。

 カウボーイズで最も期待のできるバッター三浦が打席に入る。

 上菅は気持ちを切り替えたかマウンドに戻ると、バッターに向き合った。


「ボールフォア」


 さすがの上菅でも三浦相手には慎重になったか、ボールを四つ並べて歩かせた。

 それでも五番のハーパー、六番の前川を連続で三振に切って取り、この回をゼロで抑えた。

 この試合初のピンチを抑えた上菅は、一切嬉しそうな表情を見せず、自軍ダグアウトに戻っていった。


◇◇◇◇


 七回裏、八回裏とカウボーイズ投手陣は相手打線をゼロに抑える。

 初ヒットを七回に許した上菅だったが、八回も続投。

 序盤から変わらない投球のキレで、カウボーイズの下位打線を寄せ付けない。

 八回も三者凡退で、この回もスコアボードにゼロを並べる。


 試合は0対1のまま、九回の攻防を迎える。

 カウボーイズ打線は一番島岡からの高打順だ。


 上菅がマウンドに登ると、ウォーリアーズファンからの大歓声が起こった。

 ウォーリアーズカウボーイズとともに交流戦優勝を争っていた福岡シーホークスが破れ、優勝の行方は、この試合を戦っている二チームに絞られた。

 すなわち、上菅がこの回を抑えればウォーリアーズの交流戦優勝が決まる。


 一番の島岡が打席に立ち、

 大歓声の中、意気揚々と上菅は自身の投球を繰り出す。

 疲れなど見当たらない。

 圧倒的な投球で島岡を翻弄し、ショートゴロに打ち取った。


 二番のパーキンスは簡単に三つのストライクを取り、この試合二十六個目のアウトを十三個目の三振でとった。

 ツーアウト、試合終了まであとアウト一つ。

 一点差、ホームランが出れば同点。


『三番センター、五十嵐陽翔』


 両チームファンの狂乱の中、陽翔が打席に立つ。

 足場を整え、静かに上菅に相対する陽翔に、上菅は、


「おい、五十嵐!」


 右手の人差し指を陽翔へ突き出し、言う。

 大歓声の中でも、はっきりと耳に届いた。


「さっきのはヒットじゃない! 俺のエラーだ! あんなので勝ったと思うなよ!」


 それだけ言って、上菅は突き出した人差し指を降ろし、陽翔を睨んだ。

「決着はこの打席だ」と、目で言っていた。

 上菅との勝負、そして試合の行く末を決める、陽翔のこの試合四打席目が始まる。


◇◇◇◇


745.牛を飼う名無しさん 


シーホークス負けた!


747.牛を飼う名無しさん 


勝てば交流戦優勝

なお


750.牛を飼う名無し


どうやって打つんだよこの化け物


771.牛を飼う名無し


五十嵐がホームラン打ったら全裸晒す


778.牛を飼う名無しさん 


>>771

期待


779.牛を飼う名無し


>>771

打ってほしい気持ちと晒したくない気持ちで葛藤が起きてそう


780.牛を飼う名無し


>>771

試合の最終盤にこの民度よ


791.牛を飼う名無し


>>771

771ちゃんはカウボーイズファン=五十嵐にホームラン打ってほしい=全裸晒したい=771ちゃんは露出狂


792.牛を飼う名無し


>>771

女性の方ですか?

何歳ですか?

 

795.牛を飼う名無し


ヒットでええぞ

次は三浦や

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