第四十話:「6号君」
久しぶりに週3更新できました。
今回も有海視点です。
「……すごい」
意識としての私は、自分の五感から入ってくる情報に感嘆の声を漏らした。
AIにオートモードを念じた後、今までと打って変わり自分の体が滑らかに動き始めたからだ。
サイドから切りかかってくる6号君を左手で持つ盾でいなし、直後右手に持つレーザー銃を発射して戦闘不能にさせる。
その間に遠方から撃たれた銃弾をサイドステップでかわす。
その反動で先程撃ってきた6号君まで一瞬で移動し、銃身で顔を殴りつける。
よろめいた6号君の隙を狙い、銃をくるりと持ち直し至近距離で射撃する。
戦闘不能になった6号君を横目で見つつ、遠方の6号君めがけてレーザー銃を連射し、3体連続で行動不能に陥らせた。
まるでアクション映画のワンシーンをVRで見せつけられたような感覚になり、私は興奮した。
ふと周りを見ると、昭人や若井さん達が健闘してくれたのか動ける6号君は数少なくなっていた。
私は気を抜き、AIに念じるとオートモードを解除した。
『このモードは圧倒的だわ。なんていうものを飯島さんは開発してしまったのでしょう……』
解除した直後、このモードの異常な強さに私は戦慄した。
もし悪用されたらと思うと、気が気でなかったからだ。
その時、私は後方の鉄箱が微妙に振動したのに気づく。
まさかと思い、後ろを振り向くと、銃を発砲した6号君が目に映った。
――危険感知。
『あ、まずい。オートモードを解除している――』
私は油断した自分を呪いつつ、AIのアシストに任せて盾を構えようとする。しかし、盾を構え終わる前に銃弾が体に届く――。
その時、茶色い物体が目の前に現れたかと思うと、何かを振り上げて銃弾の軌道を変えた。
『昭人!』
私は瞬時にそれが誰か把握する。先ほどから神業のように動く昭人だった。
目の前の昭人は、銃弾をいなすと瞬時に目の前の6号君へ瞬動する。そして6号君を盾で殴りつけ、よろけたところをレーザー銃で射撃した。
「ギギ……」
動きを止めた6号君を見やり、安堵した昭人は私を見つめ口を開く。
「油断しちゃだめじゃないか。ちゃんと電流検知を使って動いている6号君を確認しないとね」
「そ、そうだね……」
なるほど、電流検知を使えばこの子たちの位置は全部お見通しだったわけだ。
「すごいね……」
私の口に自然と言葉が溢れる。
昭人の機転に驚くと共に、再度尊敬の念を抱いてしまった。
◇
「「「「「ギギ…………」」」」」」
倉庫の中で6号君達の異音が響き渡る。
6号君達の戦闘開始から5分後、私達は無傷のまま6号君50体程の動きを止めた。
レーザー銃で動きを止めているだけだから、後15分もすればまた動き始めてしまうだろう。
「どうする? この子たちはそのままにしてここから立ち去る?」
私は、昭人へ確認する。
正直、この子たちは私の子供といっても過言ではない。
できればこの状態から助けてあげて、しっかりと更生させてあげたかった。
その時、昭人は私の顔をまじまじと見つめる。
何、どうしたのよ。そんなに見つめて……。
私が心の中でどきまきしていると、昭人は突然決心したような顔つきになり、私へ語りかけ始めた。
「有海。せっかくだから、この子たちを助けようと思う。今から起こることを見ても決して怒らないでね」
「う、うん……」
真面目な昭人に見つめられ、若干顔が熱くなりながらも返答した。
普段ならあまり気にならないんだけど、たまにあの顔をされると、私弱いんだよ……。
そんなことを思っていると、昭人は突然強化鎧のヘルメットを脱いだ。
「「……ちょっ!」」
突然の行動に、若井さんと私は慌てる。
そんな無防備な状況だと、もし6号くんが動き出したら昭人は殺されてしまう。
しかし、そんな心配をよそに昭人ははにかむと口を紡ぐ。
「大丈夫だって。6号君開発者の俺に任せな」
昭人は言い切ると、目の前の6号君へと向き直る。
6号君は、昭人の顔を認識すると、何かに抗うように異音をより一層大きくさせながら手足を痙攣させる。まるで絶対的強者に立ち向かった時の冒険者のように……。
「お前たち!!!」
昭人の声が倉庫の中に響き渡る。それを聞いた6号君達からは異音が止まり、倉庫内は静寂に包まれた。
「開発者『小林昭人』が命ずる。今までの学習をリセットさせ、開発者『小林昭人』に服従することを誓え!!」
それを聞いた6号君達は、再度昭人の顔を見た後なにか言葉を発しようとする。しかし、レーザー銃の力により皆言葉にならないようだ。
「……あ、そうか。誓えないわな」
昭人は独り言のように呟く。
そして、何かを思いついた顔をした後、再度大きく息を吸い込んだ。
「誓ったものは、自身の電源をオフすること!」
昭人が大声を出して命令すると、再度異音を発し始めた6号くんたちから音が止み、その場でバタバタと倒れ始めた。
私は電流検知機能をオンにしてこの子達を観察する。
私の視界の隅で先程まで膨大に発生していた検知結果のログが、ピタリと止んだ。
電流検知機能をオフにした私は、6号君が全員倒れ静寂に包まれた倉庫内を眺め、呆然とした。
「……なにこれ?」
ありえない状況を見て、私の中で疑念が渦巻く。
そんな最中、命令を発した昭人はこちらを振り向き、にっこりと笑った。
「終わったよ」
これを聞き、若井さん、竹内さん、小久保さんから安堵の表情が浮かぶ。
この言葉は、アジトでの戦闘が全て終わったことを皆に知らせた。
だが、昭人の戦いはまだ終わっていなかった……。
私は大きく息を吸い込むと、先程の疑念を声を大にして叫んだ。
「ちょっと昭人!! どうして私の子供達を魔改造してるのよ!!!」
やっと第2章の伏線を回収できました。
伏線はまだたくさん残っているので、どんどん回収していきましょう!!
※ちなみに…。
競艇の小説、「虹色の明日の空へ」も本日20時に久しぶりに更新予定です。
今はそう思えないでしょうが、ジャンルはホラーです。
今後の展開をお楽しみに。
(プロットは書き終えていますが、そこから察するに長くても3万文字程度の小説になりそうです)




