187 魔族
更新再開です。
今後ものんびり、2~3日に1回更新していく予定です。
「かっかっか・・・情けないのう」
リョウたちのいる岩場の上のほうから声がした。
「何者だ?!!!」
リオン隊長が声のした方に向かって槍を向けるが、
「ほほう・・・、こちらはただ声をかけただけだというのに、得物を
向けるか。敵対する意思ととってもいいのだな?!」
彼女は言った。
というか、人間なのかどうかよくわからない者が言った。
それには、頭の両脇にくるりと巻いて先が上を向いた2本の角があり、
背中には黒い翼が生えていたのだ。
そして、彼女の左の肩には種類のよくわからない青い鳥が留まっていた。
「ま、魔族・・・」
リオン隊長がぽつりと漏らす。
(魔族?!!!! 以前、アンジェリカ様と話をしたときにエルフや
ドワーフがいるのは聞いたが、魔族もいたのか!!)
リョウ、ちょっとワクワクである。
しかも、なかなかグラマーなお姉さんである。
魔族といえば肌の色は褐色というイメージがあったリョウであるが
彼女は透けるような色白で、文句なしの美人であった。
気が強そうなツリ目なのがさらにイイ。
「リオン!下がりなさい!!」
マーティアが叫ぶ。
「はっ!」
リオン隊長が下がり、入れ替わってマーティアが前に出る。
「失礼しました。私はこのグループの責任者のマーティアと申します。
あなたのお名前と声をかけられた目的をお聞きしてもよいでしょうか?」
手を組んで軽く頭を下げる挨拶をした後、マーティアが魔族に言う。
「ほう、おぬしがリーダーか・・・。わしの名はブレンダ、家名は
聞かないでくれ。声をかけたのは簡単に言うと、狩りを手伝うので
報酬をくれということじゃ」
「報酬・・・ですか・・・」
マーティアが聞き返す。
「うむ、訳あって旅をしているのじゃが、食べ物が焼いた肉や魚、木の実
ばかりで飽きてしまっての、ちゃんとした料理が食べたいのじゃが
この大陸の金を持っておらんのじゃ」
「なるほど・・・」
ブレンダと名乗った魔族の言ったことを、それなりに納得した様子の
マーティア。
「そういうことなら・・・」
リョウが前に出る。
「とりあえずこれはどうかな?」
そして収納バッグから紙に包んである半分に切ったミートパイを取り出した。
朝食でグレイシアに1個半だした残りだ。
「どれどれ・・・」
包みを受け取って開いたブレンダは、ミートパイの断面を見て、
「お!なかなかうまそうじゃな」
と言って、それを口にする。
「う!」
驚いたような顔するが、そのまま咀嚼して飲み込む。
そして、ワンテンポおいて・・・
「何じゃこりゃ~~~!!!」
某TV番組で殉職した刑事のような台詞を言うブレンダ。
「このサクッとした心地よい歯ざわりの外側と旨みがギッシリと詰まった中身、
これは何という料理じゃ?」
「ミートパイといいます。パイというのが外側の皮、ミートは中身に使った
肉のことで、中身が変われば呼び方も変わります」
リョウが説明する。
「ということは、中身が違うものがいろいろあるということじゃな?!」
「はい。狩りが済んだら、お茶の時間にお菓子タイプのものを
お出ししますよ」
「なんじゃと?!!!!」
そう言ったブレンダは大口を開けてもう一口齧ると、残りを上に放り投げる。
すると肩に乗っていた鳥が嘴を大きく開けキャッチした。
「ほれ!さっさと狩ってお茶にするぞ!!あと何匹狩ればいいのじゃ?」
ブレンダ、リョウの言ったことに思いっきりくいついてきた。
そして、彼女の手助けによって爆発させずに、さらに10匹を狩ることが
出来たのであった。




