164 アミーナ その1
今回と次回は、モブキャラの一人称です。
視点を変えるためにやってみましたが、いかがでしょうか。
私の名は、アミーナ。
ウィスラー領トリオール市の宿屋の娘です。
裕福ではないが飢えることもなく、働き者の父と優しい母に育てられ、
ごく普通の・・・いえ、幸せな町娘の生活を送っていました。
あの日までは・・・。
あれは7年前、私が9歳のとき、厨房で火傷を負ってしまいました。
父がかばってくれたおかげで命は助かりましたが、顔と左肩から胸にかけて
醜い火傷の跡が残ってしまいました。
私をかばった父も右肩から腕にかけて火傷をしてしまいました。
なのに、私をかばいきれなかったと悔やんでいるのです。
母になぐさめられ、父はなんとか立ち直ってくれましたが、そのことで
私にずっと負い目を持っています。
去年、成人しましたがこんな私ですので、とうに結婚などはあきらめて
一生、両親と暮らすつもりでいました。
ところが、昨夜、聖女様がこの市に来られたとお客さんから聞きました。
「聖女様なら何とかしてくれるかもしれない!」
と父と私は教会に来たのですが・・・。
すごい数の救いを求める人が来ていました。
来た者は、ひとまとめに教会の中庭に案内されるようです。
これでは、ただ聖女様に会うだけでも大変でしょう。
治療してもらうなんて、無理だとしか思えません。
と、思っていたら、大柄な女の人に声をかけられました。
「そこの娘、すまないが火傷の跡を見せてくれ」
え?!なぜわかったのでしょう?
顔は長くした髪の毛で隠しているし、身体は服で見えないはずなのに・・・。
頷くと、その女の人は身体を覆いかぶせてきて、周りから
見えない様にしながら髪の毛を分けて、火傷の跡を確かめました。
「女の子がこんな・・・辛かったな、もう大丈夫だぞ」
そう言って、私を抱きしめます。
腹筋が固くて、男の人に抱きしめられてるみたいでした。
『もう大丈夫』って、本当に治るのでしょうか。
聖女様はそれほどのお力が・・・。
「そちらは父親か?!あなたも治療してもらわないとな」
女の人はそう言って、私達を教会の中に案内してくれました。
私達の前に治療を受けている者がいるということで、控え室のようなところで
待っていると、ドアが開き、男の子と母親らしい女性がでてきました。
その男の子には見覚えがあります。
隣町の子だったと思います。
足が悪いために、子供達の輪からはみだして、寂しそうにしていたのを
見たことがあります。
その子が今、嬉しそうに母親と手をつなぎ、ぴょんぴょんと跳ね回っています。
足が悪いなんて、とても見えません。
「治ってる・・・」
横にいた父がつぶやきました。
父もこの男の子を知っていたのでしょう。
母子は振り返り頭を下げ、
「神使様、ありがとうございました」
「タイガ様、ありがとう」
部屋の中に向かって挨拶しました。
『タイガ?、しんし?』
何のことでしょうか?
中にいるのは聖女様では?
部屋の中にいたシスターに招き入れられて入ると、中には他に神官様が
いらっしゃいました。
着ておられる神官服を見れば、司教様よりずっと高位の方でしょうが、
なぜ仮面を??
神使とは聖女に匹敵する?!
話すことが出来ないけど、意思の疎通は出来る?!
何なんですか、それは?!
ところで、話せないということなのですが、自分自身は治療出来ないので
しょうか??
アミーナ!
最後の部分はツッコんじゃダメだよ!!w




