163 タイガ
リョウは、教会内の一室に待機していた。
裁縫部のシスターたちが徹夜で作ってくれた聖職服を着ているのはいいとして、
なぜか顔の上半分が隠れる布製の仮面というか覆面をしていた。
その姿を日本のアニメ好きが見たら、少佐とか大佐とか言われそうである。
マーティアがジュリアに頼んだのは、マーティアのヒールでは治りにくそうな
症状の者を見つけ、コリーヌとグレイシアが確認してリョウに治療して
もらうというものであった。
コンコンコン
ドアがノックされる。
「ど・・・」
『どうぞ』と言おうとしてあわてて自分の口をおさえるリョウ。
いきなり設定をダメにするところだったと、ちょっと冷や汗をかきながら
ドアを開ける。
「タイガ様、患者さんをお連れしました」
コリーヌが10歳ぐらいの男の子とその母親だと思われる女性を部屋に
案内してきた。
ちなみにタイガとは、この姿のときのリョウの別名である。
リョウの本名の竜馬→竜→虎→タイガー→タイガ、という安直な連想で
そう決めた。
「こちらが治療してくださる神使・タイガ様です」
コリーヌが親子にリョウを紹介する。
「よろしくお願いします」
母親が挨拶をするが、子供は母親に抱きついてリョウをチラッと見ただけだ。
「ところで『しんし』とは、何でしょうか?」
「神使とは、この国の聖女・神子様にあたる他国から来られた方の称号です。
こちらのタイガ様は、聖女様がわざわざ招聘なさるほどのお力を
お持ちの方ですので、安心して治療を受けてください」
「それほどのお方が・・・」
「それから、タイガ様は、そのお力を得るのと引き換えに話すことが
出来なくなられましたが、たぶん問題ないと思います」
コリーヌが『設定』を説明する。
さっきドアをノックされたときに、リョウが『どうぞ』と言わなかったのは
このためだ。
声というのはある意味、顔以上にわかりやすい。
そのため、リョウとタイガが同一人物だということを隠すために、仮面をつけ
話せないという設定にした。
素顔のリョウの活動の妨げにならないようにとの考えだが、一部は気休め、
さらにもう一部は悪乗りの結果であった。
「問題ないとは・・・?」
訝しげな顔をする母親にリョウが握手を求めるように右手を差し出す。
反射的に握って握手する母親。
そのとき、
『タイガです。よろしく』
「え?!」
挨拶され驚く母親。
「話せないのでは?!」
「タイガ様は話しておられませんよ」
コリーヌが言う。
『話すことは出来ませんが、魔法でこういうふうに意思の疎通は取れますので』
さらに驚く母親。
確かに口は動いていない。
骨伝導である。
魔法を利用しているので正確には少し違うが、とりあえずそう呼ぶことにする。
これが使えるので、話せないという設定を作ったのだ。
まあ、リョウ、ジュリア、マーティア、コリーヌ、グレイシアの5人で
いろいろアイディアをだしてたら、調子にのってしまって、中二病っぽい
設定を盛り込んでしまっただけだが。
母親の話によると、この男の子は足を骨折したときの処置が悪かったために
歩行に障がいがでてしまったとのことだ。
たしかに、片方の足が少し短く、足先の向きがおかしい。
『大丈夫だよ、ちゃんと普通に歩けるようになるからね』
男の子に骨伝導で離したリョウは、さっそく治療に取り掛かるのだった。
少佐といえば、エ○イ○より○をこめて。
え?!違ったっけ。(すっとぼけ)




