155 治療
「まずは、腰からですね。マーティア様、サポートをお願いします」
「はい、リョウ様」
これぐらいなら1人でも治療出来るが、マーティアの経験値を上げるために
サポートを頼むリョウ。というか、予定ではマーティアがメインで
サポートはリョウのはずだったのだが・・・。
「腰骨と背骨をサーチしてみてください」
「はい」
マルティナの腰に手をあてるマーティア。
「あっ・・・背骨が変形してズレています」
マーティアは、骨のサーチなら充分にマスターしている。
「それが腰痛の主な原因ですね。変形した骨を元に戻しながらズレを
修正します」
そう言ってリョウは腰の周辺の痛覚を鈍くした後、背骨を治していく。
「これでいいかな・・・?!マーティア様、チェックしてください」
サーチして確かめるマーティア。
「リョウ様・・・、さすがです」
改めて感心したように言う。
「次は、足ですね」
マルティナのふくらはぎに、ぷくっと不自然に膨れた部分があった。
「その膨らみは?」
マーティアが聞く。
「私の国では、静脈瘤と言われているものですね。高齢の女性に
出来やすいのですが、まだ軽度なのですぐに治りますよ」
そう言ってリョウはヒールであっさりと治していく。
「まあ!お母様、気になさっていた足の瘤がきれいに治りましたわよ!」
治療を見ていたレイチェルがマルティナに言う。
「まあ、本当?!」
がばっと起き上がるマルティナ。
「あ・・・」
あわてて腰に手をあてるが・・・
「痛くない・・・」
「腰も治しましたので、とりあえず大丈夫だと思いますが無理はしないで
くださいね。メイドさん、手鏡はありませんか?」
リョウにそう言われて、さっきリリーと呼ばれていたメイドが手鏡を持ってくる。
「まあ、きれいになってるわ!司教様に治していただいたときは、赤黒い跡が
残っていたのに・・・」
マルティナが鏡で自分のふくらはぎを見て、嬉しそうに言う。
「予防方法は・・・マルティナ様、寝てくださいませんか」
リョウに言われて仰向けに寝るマルティナ。
「就寝前なんかに、こうやって足を上げてマッサージをしてあげてください」
そう言って、メイドにやり方を教えるリョウ。
「ああ、気持ちいいわ。お願いするわね、リリー」
「かしこまりました」
マルティナに言われてメイドが返事をする。
「あと、他に治して・・・」
そう言いながらマルティナのほうを向いたリョウは・・・
「も、申し訳ありません!!」
あわてて、両膝を床につけて頭を下げ謝る。
マルティナのパ○ティーを直視してしまったのだ。
『足を持ったまま振り向いたらそうなるだろ!』と自分にツッコミを
入れたくなるほど不注意だった。
何でリョウがいきなり謝ったのか一瞬わからなかったマルティナであるが、
理由がわかると、
「あらあら、いいのよ、治療の一環ですもの・・・」
ちょっと赤くなりながら、そう言った。
「それに、今からイレーネみたいに全身をやってもらうんだし」
期待をこめて言うマルティナ。
それを聞いたリョウは、
(えっ、イレーネって誰だっけ?)
と心の中で大ボケをかますのであった。




