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134 その日のいろいろな人たち

リョウとジュリアがデートした日の話です。

・昼頃


街道を走る駅馬車。

それが、分かれ道に入ったとたん、屋根から何かがポンッと落ちた。

いや、落ちたのではなく降りたのだ。

そして、駅馬車の乗客はもちろん御者も気づかなかった。


降りたのは少女・・・に見える22歳、メイフィールド領軍スカウトの

エレールである。


普通の移動では足取りを追われる確率が高いため任務中はこういうふうに

移動しているが、悪く言えばタダ乗りである。

薩摩守さつまのかみである。

ああ、あの折りたたみ式の小刀こがたなね。

それは肥後守ひごのかみである。


などとワケの分からないことを書いているうちにエレールは適当な岩に

座って収納バッグから紙包みを取り出す。

リョウから貰ったサンドイッチである。


サンドイッチを食べるエレールは無表情に見えるが、リョウが見たならば

喜んでいるのがわかっただろう。


そしてエレールは皮袋から水を飲んで、ぽつりとつぶやく。


「オレンジジュースも貰っておけばよかった・・・」




・午後


「だから、情報を出せと言っているんだ!!」


王都冒険者ギルドのギルドマスターの部屋で中年の男が怒鳴っていた。

法衣貴族のランディー・クレメンツ伯爵である。

リョウに復讐するために、情報を得ようと冒険者ギルドに使いを

出したが断られたので、本人が乗り込んできたのだ。


「先ほどの使いの方にも言いましたが、個人情報は当人の許可がなければ

出すわけにはいきません」

怒鳴られたことが何でもないように、ギルマスが平然とした顔で言う。


「わしが直々に来ているのだぞ!その意味がわかるだろう?!」


「まあ、わからないこともありませんが、意味がなかったというだけですな」

特別に便宜をはかれということはわかっているが、ダメだと示すギルマス。


「意味がないだと?!! わしを敵に回してもいいんだな?!!」


「はっきり言いましょう。彼を敵に回すよりマシです」

彼とは、もちろんリョウのことである。


「何!!」

絶句するクレメンツ。


「そういうことですので、お帰りを。ああ、もし冒険者ギルドを敵に

回すつもりなら、それなりのお覚悟でどうぞ」


「そ、それほどなのか・・・?」

ギルマスの顔を真正面から見るクレメンツ。


「はい、それほどです」

にこやかに返すギルマス。


ガリアギルドからのオーガやリッチー等の討伐報告。

それだけでもとんでもないのに、報告書には、ガリアギルドのギルマスの

エリックが『理不尽な扱いをした場合はガリア辺境伯を敵にまわすことになる』

と注意書きをしていた。


そして聖教会の聖女の指名依頼。

『丁重に呼び寄せること』という条件であった。

そして、昨日は充分すぎる紹介料が支払われた。

どんな用件だったのだろうか?


さらに今朝、王家の第3王女から『召し抱えたい』という打診がきた。

何をしたんだ?!いったい・・・。


それらに比べれば、目の前のデブ中年伯爵など何でもなかった。




・夜


「それで、モグモグ・・・見破られて・・・モグ・・・帰ってきたわけ・・・

モグモグ・・・ね」

そう言ってカテリーナは、食べていたサンドイッチを紅茶で流し込んだ。


「申しわけございません」

カテリーナの護衛が言う。

彼は護衛の中でも隠密行動に優れているので、陰からの護衛や

偵察・探索の役目もしている。


「・・・まあ仕方ないわね、相手がリョウだし・・・、とりあえず

クレメンツ伯爵には釘を刺しておいてね。

あと、なぜサンドイッチをもう1つ貰ってこなかったの?!

お父様に差し上げることが出来ないじゃないの!!」


「恐れながら、それを食べなければよかったのでは・・・?」


「何を言うの!こんなおいしいも・・・じゃなくて、お父様に差し上げるのに

味見や毒見をしないでどうするのです!!」

そう言いながら、またサンドイッチにかぶりつくカテリーナ。


いろいろとツッコみどころ満載であるが、それ以上は言わない護衛であった。

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