124 デートその7
中庭に出てきたリョウたち。
「ここでいいかな・・・」
竪琴を演奏する男の銅像の前に陣取るリョウたち。
だいぶ美化されているが、技芸神の像のようである。
「それでは、ジュリアさん」
恥ずかしそうにするジュリアを抱き寄せ身体強化をかける。
はたからは、人前でバカップルがイチャついているように見えるだろうが
リョウの力を隠せるので、そう思ってくれたほうがいい。
そして、収納バッグからダブルネックリュート:青山を取り出す。
見たこともない楽器に驚く周囲の人たち。
「リ、リョウ様、それは?!」
ジュリアが聞く。
「私の愛用しているリュートで、銘を青山と言います。
さすがに、『昨日手に入れたばかりです』なんて言ったら、いろいろと
詮索されるのは間違いないので、ニホンから持ってきていたという設定に
することにした。
実はネックが2つという形状のため大きすぎて収納バッグに入らなくて
困っていたらライゼンが収納バッグを改造してくれたのだ。
バッグに入らなくて仕方なくこれを背中に背負って歩く自分を想像して、
『俺は快○ズ○ッ○か?!』と心の中でツッコみを入れたのは内緒である。
「剛斬丸もそうですが、まるで神器ですね」
「あははは・・・」
(うん、そのとおりなのであまり言わないように)
ごまかし笑いをしながら、心の中でジュリアにツッコむリョウ。
キュイ~~~ン・・・・・・
まずは、チョーキングをきかせた音で注目を集める。
今回は演奏だけで歌うつもりはないので曲は『金剛石頭』にした。
チャンチャ~ン、チャラララチャ~ンチャチャ~ン♪
軽快な演奏を始めるリョウ。
さすがに神器だけあって、音の伸びや響きがよく、演劇場全体に音が届く。
少しずつ見物人が中庭に集まってくる。
テケテケテケテケ・・・・・・♪
リュートをエレキギターのように演奏するリョウ。
サビに入りさらに演奏に熱がこもる。
聞いたこともない曲と演奏方法に引き込まれる観客達。
そして、曲は『波乗り管』、さらに『十本木の殺人』へと移行する。
演奏は絶好調だ。
「 !! 」
何かに気づいたジュリアが支配人に耳打ちをする。
そして支配人は、リョウの指示で中庭を取り囲むように配置されていた
職員たちにこっそりと指示をだす。
ジャーン!!!
演奏の終わりを示し、右手を上げるリョウ。
そして、観客たちに一礼する。
ワーーーーー!!!
パチパチパチ・・・
歓声と拍手が巻き起こる。
「すげ~、何だその楽器?!」
「今日の舞台に出るのかい?」
「握手してくれ」
などとリョウに近づく観客たち。
そばにいた職員たちが観客を捌き、リョウをガードする。
そしてリョウは、ジュリアと一緒に建物の中に入る。
そこには、職員たちに取り囲まれている女性がいた。
歌姫・パトリシアである。
もし彼女がリョウの演奏を聴いたなら、興味を持たないわけはない。
きっと、様子を見るために近くに来るはずである。
そして、視線が通る場所で、身体強化をかけたジュリアの視力に
見つけられないものはなかった。
あとは、配置した職員たちでパトリシアを確保というのがリョウの
計画であり、それはまんまと成功した。
しかし、ここからが一番の問題である。
パトリシアをなだめ機嫌をなおしてもらい、舞台に上がって
もらわなければならない。
支配人が説得しているが、彼女の様子を見ると、あまりうまくいって
いないようだ。
(仕方がないか・・・)
リョウは説得に加わることにするのだった。
「俺はキ○イ○ーか?!」でも可(笑)




