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入団、指導


重厚な扉の向こう、広々とした執務室の窓からは夕暮れの光が差し込んでいた。

分厚い書類の山に囲まれた机の向こうに座っていたのは、第二騎士団団長だった。

銀縁のメガネをかけた知的な顔立ちだが、どこか近寄りがたい鋭い雰囲気をまとっている。


「リズ・テイラーです。本日より第二騎士団の一員として務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。」


背筋をピンと伸ばして礼をすると、団長はメガネのブリッジを指で押し上げながら、探るような目を向けた。

「……ほう。実技試験で我が団の荒くれ者を一撃でねじ伏せたというのは、お前か。」

団長は立ち上がり、大きな足取りで近づいてくると、有無を言わせぬ様子で大きな手を差し出してきた。

迷わずその手を取り、しっかりと握り返した瞬間――ビリリと静電気のような微弱な衝撃とともに、頭の中に彼の「心の声」が直接流れ込んできた。

(……面倒なコネ入団かと思ったが、これはなかなか面白そうなのが入ってきたな)

侮りではなく、好奇心と値踏みするような響き。実家の冷たい本音ばかりを聞いてきた私にとって、その意外な心の声は少しだけ新鮮だった。表情には一切出さず、ぐっと握り返す手に力を込めると団長の眼鏡の奥の瞳がわずかに見開かれた。

「はい。よろしくお願いいたします」

淡々と返事をしながら手を離すと、団長は面白がるような不敵な笑みを浮かべた。冷静な青いオーラの中に、かすかに明るい色が混ざる。

「……いいだろう。うちの団に甘えは通用しない。明日から容赦なくしごくからそのつもりでいろ。」

「承知いたしました」

「下がっていい」

冷たく告げられた言葉を背中に受けながら、私は静かに部屋を退出した。


実家の息苦しい空気とは違うけれど、この騎士団でも一筋縄ではいかない日々が待っていそうだ。でも、誰の嘘にも縛られないこの場所でなら、私は自分の足で生きていける。

窓の外の夕空を見上げながら、私は新生活への決意を新たにした。


翌日

本格的な訓練が始まった。私の指導係に任命されたのは、ウォルターという一人の先輩騎士だった。

鍛え上げられた長身に無駄のない身のこなし、そして常に背筋がまっすぐに伸びた厳格な男だ。理知的な顔立ちに、隙のない制服の着こなしからは、彼の極めて真面目な性格がひと目で伝わってくる。


「これより基礎訓練を開始する。遅れをとるなよ。」

低い声で告げられると、ウォルターはそれ以上余計な言葉を発することなく、黙々と手本を見せ始めた。剣の構え方、足さばき、重心の移動。無駄な動作が一切ない、美しいまでの型だ。

私たちは朝から夕方まで、余計な言葉を交わすこともなくひたすら剣を振り続けた。

世間一般の職場であれば、先輩と後輩の気まずい沈黙に耐えかねて会話を探すところかもしれない。しかし、私にとってそれは全く苦にならなかった。実家では常に冷ややかな沈黙か、嘘の言葉に囲まれて育ったからだ。余計な世間話や愛想笑いを求められないこの無言の空間は、むしろ居心地がよかった。

ウォルターの背中を見つめながら、彼の動きを全身で覚える。彼はただ黙々と指導し、私もまた黙々とそれに食らいついた。

夕暮れ時、ようやく訓練が終わりを迎えたとき、ウォルターはピタリと動きを止め、初めて私の方を振り返った。

「今日の訓練はここまでだ。……筋がいいな。明日も同じ時間から始める。」

それだけを淡々と告げると、彼は足早に去っていった。

彼の背中から漏れ出たオーラは、不快感を示す色は一切なく、ただ純粋に仕事に対する真摯な評価の色を帯びていた。

息を整えながら、私は自分の木刀をしっかりと握りしめる。

誰の嘘にも縛られないこの場所で、私の新しい日々が確かに回り始めていた。


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