かくがり
このところ、だいぶ暑さが和らいできましたよね。
お庭いじりなんかにもよい季節なのでしょうか、ご近所のお宅の生け垣がすっきりと刈られていました。それをぼんやりと眺めながら歩いていたら、向かいから、若いお母さんと、三、四歳くらいでしょうか、可愛らしいお嬢ちゃんが手を繋いでやって来ました。
微笑ましさにほっこりとしてましたら、お嬢ちゃんが刈られた生け垣を指差し、
「あっ、木が髪の毛切った!」
と、お母さんに笑顔で叫びました。刈られた木を見て「髪の毛を切った」なんて、素晴らしいセンスですよ! お嬢ちゃん、詩人かな⁉
お嬢ちゃんの言葉に、「本当だねー」と、お母さんもにっこりです。
するとお嬢ちゃんは再び叫びました。
「かくがり!」
かくがり……一瞬、何の事だろうと思ったのですが、すぐに気付きました。生け垣の刈られ具合がかなり直線的で、確かに角刈りのようなシルエットになっていたのです。お嬢ちゃんは三度叫びました。
「パパとおそろい!」
そっかー、お嬢ちゃんのパパは角刈りなのかー。だからそんな単語を知ってるんだね、おりこうさんです。
しかし、お母さんは通行人(私です)に気を使ってくれたのか、生垣のお宅に気を使ってなのか、慌てて、
「しー。ちょっと声が大きいよ」
と、お嬢ちゃんを注意しました。私の事なら全然気にしなくていいのに、いえむしろ、そんな可愛い科白を聞かせて貰ってお礼を言いたい位なのですが……なんて考えてましたら、お母さんは更にお嬢ちゃんにこんなことを言いました。
「角刈りだとちょっと可愛くないから、『かくがりーた』って呼んだら?」
……と。
お母さんの声はそれほど大きくはなかったのですが、丁度この辺りで親子とすれ違う形になったので、ダイレクトに耳に飛び込んできました。
危なく、吹くところでした。お嬢ちゃんの「かくがりーた……」と繰り返す声がまたツボに……。駄洒落に弱いので、堪えるのが大変でした。
秀逸なセンスの親子さんでした。




