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お墓参り

 本日はお墓参りに行ってまいりました。


 早朝の空は雲多く、湿気を帯びた空気は重苦しい……今日の外出は取りやめ、後日にするか……一瞬そんな考えが過りましたが、結局、予定変更はしませんでした。九月半ばとは思えない程の暑さに晒されるくらいならば、いっそ、曇天の方が良かろうと判断した次第でございます。


 そんな訳で、午前中の内に家を出て霊園に向かうこと数十分。残念なことに……と言うか、案の定、途中で雨に見舞われました。大粒の水滴に天を見上げ、「やや、雨が……」と呟く「雨」の「あ」の辺りで、ざしゃーっと降り出したのです。


 ご安心ください。傘の準備は万全です。慌てることなく傘を差し、そうこうするうちに無事霊園前に到着。さて、我が家の墓石を目指しますか……と、歩き出そうとして気付きました。


「あれ、これ、お線香に火付けられなくない……?」


 なんと雨だけでなく、風もそこそこ吹き始めていたのです。雨が降りしきる中、傘が風に飛ばされないように身を固めつつ、片手でお線香、片手でライター。リュックですから両手は空いてますが、お線香着火にそこそこ苦労するのは目に見えています。


 その時、私の脳裏に友人T氏の言葉が甦りました。


「遠部っちと一緒に出掛けると、雨降りがちよな」


 これまで、T氏と出掛けるとかなりの確率で雨に見舞われてきました。それについて、T氏は私を「雨に愛されし者」と思っている様なのです……ですが私はこの時まで、雨に愛されているのは寧ろT氏の方だとばかり思っていました。いえ、その思いは今でも消えてはいません。ですが、もしかしたら、万が一、億が一にもT氏の言うことが正しいとしたら。

 そんな無力感に襲われ、天を見上げました……そう、「天を見上げた」のです。


 雨、止んでるやん!


 ほら、T、よう見ろ! やはり私は「雨に愛されし者」などではなかったのだ! 私は鼻息も荒く傘を閉じると、いそいそとご先祖の眠る墓標へと向かいました。


 ……五分後。土砂降りの中、墓石の前で立ち尽くす私の姿がありました。再び降り出した雨に傘が間に合わず……水を吸ったお線香は、着火するどころかぼっそぼそになってしまいました……。


 取り敢えず、今度T氏と遊ぶ際に、「私が雨に愛されし者です」と改めて自己紹介する心算です。

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― 新着の感想 ―
よぉ、雨に愛されし者www(通りすがりのT)
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