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91.嫉妬の瞬間 ③

依織は5メートル離れた小木の後ろに身を隠しながら、二人の様子を覗いていた。トオルがリーゼロティと親しげに話し合うのを見て、彼女は呆れた顔をし、不愉快な気分を押さえきれずにそう呟く。


「錬晶球の調整の話をしているみたいだけど、話が急に飛んで、何を言っているのかさっぱりわからない……」


 そう呟いた依織は、親友のミューリやロサリと共にミーラティス人の話を思い出した。


「あの子はハルオーズ人に見えるけど……まさか、トオル君は念話のスキルを覚えたのか……」


 恥ずかしくて初々しい甘酸っぱい空気に包まれた二人の表情を見て、いつも無表情だったトオルが恥ずかしそうに笑うのを意識した。


依織の心の中には、どこか鬱々とした感情が芽生え始めた。


――トオル君、あんな笑顔を見せるなんて……あの子はトオルの心を開ける人なのか……


幸せそうな二人の様子を見つめると、依織の目には悲しそうな光が揺れていた。





 依織が小木の茂みに隠れて二人を覗いている姿は、春斗の手作り望遠鏡の視界に捉えられていた。春斗は教室棟の屋上から彼女を見て、口元に邪気を含んだ笑みを浮かべて言う。


「彼女は今日も元気そうだな」


 さらに望遠鏡の視界をベンチに向け、話し合うトオルとリーゼロティを見て、俗物を見下すように笑った。


「サモンの奴、俺と賭け勝負をしたのに、女とイチャイチャする余裕があるとはな。ふふふ、こいつ、この勝負でどん底に落ちるだろう」


 追いかけ勝負であと200メートル走ればゴールに到達するのに、注意を別のものに向けてコースアウトするウサギのように、手足が遅く動くトオルを蔑んで見下している。

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