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73.妹ための親睦会 ③

「私ここでバイトしてるんですけど、魔導士のお客様がよく注文されるので。お食事はいかがですか?」


「大丈夫です、私はグラムだけ補給すれば十分なので」


 クロディスのカクテルを選んだあと、依織は自分用にピラフと飲み物を選んだ。


「他に注文する人はいますか?」


 穣治が目を輝かせる。


「俺はビールおかわり、それとスペシャルなミックスをもう一つ」


 ビールを探しながら「他には?」と依織が訊ねる。


「私はお茶のおかわりを」と美鈴が言った。


大輝もメニューを見て、


「クライムソーダ、あとハンバーグセット一つ」と言う。


「トオルくんは?」


「ぼくはパテを追加で、それと食後にアイスラテをおかわり」


「分かった」


 食事を続けながら、話題の中心はやはりクロディスだった。先輩美女の登場に照れているのか、大輝は始終ハンバーグを頬張り続け、美鈴も聞き役に徹している。喋っているのは穣治と依織がメインだったが、特に穣治は美女との同席に張り切っているのか、饒舌になって自分の冒険譚を語り聞かせる。


 ペルドット色のカクテルを一口吸ったクロディスは「ふふ」と笑った。


「穣治さんは本当に好奇心旺盛で、勇敢な方ですね」


 酒も回っているところに褒められ、穣治は首の後ろをポリポリ掻きながら、照れくさそうに笑った。


「ハハハ、そんなふうに言われるのは初めてだな、嬉しいぜ」


操士ルーラーの方のお話は楽しいですね」


「クロディス先輩は、これくらい話しただけで属性が分かるんですか?」と依織が訊いた。


「ええ、もちろん個人差はありますが、話せばおおよそは分かります。操士の方は、風の中で踊る羽根のように、活発で柔らかく、時々突拍子もない動きをされる方が多いですね」


 感覚的な話ではあったが、依織はもっとクロディスに聞いてみたいと思った。


「他の性質の方はどんな特徴があるんですか?」


「そうですね」と、クロディスは依織に天使のような笑みを見せる。


闘士ウォーリアの方は、一度決めると石のように硬く変わらない頑固さを持っています。自分が円の中心であると感じておられる方も多く、総じて自信家です。騎士レッダーフラッハの方はロジカルな考えで、幾何学的な模様のように、決められた枠を信じて突き進みます。とはいえ、意外なギャップのある方も多い印象です」


 クロディス以外の五人は、興味津々で話にのめり込んだ。


「魔導士は葉脈のような繊細さを持つ方が多く、懐の深い人も多いんですが、他の性質の方からは、つかみ所がなくミステリアスだと言われることもよくありますね」


「へぇ~面白い」と、依織は血液型占いでも聞いたように目をきらきらさせた。


「あの、クロディス先輩。魔導士の初心者は、どんな訓練から始めるといいでしょうか?」と美鈴が思いきって口を開いた。


「白河さん、まだ入学してひと月も経っていないんですから、道を決めるには早すぎませんか?」


「私は入学時の健康診断でも、錬晶球の修行の時にも、魔導士の性質が示されました。もちろん、実際にどの道を究めるかは今学期の終わりの検定結果で決まりますけど、同級生の中にはすでに章紋の修行を行っている人もいます。私は自分の適性が分かるなら、早く修行を始めたいと思っていて……」


 美鈴の心はすでに魔導士に決まっていた。優秀な先輩の助言は、無駄な回り道を避けられるという期待から、クロディスにどうしても聞いてみたかったのだ。


「私はトオルによく言っているんですが、源気グラムグラカの修行についても、スキルの熟練度についても、他人と比べるのは良くないと思います。自分なりのペースで伸びていくのが良いでしょう。可能性を拓くことの前に、恵まれている才能を精確に理解し、その開花のために研鑽するのも悪いことではありません」


「私は立派な魔導士になりたいです」


 美鈴のその言葉の裏には、(学園で生き残るためにも、自分を守る力を備えないと)という焦りがあった。


 貪食者グラムイーターに襲われたこともあり、美鈴は学園に潜む危険のほんの先端を垣間見た。そのうえで、恐怖や自己保身の前に、このままでは多くの人々に迷惑をかけてしまう、という気持ちがあった。


 クロディスはそんな美鈴の心声を聞き、彼女の心を理解した。


「なるほど、もう決心されているんですね、それでは、語感の勉強が必要かと思います」


「語感」と聞いて、依織いおりが言った。


「美鈴ちゃん、俳句や短歌を作ってたよね?」


「それは良いですね、章紋のイメージ、トレース、そして詠唱することも、良い練習になります。作った詩歌は常に音読することも意識してください」


 美鈴はアトランス界固有の言語の授業を取ったり、図書館管理員の仕事に就くことでアトランス界の書物に触れたりと、着実に語感を磨く方向へと進んでいる。趣味を兼ねた勉強は間違いではなかったのだと、美鈴はホッとしたように胸をなで下ろした。


「他にできることはありますか?」


「あとは、六つの自然元素のイメージトレーニングが必要です」


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