そんじょそこらの使わしめ
巫女式神は鬼の元で神使として過ごしている。きっとこれからも。
あたしは使わしめになった。
"町"はまだ山の女神の支配で動いているけれど、いつかあたしの主が継ぐことになる。
神としておぼつかない主だけど、有屋がサポートしてくれてる。
言っても越久夜町には有屋とかしか、今は神さまがいないんだけどさ。
人も──山伏姿の式神も、ネーハも…皆 いなくなっちゃったけど、また会えるよな。童子さん。
約束しただろ?また会うって。あれからかなりの時間が過ぎたけど、あたしは諦めてないんだ。
また童子式神に会いたいから。
あたしは巫女式神じゃなくなったけど、巫女式神なんだ。アンタに再開するまでは巫女式神って名乗り続けるつもりだよ。
「──カラス!どこにいる!さっさと戻ってきなっ!」
稲荷の狐のテレパシーがわんわんと響いた。
「また"会議"の時間か?ったく、焦ったってなににもならねえのによ」
さわさわと風が吹き、草原をざわめかせる。広々とした土地に何軒か廃屋が立ち、信号機が傾いて立っていた。
──越久夜町はなくなっちまった。災害があったとか何かで人々は町を捨てたらしいんだ。あたしたちがカオスをリセットしたら、そういうことになってたんだよ。時空がたわんで戻ろうとした余波なのかな?難しいのはゴメンだけどさ、神様のご都合ってヤツだよなあ。
この上なく穏やかな景色を微笑ましく見守っていると、たまに山伏式神や童子式神がどこにいるのか思いを馳せた。
「カラス!いい加減にしなっ」
テレパシーで仕事をさぼるなと狐の神使に怒られてしまう。
「はいはい!わぁったよ!今行きまーす!」
今までありがとうございました。
「そんじょそこらの使わしめ」は完結しました。