特別家系の公認会計士
福岡芸術展の選考結果の連絡が来た。
芸術展は7月7日から開催されるので発表のほぼ二週間前である。
通常、発表時には受賞者の喜びの言葉があるのだから冷静になればそうだよなぁと思いついて当り前であった。
が、伽羅と春彦は福岡芸術展の遠野亜夫広報部長から電話があり驚愕した。
「え!?は…はい、ありがとうございます!」
携帯の通話を切って伽羅は震えながら後ろで凝視していた春彦を肩越しに見ると
「銀賞だって…どうしよう、俺」
とへなへなと座り込んだ。
春彦は座り込んだ伽羅を抱き締めると
「伽羅、おめでとー!」
すっげぇ、俺めっちゃ嬉しい
「おめでとー」
と声を上げた。
伽羅は目を潤ませると
「ありがとう、春彦」
すっげぇ嬉しい
と抱きしめ返してふぇえぇと泣いた。
誰かにこんな風に認めてもらうことなどなかったのだ。
春彦と伽羅は更紗と春馬の部屋に行くとこの事を報告した。
伽羅の絵の勉強のバックアップをしてくれていたのだ報告は当然であった。
更紗は微笑むと
「おめでとうございます」
松野宮さん
「明日の夜は祝いの膳を用意しましょう」
と告げた。
春馬は「おー、良かったじゃないか」と言い
「だが、これからが大切だからな」
まあ頑張れ
と告げた。
伽羅は頷いて
「はい、ありがとうございます」
それから花村先生に学ばせてもらえて本当にありがとうございます
と頭を下げた。
それに関して春馬は
「芸術振興も島津家の役目だ」
気にするな
と答えた。
二人は春彦の部屋に戻ると早速直彦にも連絡を入れた。
春彦は直彦が応答に出ると
「直兄、すっげぇいいことがあったんだけど」
と言い、伽羅に携帯を渡した。
直彦はうきうきとした春彦の声に
「…な、にがあったんだ?」
と戸惑いつつ問いかけた。
それに伽羅が
「直彦さん、俺、福岡芸術展で銀賞を貰って」
凄く嬉しくって
と泣きながら告げた。
直彦は笑顔になると
「そうか、おめでとう」
伽羅君
「賞を取ってからが勝負だ」
伽羅君は伽羅君らしく周りに分銅されることなく頑張れ
と何処か春馬に似たことを告げた。
「ご両親とご家族には報告したのか?」
伽羅はハッとすると
「あ、喜びすぎて…すぐ連絡します」
ありがとうございます!
と答え
「俺、頑張ります!」
と春彦に携帯を渡した。
春彦もハッとして
「俺も忘れてた」
ごめん!
と言いつつ
「あ、直兄。そう言えば15日に発売されてた小説Singに允華さんの小説載ってたけど凄く凝ってて面白かった。夏休みに帰ったら色々話したいって伝えておいてくれる?」
と告げた。
直彦はふっと笑うと
「ああ、伝えておく」
と答え
「…こっちへ帰ってきてくれるなら嬉しいが無理はするな」
と返した。
直彦から考えても春彦の帰郷を島津家が良しと思わないことが理解できたからである。
春彦は頷くと
「わかった」
と答え、携帯を切った。
そして、伽羅を見ると
「ごめん、俺忘れてた」
ごめんな
と謝った。
伽羅は首を振ると
「俺も興奮しすぎて忘れてたから」
今から連絡する
と携帯で家に電話を入れた。
母親も父親も喜び、春彦と島津家の人たちに礼を入れておくと告げた。
兄の友嵩は「良かったな、頑張れ」と言い、弟の美広も「良かったじゃん、伽羅兄」と喜んだ。
その後、春彦は神守勇に連絡してその事を告げ、伽羅は赤阪瑠貴に連絡を入れた。
彼女たちは二人とも
「「おめでとう」」
と伽羅に祝いの言葉を投げかけた。
翌日には田中悠真や伊藤朔、神宮寺凛や陸奥樹、羽田野大翔や南歩や小竹陽翔も全員が伽羅の報告を聞いて喜び、福岡芸術展の初日に行くことを決めたのである。
伽羅は周囲の皆が喜んでくれることに
「本当に俺、凄く恵まれているんだよな」
ありがとうな、春彦
と告げた。
春彦は首を振ると
「俺も一緒だから」
良かったな、伽羅
と返した。
ちょうど梅雨入りの6月中旬の出来事であった。
リバースプロキシ
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




