親子の形
春彦は笑みを浮かべると
「そうなんだ」
と言い
「花村先生からその芸術展について他には聞いてない?」
と聞いた。
「噂とか…」
伽羅はうーんと考えると
「先生は絵のことでも光の入れ方とか肌の光沢の出し方とかの技術的な手解きは丁寧に教えてくれるけど感性に触れる部分は余り言わない人みたいだから噂とかそういう人の感情的なあーだこーだは聞かないなぁ」
と答えた。
「もちろん、俺が落ち込んだり悩んだりしたことには助言をくれるけどな」
春彦は腕を組むと
「そうかぁ」
と呟いた。
「芸術展の運営で派閥とかそういういざこざがあるとか無いのかなぁって思って」
ごめんな
伽羅は首を振ると
「いいよ、審査委員の人の事件ならそれ考えるの仕方ないし」
と答え
「あー、でも派閥というわけじゃないけど福岡とか九州の中で流れはあるみたいだけどな」
花村先生は大岡先生の弟子で他にも何名かそうだし
「他にも幾つかのグループに分かれる」
春彦は目を見開くと
「へーそうなんだ」
と呟いた。
伽羅は頷いて
「前に花村先生が俺に絵を教えてくれることになった経緯の話になった時に言ってた」
大岡先生の流れの自分とかは島津家から優遇されているから凄く助かってるって
「他にも羽田野家と神宮寺家を後ろ盾にした芸術家がいるらしいよ」
陸奥家は菱尾湖南だけだって
「後は全くそういう後ろ盾のない人たちもいるってさ」
と付け加えた。
春彦は心の中で
「陸奥家は菱尾湖南が当主だからな」
と呟き
「羽田野家と神宮寺家に後ろ盾のない人たちか」
とおうむ返しに告げた。
羽田野家は狙撃事件以降大きな動きがあったからその芸術家の人たちにも影響があったかもしれない。
神宮寺家は恐らくあまり変化はなかっただろう。
春彦は考えながら
「芸術家の人たちの環境も色々なんだな」
と呟いた。
伽羅は頷いて
「だよな」
と答えた。
その時、譲が姿を見せると
「昼食のご用意が整いました」
お食事の時間です
と告げた。
二人は立ち上がると部屋を出て大広間へと姿を見せた。
食事は全て島津家の調理人が和洋中など重ならないように栄養面などを考えながら考案し出される。
春彦と伽羅は和食の花籠に入った懐石料理を食べ食後のお茶が出された時に春馬と更紗を見た。
春彦は更紗と春馬に
「あの、島津家が大岡先生の絵を買う切っ掛けになったのは…どうしてですか?」
と聞いた。
それに関しては春馬が答えた。
「特別な家系には地域の振興とかの役目もある」
だから芸術展や美術展で賞を取った芸術家を援助したり絵を買ったりして育てねぇといけねぇんだよ
「それも島津家の役割だからな」
だから大岡太蔵やその弟子もそういう意味で絵を買ったり援助したりしているんだ
「お前もその辺り勉強しねぇとな」
春彦は「あ、はぁ」と返事をした。
春馬は腕を組むと
「ただ大岡太蔵に関しては援助してから…なんかあったらしいけど」
と更紗を見た。
10年ほど前と言えば春馬は11歳である。
当主であっても実質島津家を支えていたのは更紗である。
更紗はお茶をテーブルに置くと
「そうですね、島津家は春馬の言っていた通りに芸術家を育てる役目がありましたから福岡出身の画家や彫刻家などで芽が出そうな人物を支援していました」
大岡太蔵もその一人だったのですが
「10年前にはもう一人楠野蓮司という画家もいました」
彼と大岡太蔵と二人を島津家は支援していたんですが…彼が突然失踪してしまって今は大岡太蔵とその弟子を支援しています
と告げた。
春彦は目を見開くと
「そう…だったんだ」
その腕を折って絵が描けなくなったから援助をやめたとか?
と聞いた。
更紗は首を振ると
「いえ、確かに腕を折ったようですけど」
と言い
「理由は分かりませんが…最後に絵を置いて去っていきましたから絵は描けていたと思います」
と答えた。
春彦は驚き
「え!?」
と腰を浮かせた。
更紗はにこやかに
「お茶が終わったら置いていった絵を見せましょう」
と告げた。
春彦は頷いて
「ありがとうございます」
と答えた。
伽羅も「俺も見たい」と答えた。
お茶を終えて更紗が案内した場所に置かれていた絵は春彦を驚かせるものであった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




