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リバースプロキシ  作者: 如月いさみ


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父と子

直彦は手紙のことを思い出し

「貴方がそう思ってくれたことを俺は嬉しいと思っている」

と答えた。


直樹は直彦を見ると

「あのシステムは咲良家の当時の当主である家康という女性が作ったものだ」

当時はどうしてもそのシステムが必要だった

「無くては日本が成り立たないほど…社会も世界も混乱していた」

と告げた。

「ただ彼女はこのシステムは時がくれば弊害となり崩壊する前提で作ったんだ」


直彦はそれに驚いて目を向けた。


直樹はふぅと息を吐き出し

「最初は咲良家が勢力を持っていた関東だけに導入したが他の区域も追従して導入した」

それが13か所と導入の判断をした今の特別な家系の前衛だ

「俺は大阪で暮らしている唯の高校生だったが…ある事情から全てのシステムの番人になった」

余りに日本が混乱していてその特別な家系の未来もどうなるか分からなかったからな

と告げた。

「だが、その混乱を乗り越えて…現在へと繋がった」

悲劇や弊害の一方で特別な家系が今なお日本の様々な部分を支えているのも事実だ


直彦はそれについて否定はできなかった。

白露家や津村家がその地域の様々な活性化や発展などを含めて管理をしていることを知っているからである。


それに、白露元や津村隆などのように利権を捨てても改革しようとしているモノばかりでないことも知っている。

それが今回の事件に結びついていることもだ。


直樹は直彦を見ると手を差し出した。

「直彦、お前とお前の親友たちが望むことをしようと思うならば…お前はその大きな責任と延々なる孤独を受け入れなければならない」

例えば計画が失敗してシステムが一つでも残っている限り

「お前は番人となりお前の意思など関係なく親友たちが死んでも生き続けることになる」

俺のように秋月家当主をその身で作り選び受け渡す勇気がでるまで


…それが秋月家当主になるということだ…


直彦は息を飲みこんだ。

母親である栞が言ったことはこの事だったのだ。


彼女は全てを知り入院中の自分に知らせに来たのだ。

『貴方はその為に大きな選択をしなければならない』


直彦は直樹を見ると

「貴方はその道をずっと歩いてきた」

唯一人となって

と告げた。

「だから、俺に直ぐに秋月家当主を渡さなかった」

俺の為に


…お父さん…


直樹はにこりと笑みを浮かべた。

「ああ、だが島津の子を見てお前に選択を委ねようと思った」

彼は春樹によく似ている

「その上、春珂のように優しい」


俺は二人を愛していた

「遠い昔に失った弟と同じように」


直彦は笑むと彼の手を握りしめて

「俺は今しかないと思っている」

春彦を含めて

「隆や白露や東雲や末枯野…みんなとなら変革できると思っている」

と告げた。

「それが最終的にどんな形になって俺がどんな責を負うことになっても後悔はしない」


…秋月家当主になります…


直樹は静かに微笑むと立ち上がって直彦を抱き締めた。

「頑張れ」

直彦


直彦は初めて涙を落とすと

「お父さん…」

と抱きしめ返した。


直樹はゆっくり離れると

「今この時からお前が秋月家当主だ」

全てを統括するシステムのデータベースはお前が知っている何処にも属さない場所にある

と言い、背を向けた。


直彦は涙で前が見えなくなっても懸命にその背中を見つめ続けた。

最期だと。

もう二度と会うことはないのだと理解していたからである。


…さようなら、お父さん…


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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