運命の転換点
それは一瞬だったような。
それとも長久だったような。
そんな時間だった。
春彦は小さく声を零すとフワリと目を開けた。
一瞬自分が何処にいて何をしているのか分からなかった。
「春彦さん」
ポロポロと涙を落としながらよく知っている少女が自分の手を握りしめて見つめていた。
「…勇、ちゃ…ん?」
神守勇は口をへの字にすると
「私、怒ってます」
春彦さんのばか
と言い
「でも、目を覚ましてくれてよかった」
と泣きながら笑みを見せた。
春彦はその後ろで泣きながら安堵の息を吐き出している全員を見回した。
「お、かあさん、に、はる、ま兄さん…伽羅…それに…」
俺、何が?
更紗は堪えきれずに涙を落としながら春彦の手を包み
「無事で、貴方が無事でよかった」
春彦…
とそのまま倒れそうになったのを春馬が抱き留めた。
「お前が狙撃されてから目覚めるまで5日間も一睡もしていなかったんだ」
だから、お前は何もわかってないっていってんだ
そう言って春馬は泣きながら顔を背けた。
伽羅は微笑むと
「春彦、本当に本当に無事でよかった」
と号泣し紙袋をベッドの縁に下げた。
「これは春彦から渡さないと意味ないからな」
早く元気になって渡さないとだからな
「伊藤君や神宮寺君や田中君や陸奥君も羽田野君もずっと学校が終わったら寄ってくれていたんだ」
今日も来ると思う
「みんなすごく心配してたから喜ぶと思う」
春彦は「そう、だった、んだ」と呟くと
「心配、かけて…ごめん」
と頷いた。
そして、もう一人白露允華を見ると
「允華、さん」
と呼びかけた。
允華は笑むと
「本当に良かった、先生もすごく心配してた」
先生も同時に狙撃されてね…春彦君より二日早く目覚めたから
と言い
「先生に頼まれたことがあってね彼女も一緒に送ってきた…暫く島津家にお邪魔している」
と告げた。
春彦は心配そうに
「なお、兄も?」
今は?大丈夫なのか?
と聞いた。
允華は頷いて
「ああ、先生も春彦君を心配してた」
大丈夫だから、今はゆっくり休んで
と微笑んだ。
春彦は頷くと再び眠りに落ちた。
その後の医師の診断では峠は越えたということで退院は1か月ほどで出来るが通学できるまでに回復するにはまだ当分時間がかかるとのことであった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




