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リバースプロキシ  作者: 如月いさみ


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ハマユウ

その頃、武藤家の長男である肇も帰宅しており更紗と話をしていたのである。

直彦の出生の話である。


更紗の部屋に入ると深く頭を下げ

「中々出生を追い切れず申し訳ございません」

と告げた。


更紗は首を振ると

「いえ、戸籍謄本の内容が内容ですから難しいのは分かっております」

ただ春珂さんが春彦を連れて夏月直彦の元へ行ったということは秋月家へと繋がる何か確信的なものがあったのだと思います

「見た目だけではなく」

と告げた。

「私は彼が秋月直樹の子供であることに疑いは持っていないのですが…証拠となるモノがないと」

いえ

「秋月家が受け継いできたものを受け継いでいるという確証が欲しいのです」

春馬と春彦の為に


部屋の隅で控えていた武藤堂山が息子の肇と更紗を見て

「春珂さまは春馬様にも春彦様にも島津家の引継ぎをされておられない」

これで秋月家でも引継ぎがされていなかったら

「あれを管理することすらできないということに」

と告げた。


更紗は頷き

「ええ、ただそんなことが私の父や兄に知れたら…きっと春馬か春彦を殺して残した者を使って無理にでも動かそうと調べるでしょう」

今は春馬が引き継いでいると思っているからこそブレーキになっているのです

「手を出して…永遠にその機会を失ってしまっては元も子もありませんから」

春彦に関しては目障りにならない限り手を出さないとは思うのですが

「あの子は少し心配なのです無防備な上に運命を何か引き寄せている気がして」

と視線を伏せた。


堂山は険しい表情で

「伊藤、神宮寺…そして、陸奥とその繋がりを再構築していっておりますから」

と呟いた。

「今バランスが大きく傾いでいるようですね」


更紗は唇をキュッと噛みしめた。


27年前に切れてバラバラになった特別な家系の絆を意図せず結び直しているのだ。

それはまた27年前の悲劇につながるようで更紗にとってよろこばしいことではなかった。


彼女は窓の外を見ると

「17年離れていたとしてもお腹を傷めて産んだ子ですもの」

春彦も春樹さんのように死なせたりはしない

と告げた。

「絶対に守ってみせる」

堂山、譲ともにお願いしますね


堂山は深く頭を下げた。

「かしこまりました」


武藤家にとっても27年前の出来事は大きな痛手であった。

守るべき主家の人間を悉く失ってしまったのである。


信頼の失墜と言っても過言ではなかった。

その事を悔いながら堂山の父はなくなったのだ。


『なんと詫びれば良いか』

それが父の最後の言葉だった。


しかし。

27年前の悲劇の時が近付いているとはこの時誰もが思いもしていなかったのである。


22日に春彦と伽羅と直彦と隆は島津家へ戻り、23日に伽羅の家族がやってくると更紗と春馬が挨拶をして伽羅は家族と嬉野温泉へと旅行に出かけた。


もちろん、島津家の豪華旅館での宿泊であった。

一棟貸しの露天風呂付き客室である。


部屋に通された伽羅の父親である松野宮友広は伽羅を見ると

「…バナナで良かったのか?お土産は」

と震えながら呟くほどであった。


以前、電話で兄の友嵩が伽羅に土産の確認を取った時に東都バナナで良いと言われてそれを買って渡したのだ。


金持ちと言っても社長の息子程度に考えていたのである。

だが。

だが。

正にその土地の名士…と言って過言でない邸宅であり、この宿屋であった。


三男の美広は身体を伸ばしながら

「親父、もう渡したし…今更だろ」

とさっぱり告げて

「それより、本当にすげーな」

と部屋を通り抜けるとデカい露天風呂を見た。


周囲には赤い紅葉が植えられ竹の垣根が作られている。

情緒あふれる露天風呂である。


母親の美伽子はくすくす笑いながら伽羅を見ると

「お父さんからお話聞いたわ」

美術大学へ行くつもりなのね

「頑張るのよ」

と告げた。


伽羅は頷き

「いま、画家の先生から手解き受けてて今度展覧会に応募するつもりなんだ」

俺、勉強とかダメだし

「絵を描くの好きだから頑張りたいと思ってる」

と答えた。


それに美広が

「だから、伽羅兄は恵まれているんだって」

とビシッと指を差した。


伽羅は頷いて

「そう思ってる」

だから春彦にも感謝しながら、いつか春彦が困った時はすっごく力になるつもり

と笑顔で答えた。


友嵩は笑って

「それで良いんじゃないか?」

と言い

「本当に困った時に力になるのが友達だからな」

と告げた。

「美広も東都大学付属高校受かったし、これからだからな」


友広も頷いて

「ああ、美広もお前が決めた道なら力になるぞ」

と告げた。


美広は笑顔で

「ありがとう、父さんに友嵩兄」

と答えた。


伽羅は家族の笑顔を見つめ

「こんな風に家族と笑える日が来たのも春彦のお陰だから」

ありがとうな

「俺、絶対に春彦が困った時に力になるからな」

と心で呟いた。


その日から伽羅達家族は温泉宿でゆっくりクリスマスを過ごし、それから島原などを周遊しながら年を越したのである。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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