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「聞いてよ~! 乙女ゲームに出てくる呪文がとてつもなく長くて全く覚えられないの!」
「へぇ~、そうなんだ」
「もう、なにその興味ない返事~! 呪文さえ唱えたらどんな魔法でも使えるんだよ!」
「便利だね。一体どんな呪文なの?」
「えっと、確か、ちょっと待って、メモに書いてきたから」
「そんなにも覚えにくい呪文なんだ」
「あ、あったあった。ネポムセーノマリアデロスレメディオス!」
……前世でこの乙女ゲームをしていた友達が興奮気味に話していた呪文をハッと思い出した。
ネポムセーノマリアデロスレメディオス。この呪文は一瞬覚えにくいけど、『海辺を掛ける二人の女』や『ゲルニカ』などを描いたスペイン出身の画家ピカソの名前の一部だったからすぐに覚えることが出来た。
パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ファン・ネポムセーノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ。運営はピカソファンなのかな……? 彼の絵には物凄い価値があるけど、私はその良さをあんまり理解出来ない。あ、でも、『パイプを持つ少年』は好きだな……。
まぁ、今はそんなことはどうでもいいか。とにかく試しに呪文を使ってみよう。
「使い方をよく分からずに使って大丈夫なのかな……。どの程度の魔法まで使えるのかも分からないし……。不安要素が大きすぎる」
顎に軽く手を添えながら、ブツブツと独り言を呟いた。
他にも友達が何か魔法のことについて言っていた。私は大脳皮質から必死に昔の記憶を引っ張り出す。
「その呪文を唱えたらどうなるの?」
「唱えた後に、使いたい魔法を言えば何でも出来るよ」
「え、何それ、最強過ぎない? 魔法に種類ないって、それに危なすぎるでしょ」
「そうだよ、だから女で魔法を使えたら死刑にされるんだよ」
「ちょっと待って、女と男じゃ使える魔法が違うんだよ」
「それは初耳」
「あれ? 言ってなかったっけ? 男は呪文を使わずに魔法を使うことが出来るんだ。だけど、使える魔法が限られているの。一方、女は呪文を唱えたらどんな魔法でも使うことが出来るし、魔力も女の方が強い場合が多いの。だから国は魔女を見つけたら即死刑」
「……結構厳しいね。国の安全を保障するためにはそうせざるを得ないのか」
「ちなみにヒロインの妹は頭悪いし性格も最悪な悪役令嬢なんだけど、彼女が一番魔力を持ってるの」
「彼女は死ぬの?」
「そうそう、公爵令嬢だけど魔女ってばれて死刑にされるよ。ヒロインを虐めてたっていうのもあって誰も彼女を助けようとはしなかったの」
「もし、彼女がヒロインのことを虐めていなかったら助かったのかな?」
「う~ん、分かんない。私はただヒロインと攻略対象をくっつけたいから早く悪役令嬢は消えればいいのにって思ってたもん」
……そうだった。どうして今までこんな重要な事を忘れていたのだろう。
けどこれでようやく理解出来た気がする。これは少し私が殺されるのも納得いくような気もする。
もし私に人望があったら、利用価値があるっていう理由で処刑されなかったかもしれない。……この記憶、もっと早くに思い出したかった。
今はそんなことをくよくよ考えてもしょうがないか。早くシフォンのことを解決してから自分のことを考えよう。
私は周囲を見渡し、周りに誰もいないのを確認し、息を整えてからそっと口を開いた。
「ネポムセーノマリアデロスレメディオス」




