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あの賢者タイムをもういちど  作者: 妖怪筆鬼夜行
二章『湯けむりの向こう、約束の場所』
62/91

2-21

 諸君。

むくつけき青春の探求者たちよ。

はたして諸君は女心と言うものを理解しているだろうか。

我々男性陣にとって、それは時に難物(なんぶつ)である。

無論、女性陣にとっても男心に解せない部分もあるだろう。

しかしさしあたって、今、俺が直面している()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ほど相対(あいたい)し難いものもそうあるまい。

たとえばこれが逆に、姉に全裸(SUPPONPON)を見られた弟の場合だったとして、その修羅場具合はどれほどのものだろうか。

俺の場合姉は居ないのでパルメディアに置き換えて考えてみるが、十中八九(じゅっちゅうはっく)奴は萎縮(いしゅく)などしない。

むしろその後数週間に渡ってイジり倒してくるだろう。

このように男が被害者側であった場合、ネタにされることで笑い話として処理することも可能ではある。

もちろんなぜ被害者側が尊厳(ライフ)の無くなった死体を蹴られるような扱いを受けなければいけないのかという理不尽はある。

だがそれでも、顔を真っ赤にして相手を糾弾(きゅうだん)するよりはダメージは少ない。

もしそんなことをすれば、問題が真面目な話として取り扱われてしまうからだ。

それでは被害者側の惨めさがよけいに際立ってしまう。

そう。

おわかりいただけただろうか。

被害者が男であった場合はあえてイジられることで笑い話にもできるが、対象が女性、とくに年頃の娘さんだった場合被害者イジりなど出来ようはずもないのである。

だから今回の、クーネちゃんの問題はマジなやつである。

彼女は怒っている。

それは間違いない。

だが謝罪しようにもこのセンシティクビ、もといセンシティブな話題をどう切り出したものか。

もし下手にちょっかいを出せばどんな藪蛇(やぶへび)になるか分かったものではない。


 というわけで俺は慎重だった。

レーンと別れたあと、無言で歩きだしたクーネリアに追従(ついじゅう)して町を巡った。

向こうだって気づいていないわけでもあるまいに、俺たちは会話をするでもなく、しかしきっぱりと拒絶されるでもなく微妙な距離感のまま商店を見て回った。


 入浴用品店を冷やかした。

そこにはタオルや石けん、替えの下着などが売ってあった。


「……」

「……」


 土産物屋を冷やかした。

そこには工芸品のほかに浴衣や下着も売ってあった。


「…………」

「…………」


 衣料品店を冷やかした。

そこにはおしゃれな服と、当然のように下着も売ってあった。


「………………」

「………………」

「……………………」

「ちょっと待って。もしかしてお兄ちゃんすごいピンポイントで圧かけられてる!?」


 俺だって例の一件では悪かったと思っている。

でもだからって、これはちょっと無言の圧力過ぎないか?


「うっさい。勝手についてきて勝手に騒いでるんじゃないわよ!」

「いや。だってクーネちゃん怒ってるし毎回下着ばっかりだし、やっぱりこのあいだの透け透けさくらんぼのこと――」

「透け透けさくらんぼ言うな、ばか!」

「ぐふぅー!」


 言葉を切り裂くように叩き込まれた魔力弾によって、俺は後方へと吹き飛ばされたのだった。

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