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あの賢者タイムをもういちど  作者: 妖怪筆鬼夜行
二章『湯けむりの向こう、約束の場所』
43/91

2-2

 カルクトスの宿での魔のループ現象を脱した俺たちは翌日から一路北を目指していた。

理由は単純明快で、レーンが聖法教会から(たく)されていた最初の任務を遂行(すいこう)するためである。

その内容もこれまた単純だ。


『カルクトスの北方アデラ高原に出現した回廊(かいろう)を破壊せよ』


 それが俺たち勇者一行の最初に成すべき魔王軍への反撃の狼煙(のろし)だ。


 ということで、まずは回廊について確認しておこう。

回廊とは文字通り魔界から現世界(げんせかい)へと繋がれる通路のことだ。

魔界とは魔族の住む世界、現世界とは俺たち人間を含めた多様な種族の住む世界のことで、二つの世界は通常交わることなく独立している。

ただし、独立していると言っても二つは別々の世界ではなく、それぞれがこの世界の一部なのだ。

簡単に考えるなら二階建ての家を思い浮かべればいい。

一階が魔界。

二階が現世界。

そしてこの家はフロアが完全に遮断(しゃだん)されていて一階と二階の往来(おうらい)ができない。

もともとそういう造りの家だからそれがルールだ。

しかし魔界(一階)の住人は階段という文明の利器を発明してしまった。

それが回廊だ。

魔族はその回廊(階段)を通って現世界(二階)にやってくる。

そして居場所を奪いもと居た住人を奴隷(どれい)として支配する。

まこと理不尽極まりない悪の所業である。

もちろん我々現世界(二階)の住人も手をこまねいているわけにはいかない。

魔族を追い返し回廊(階段)を破壊しなければ平和は取り戻せない。


 そういうわけで、だ。

ごく最近アデラ高原に出現した回廊を可及的速(かきゅうてきすみ)やかに破壊すること。

それが勇者としてレーンに課せられた最初の実戦任務であり、その参謀に()いた俺の攻略目標である。


「問題なのは今の段階で魔王軍の戦力がどれだけ送り込まれて来てるか、なんだよね」


回廊へと向かう道中、休憩で立ち寄った小川のほとりでレーンはそう不安を口にした。

そのレーンは岩に腰掛けブーツを脱いだ足を小川に浸して涼を取っている。

カルクトスの宿からは徒歩での移動に切り替えたので疲れも溜まってきた頃合いだ。

もう少しで敵の勢力圏に入るだろうから今のうちに足を休めておくのも大切なことだ。

ためしに俺もレーンの隣で真似をしてみる。

なるほど冷たくてきもちいい。

これなら旅の疲れもやわらぐというもの。

しかもゆっくりと両足をバタつかせて水と戯れるレーンの姿を楽しめるという視覚効果付き。

こっちはこっちで色々な心労に効果ばつぐんだ。

一方クーネリアはと言うと、近くの一番高い岩の上に仁王立ちして腕組みをしている。

そこに歩き疲れた様子はなく、身体的ポテンシャルの高さはさすが魔王と言うべきか。

しかしメイド服なので威厳(いげん)は無い。


「ボクが聞いてるかぎりだと小さな回廊らしいんだけど、だからって守りが薄いとはかぎらないんじゃないかな?」

「かもしれないな。でもすでに味方が包囲しているんだろう。あまり心配しなくても大丈夫だと思うぞ?」


 実際問題、俺たちだけで回廊を攻め落とせと言われれば難儀(なんぎ)しただろう。

だが聖法教会もそこまで無理難題を押し付けてきたわけではない。

ちゃんと主戦力となる軍勢と共闘の手筈(てはず)を整えてくれている。

これから彼らと合流して任務にあたるので戦力的に問題ないのは一周目で実証済み。

もちろん油断して適当なことをすれば結果が変わってしまう可能性はある。

が、仮に問題が発生したとしてもそれを解決するのが賢者である俺の仕事だ。


 むしろそれより重要なのは、この任務で四人の仲間のうちの二人目と合流することになる、ということだ。

その名は獣人戦士プリニャンカ。

今から再開が楽しみだ。

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