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「いや。さすがに今回ばかりは踏まれてるのに納得できないんだが?」
俺が目覚めるとやはり顔の上に誰かさんの足が乗っていた。
もはや定番となったこの状況だが、どう考えても今度の巻き戻りはクーネリアが悪い。
被害者である俺がこんな起こされ方をする謂れはないはずだ。
「残念ね。あたしもうこれ以外の起こし方を思い出せないのよ」
「そんな起こし方だけが体に染み付いているみたいに言っていないで、声を掛けるとか肩を揺するとかもっと色々あるだろう。っていうか一番最初は普通に起こしてくれたんだからそれを思い出せ!」
無理やり跳ね起きることでクーネリアの足を跳ね飛ばす。
俺だって毎回やられっぱなしではいないのだ。
「ちょ、ちょっと、急に――」
今までこちらの反撃を予想していなかったのか、俺を踏みつけていた足を持ち上げられる形となったクーネリアが後に引っくり返った。
そのまま盛大に尻もちをついたがベッドの上なので怪我はないだろう。
「何よ。もう。よくもやってくれたわね!」
「怒ってないで少しは反省しろ。お前が先走ったからまた失敗したじゃないか」
俺の叱責にも、クーネリアは前かがみの四つん這いの体勢になって接近戦でにらみ返してきた。
しかし俺だってそんな恫喝には屈しない。
真っ向から応戦してにらみ合う。
「ふんっ。あんただって同じ結果だったんだから偉そうには言えないでしょ」
クーネリアは顔を引いてそっぽを向くように座り直した。
たしか同じ結果にならないようにとか言って主導権握ってなかったか、こいつ?
その挙句が最速での突貫からの大失敗だぞ。
しかも状況的には俺の時より悪かったと言わざるを得ない。
もっともそんなよく燃えそうな指摘をクーネリアに注ぐこともない。
ここはだまってがまんする賢しい俺をなんと呼ぶ?
そう。
ことなかれ主義者だ。
「それにしてもいったいなんなのよ。今度はすぐに部屋に入ったのにあの子なんでまた裸なわけ?」
思い返してみれば、レーンさんあれは着てませんでしたねぇ。
しかもそれを押し倒してしまいましたねぇ。
いったい誰のせいなのか問いつめたいですが、あまりにもさくらんぼが怖いので言えませんねぇ。
「俺が知るわけないだろう。着替えの最中にドアを開けているのはこっちなんだから、たんに間が悪かったとしか言いようがない」
「間って言ってもどれだけ時間差を取ったと思ってるのよ。それでもやっぱり裸だなんて、あの子もしかして部屋の中だといっつもああなんじゃないの?」
「ばか言うな。レーンにそんな野生じみた生活習慣があるわけないだろう。次は俺がちゃんとやるからお前は大人しくしていてくれよ」
しかし――
そうして今度こそと意気込んでみたものの、これ以降何度やりなおしてもレーンの裸に辿り着くという無限ループに俺たちは陥ってしまったのだった。




