マキの反応:『猫!?』
コン、コン。
ヒナは静かに息を吸い込み、ドアノブに手をかけた。
カチャリと音を立てて扉を開けると、冷たい空気が一気に流れ込み、かすかに雪の匂いを運んできた。
そこに立っていたのは、栗色の髪を高い位置で結んだ女の子。
冬の陽だまりのような笑顔を浮かべていた。
「やっほー、ヒナ!」
「……マキ?」
「そう! 本物のマキですよ~! 相変わらず、ドア開けるの遅いね?」
マキは白くてふわふわしたマフラーに、ベージュのコート、そしておそろいの手袋をしていた。
頬は寒さで少し赤く染まり、元気いっぱいな様子だった。
「どうしたの?」とヒナが少し身を引きながら尋ねる。
「んー、ちょっと誘いに来たの! 一緒にゲームセンター行かない?」
「……ゲームセンター? 今日?」
「うん! だって日曜だし! 最近ずっと家にこもってるでしょ? 少し心配になってさ~」
ヒナは一瞬黙り、困ったように笑った。
「ありがとう、マキ。でも今日は家にいようかな。」
「えぇ~、またぁ?」
マキは軽く肩を落とし、それから小さくため息をついた。
「じゃあ、せめて中に入ってもいい? 外、めっちゃ寒いの!」
「うん、いいよ。入って。」
マキは靴を脱ぎ、手をこすりながらリビングへ。
暖かい空気に思わずほっと息を漏らした。
だが――目線を上げた瞬間、彼女は固まった。
「……え?」
ソファの上に、小さな影。
銀色の髪、猫のような耳。
その少女が、恥ずかしそうにマキを見て、すぐに視線をそらした。
「……ヒナ、その子……猫?」
ヒナは気まずそうに笑った。
「えっとね……実は、その話をしようと思ってたの。」
二人はちゃぶ台の前に座る。
サキはソファの影から、そっと顔をのぞかせていた。
ヒナは、あの日のことをゆっくり話し始めた。
雨の夜、路地での出会い、そしてどうやってサキがここに住むようになったのか――。
マキは途中で口を挟まず、ただ目を丸くして聞いていた。
「ちょ、ちょっと待って。つまり、その子……私たちの言葉、わかるの?」
「うん。」
「え、話すこともできるの!?」
「少しだけね。」
マキはテーブルに手をつき、興奮気味に言った。
「すごい! 猫じゃないよ、猫娘だよ!」
その言葉に、サキの体がピクッと震えた。
マキが立ち上がって近づこうとすると、サキは一歩、また一歩と下がり、ヒナの後ろに隠れてしまう。
「ちょ、ちょっと逃げないで~! 別に何もしないって!」
マキは笑いながら言うが、サキはヒナの服の袖をぎゅっと握り、耳をぺたんと伏せた。
ヒナはその頭をそっと撫でた。
「ごめんね、マキ。サキは少し人見知りなの。」
「そっか……ごめん、びっくりさせちゃったね。」
空気がふっと和らいだ。
マキはまた座り、今度は落ち着いた様子で微笑んだ。
サキはソファの陰から、まだ少し警戒しつつも二人を見守っている。
外では風が窓をかすかに鳴らし、部屋の中に穏やかな時間が流れた。
「ねえ、ヒナ。」
しばらくして、マキが小さな声で言った。
「なんか……ヒナ、今の生活、似合ってる気がする。」
「……そうかな。」
ヒナは小さく笑い、サキの頭をもう一度撫でた。




