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5 旦那様も転生者

砂糖どさーっ。

書いてる方も恥ずかしい。

「今…今、何て?」

「貴女1人を一生愛しますから、ご安心ください。と。」

「ではなくって、その前よっ!」

「ああ。夫をATMのようにしか見ていない女性はお断りだと申し上げましたが?」


まるで、それが何か?と言わんばかりの態度で話をされる。


「ATMって…」

「Automated Teller Machine 日本語にすると、現金自動預け払い機、ですね。」

「貴方・・・?」

「平凡な国家公務員、独身、30歳でしたが。」


転生者??


「嘘でしょう?」

「嘘なんて言って、どうするんです?私は乙女ゲーム何て全くプレイした事も無ければ、興味もありませんでしたから。前世と思われる記憶がある上に、文明の発達具合がチグハグなこの国、世界の成り立ちに常々疑問を感じていました。先日、貴女と話して、一気に理解が、進みましたよ。」

「でも、結婚しなくても。」

「まだ言ってるんですかこの口は。」

「んっ…」


ちょっと。キスで誤魔化すのやめてくれません?


「はぁっ…」

「破滅フラグを折りたいのでしょう?ならば、ちょうどいいではありませんか。何かあっても、必ず私が守ります。あんなに泣くぐらいなら、私の隣で笑っていればいいんですよ。」


「泣いてなんか。」

「6月の夜会で目が腫れ上がるほどに泣いていたではありませんか。」

うわぁ。途中から記憶が曖昧なやつだ。

何言ったんだ私っ。


「その話し方…」

「ああ。これは、この世界に生まれてからのものですよ。前世での一人称は俺です。貴女、押しに弱いですからね。急がないと、他の男にすぐに持っていかれそうでした。知りませんでした?貴女、結構、男性から人気あったんですよ。」


「人気なんて知らないし、押しに弱いって…」

「事実でしょう?ちょっとの揺さぶりで動揺して。本当に婚約する気が無いのなら、手玉に取っている悪女役にでもなれば、私から逃げられたのに。頑張って、私に話を合わせて。」

ククッと、笑われる。


「だから、私に捕まったんですよ。」


「はぁ。」

ため息をついてしまった。


「ため息をついたら、幸せが逃げると前世の方が言っていませんでしたか?」

「そうですね。」


「私が貴女を幸せにしますよ。」

「大した自信ね。」


「独占欲は強いので。覚えておいて下さいね。本当は、学院なんて辞めさせて、横に置いておきたいんですが。」

その美しい微笑が怖い。

「転生者だからって、何でそんなに好きになる要素があるのよ。私ぐらいのレベルの令嬢なんて、そこら辺にいっぱいいるじゃない。本気なの?」


「ええ。この顔も、髪も、身体も、貴女の優しい性格も。自分で運命を何とかしようともがくところも。全てが私の好みです。」


恥ずかしいわっ。

この人、恥ずかしくないの?


「そうやって、純粋に頰を染めてしまうあたり、私は嫌われてはいないんだと安心しますよ。甘やかしてあげますから、私の事をもっと好きになって下さいね。」


そう言うと、ペロリと鎖骨を舐められたのだった。



抱き起こされ、膝に座らされた。

どうしても、下ろしてくれないらしい。それから、舞踏会がお開きになる頃合いまで、話をした。


頭の良さではどう頑張ってもかなわないし。ベタ甘く耳元で囁かれる声に絆されたのだ。

意識してみると、メガネで知的なインテリイケメンとか私の好みドストライクで。


この勝負、初めっから私の負けだったのだ。


9月に正式な婚約を交わし、3月の卒業式当日に入籍する事となった。


2月になった。

今は宰相ではなく、リオンと名前で呼んでいる。

嫁入りの準備も、つつがなく進んでいる。



第3王子から珍しく声をかけられ、おめでとうと言われながら、ご愁傷様です、みたいな哀れんだ目を向けられた。


クロードからも声をかけられたが、

「よかったな」

の、一言だけだった。





ゲームの仕上げ。卒業記念パーティー。

綿密に話をして、この日ばかりはエスコートしてもらう予定だったのに、リオンは宰相の仕事で遅れることとなった。


午前に卒業式典、午後からパーティー。


そこで、初めてリリスティールと出会った。


よくよく考えたら、リオンに振り回されて、リリスティールの事、忘れてた。


リオンはあと1時間は来れないかな?


クロードは最低限の挨拶をすれば帰ると話していたな。でも、リリスティールの顔色は悪い。あんなに蒼白で、本当に大丈夫なんだろうか?


クロードに声をかけてリリスティールを休憩フロアに誘う。

クロードは同級生の第3王子やその他の主要人物に挨拶してくるらしく。挨拶が終わったら、予定通り帰るらしい。


「ねえ、リリスティール様。だいぶお顔色が良く無いわ。随分、無理をして出席されたのね。お可哀想に。クロード様も、こんな無理させるなんて、ひどいわ。体調がよろしく無いって聞いてましたけど、これ程とは。」

リリスティール様は、漆黒の髪と目で、その華奢な姿と、今日の紫のドレスがよく似合っている。

「お気遣いありがとうございます、レイローズ様。私、普段からあまり血色が良くないのです。今日は、体調はいいのですわ。」

「そうなんですの?それはそうと、リリスティール様は悪役令嬢ってご存知?」


カマかけてみよう。


「悪役令嬢でございますか?小説とかの?」

「そうですわ!」

やった!引っかかった!やっぱり転生者!


「花森は?」

「はなもり?ごめんなさい。ほとんど、本は読んでなくて。本の題名ですか?」

知らないか。まあ、いい。

「うふふふ。ねえ、リリスティール様、私、千葉県出身なの。あなた、どこの方?」


もう、目をまぁるくさせて、可愛らしいわ。2つ年下なのよね。クロードが離さない筈だわ。

「この世界、恋愛小説なんて無いのよ。とってもつまらないわ。だから、悪役令嬢なんて言葉、無いの。それを理解できるって事は、日本人でしょ?」

「あっ・・・。熊本です。」

「うふふふふ。嬉しいわ。私が知ってる転生者、貴女で2人目よ。道理で、ストーリーがめちゃくちゃになってるはずだわ。」


「リリィ。待たせてすまない。帰ろうか。」

フッと微笑んで、クロードがソファに座っていたリリスティールをお姫様抱っこする。

「あらあら、まあまあ。クロード、貴方、そんな顔もできるんですのね。」

魔王様が笑ってるよ!

雹どころか、槍でも降って来るんじゃなかろうか。


「リリィだからね。まあ、君がリリィを見ていてくれて助かった。ありがとう。」

ツカツカとクロードが歩き出す。

「待って、クロード。私からもレイローズ様にお礼を言わせて。」

リリスティール様が慌ててクロードを止める。


「レイローズは、伯爵家の出だし、宰相様に嫁いでも侯爵家だから、君が話す時に敬称は要らない。」


その通りですがね。ズレてますよ、魔王様。


「もう。クロード、そういう事を気にするなんて。レイローズ嬢、ありがとうございました。また、ゆっくりお話したいわ。」

「ええ、リリスティール様。でも、まだ体調が万全では無い様子に見えますわ。お茶会となるとご用意も大変でしょうし、お見舞いという名目で今度、お伺いしても?」

ニッコリ笑って提案してみる。

「ええ。もちろん。楽しみにお待ちしていますわ。」

クロードが止めない所を見ると、クロードからも、リリスティールとの交友は許可されたっぽい。




パーティーはゆっくりと進んでいく。リリスティールはクロードと帰り、第3王子は会場にいるが、ヒロインは帰った。

もう、お開きになる直前になって、リオンは到着した。


「遅いわ。」

「ごめんね、私のお姫様。」

「お姫様じゃなくて、奥様でしょ?」

「もちろん、婚姻書類はキッチリ提出して来たよ。」

「終わったわ。」

「そうだね。君の不安が1つでも消えたなら、良かった。」

「夏からずっと、貴方に振り回されてばかりだったけど、わざと?」

「貴女に他の男の事を考えさせる時間なんて、1秒でも減らしたいですから。」


周囲に人が減ってるからって、甘々だわ。


「どうだか。」

恥ずかしくって、フイと横を向く。


「今日は、私の家に、連れて帰りますよ。奥様。」


和やかに話す宰相を遠くから見て、驚愕の表情を、浮かべる者数名。


ああ。何か、解る気がするわー。

この人達、昔、何かこの人にやられたのかしら?


パーティーが終わる。


侯爵家の馬車で、侯爵家に行く。


お義父様もお義母様も気が早くて、秋には本邸の横に、私とリオンの家が用意されていた。

というより、何年も前から、嫁取りの為に用意していて、私の好みに合わせて内装を少し変え、秋には使えるようになっていた。


もう、何度も訪れたその家が、今日から私の家となる。


終わった。学院を去りながら、街並みを眺めていると、前世の記憶が戻ってからの4年間を思い出す。


安堵感に、ぽろりと涙が出る。

「やっぱり、私の奥様は泣き虫だね。」


ギュッと、横から抱きしめられて、涙を拭われる。


1人でも大丈夫と、頑張っていた頃の私はどこに行ったんだろう。


横にある温もりに甘やかされて、もう、1人でなんて耐えれそうにない。


でも、終わったのだ。

そう、思うと、涙が止まらなくなる。


クスクスと声を抑えて笑うリオン。

「困ったなぁ。父上も、母上も、君を待ってるよ。でも、泣いて目が赤かったら、早く解放されるね。それはそれでいいかな?」


優しく額にキスされる。


侯爵家では、熱烈に歓迎されて、本邸でお義父様とお義母様と夕食を共にした。


リオンから、目が赤いのは、感動屋さんで感極まって泣いたという事にされてしまい、可愛らしいと、お義母様に喜ばれ?


疲れているだろうから、と、リオンにさっさと別邸に連れ帰られた。


別邸には、ファシエ家から専属として付いて来てくれたメイドのアリスが待っていた。


やっぱり、知った顔があると、ホッとする。


湯浴みをし、部屋着を新しい屋敷で着る。


何だか不思議な気分だ。外の景色も、違う。

庭が綺麗に整備されていて、夜に咲く白い花が部屋からも見え、美しく幻想的だ。


カチャリと扉の音がして、リオンが入ってきた。

「お待たせ、奥様。」

そう言って、悪戯っ子のように笑う。




優しく


優しく


何度もキスを落とされた後、


甘く


甘く


甘やかされて夫婦になった。

読んで頂いてありがとうございました。

拙い文章でしたが、お楽しみ頂けたでしょうか?


余裕が出来たら死ぬ程甘い、番外、結婚式を書きたいと思ってます。


また、お会い出来る日を楽しみにしております。

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