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第8話 赤ちゃんプレイ


第8話投稿できました(泣)


 俺がひっそりとフォルナへの愛を自覚していたその時、こんこんと控えめに部屋の扉がノックされる音が聞こえた。


 俺の予想ではフォルナの知り合いだというバーンという輩だと思われる。いやだなあ、自覚した途端にフォルナとの時間を壊されることがひどく怖い。フォルナと離れるのが怖い。分かってる、分かってるよ。この感情が甘酸っぱい可愛い恋ではなく、奥底に溜まったどろどろとうごめくようなとても可愛いとは言えない感情だということに。これでも精神年齢はアラサー、きゅんきゅんだけなんてしていられない。好きな人にはずっと一緒に居てもらいたいし、束縛だってしたい。うふふ、あはは、なんていえるような恋はきっとできない。


「おい、俺だ。大丈夫か?」

「ああ、もう大丈夫だよう。ありがとう。」


 ならいい、とだけ聞こえたフォルナよりも低い声の主は落ち着いた足音とともに扉の前から移動したことが分かった。気を遣わせているのはすぐにわかる。俺もまさかあんなに自分がびっくりするだなんて思っていなかった。今になって思うとなんであんなに体が震えだしたのか自分でもよく分からない。今まで人見知りではあったものの対人関係を築けないほどひどくはなかったはず。謎だ・・・。


「アル、バーンにはどっか行ってもらうからとりあえずあっちのお部屋でご飯を食べよう?お腹がすいたでしょう?」


 そういえば・・・・。


「・・・・うん。」

「じゃ、おいで。」


 両手を差し出すフォルナに遠慮なく抱きつき、抱っこをしてもらう。好き、好き。自覚した途端気持ちが溢れ出ちゃう。この気持ちがフォルナに触れている体から、見つめる瞳から、高鳴る鼓動から知られてしまわないか一人でどきどきしてしまう。


 だけどきっとこの気持ちをフォルナに伝えるときが来ることはない。なぜなら俺はアルティスであって、男だから。男同士の恋というのは禁忌なこと。こんなことだったら斎藤美子の時に出会いたかったけど、そんなことは絶対に無理。だったら今の状況を享受してフォルナを見守る。それがフォルナに恋した俺にできる精一杯の行為。


 フォルナは俺の持つこの感情に気付いたらなんて思うのかな。気持ち悪いとか思われちゃうのかな。俺を支えてくれるこの腕はもう支えてくれなくなるのかな。フォルナの腕にギュッと掴まる。胸に耳を寄せ、とくんとくんという鼓動を聞く。目をつむってフォルナのにおいを嗅ぐ。薬草のような不思議なにおい。


「どうしたの?気分悪い?」


 片手で頭をポンポンしてくるフォルナをそのままに頭を横にだけ振る。違うよ、という意思表示だ。


「なら良かったあ。」


 フォルナに腕で促され、椅子に座る。いつの間にかいつもご飯を食べているダイニングへと来ていたようだ。


「パンユ、作ってあるよう。食べる?」

「・・・うん。」


 パンユで思い出す。お母さん、どうしているかな。綺麗な金髪をふわふわと揺らしていた美人な、俺にはもったいないお母さん。俺が魔力過多症で体調を崩した時、いつもパンユだった。優しくてほっこりしたあの味。できることならまた食べたいなあ。


「アールー?はい、どうぞ。僕特製パンユです。」


 にっこり笑っているフォルナに悩殺されそうになる。だけど表情には少しも出さないでパンユを受け取り、熱いであろうそれをスプーンで取ってふうふうして口へ運ぶ。


「あひっ(熱っ)」

「おわ、大丈夫!?」


 まだ冷まし切れておらず熱かった。口の中がべろんべろんだよう。生理的に湧き出た涙を拭っていると目の前に置かれていたパンユが移動していることに気付いた。フォルナを見るとパンユを一口分とってふうふうしている。フォルナも食べるのかなとか思っていたら、違った。


「はい、あーん。」

「・・・・」

「ほら、大丈夫だよちゃんと僕が冷ましたんだから。ね?」

「(あーん)」

「ほら、熱くないでしょう?」

「・・・ん。」



 え、これって何プレイ?






お待たせしてしまって申し訳ないです。

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