第7話 自覚した気持ち
たまにふと前世のころを思い出す。辛くて辛くて、何が辛いって言われても全部が辛かった。ただそこに居るだけで、話しかけるだけで、人の視線にさらされ続けるだけで。毎日が嫌で嫌でしょうがなくて、だけど逃げれない毎日に息苦しさを感じていた。まるで陸にあげられた魚のようにそこは私の居場所じゃないことを空気をもって感じていた。気が付いたら異世界にアルティスとして生まれていたため今、斎藤美子がどうなっているのかは分からない。斎藤美子としての最後の記憶は、いつものように仕事から疲れて帰ってきていて寝よう、と思ったところで途切れている。でもその記憶もまるで霞がかかったようにぼんやりとしたものでいまいち覚えていない。
「アル、アル起きて。お願いだ。」
あ、フォルナの声。起きなきゃ。んー、体が重いよ。
目を開けると心配そうな顔をしたフォルナが居た。何だか心の底から安心して首元に手をまわして抱きつく。
「フォルナ・・・。」
「アル、良かったあ。このまま目が覚めないのかと思ったよ。そんなわけないのにねえ。」
フォルナのその言葉に俺はつい思っていることを口走る。
「フォルナと一緒に居られないなら、俺は、ずっと、眠ったままが良かったよ・・・。」
フォルナの体が固まったのが俺が抱きついているせいですぐに分かった。その反応からしてフォルナが困っていることはすぐに分かる。いやだな、フォルナを困らしたくなかったし、俺もこんなこと言うつもりなかった。ただ俺は二人でずっと一緒にいれたら良かったんだ。思い返せば止まらない。あの時フォルナは俺を拾ってくれたけど、そのせいでフォルナは今まで幸せではなかったのかも。精神的には大人でも体が小さくて迷惑かけることも多かったはず。瞼は泣いてパンパンになっていたけど、まだ涙は枯れてはいなかったみたいで、じわりと涙の膜が瞳に張ったのが分かった。
その瞬間フォルナが俺に抱かれるままだったのに勢いよくフォルナから抱きしめ返された。その一瞬の出来事に戸惑っている間フォルナはゆっくりと話し始めた。
「あのね、アル。この前僕の仕事に着いてきただろう?・・・アルのこと責めてないから大丈夫。ちゃんと説明してなかった僕が悪い。でもまだ幼いアルには分からないかもしれないけどこの前見たでしょう?あれ、全部僕がやったんだ。うん、全部。こんな僕を見てアルは嫌いになった?・・・ふふ、嬉しいなあ。僕もアルが大好きだ。ずっと一緒に居たい。でも、これからどんどん僕と居ることで危険が付きまとうことになってしまう。僕はアルに怖い目に遭ってほしくないし、危ないこともさせたくないんだ。とんだ親ばかでしょう?・・・・だからさ、僕の知り合いでさっきアルも見たでしょう?バーンっていうんだけど、あいつの昔からの伝手を頼ってアルを王都の孤児院に入れようとした。」
その言葉に俺は抱きついたままフォルナの背中をグーパンチで殴った。
「いてっ、・・・ごめんね、アル。今思えば、勝手なことだよね。アルも怒って当然だよねえ・・・。ちゃんとアルと話し合って決めることだったよねえ・・・。」
俺の気をなだめるように頭を撫でてくるフォルナの大きな温かい手。俺はフォルナとずっと一緒に居たい。居たいよ。その時、気付いた。
「でも、アルの気持ちが聞けて良かったあ。これからもずっと一緒に居てくれますか?」
「ずっと、ずっとだよ。」
「うん、ずっとね。」
俺はフォルナが好きだ。
ありがとうございました。
のちのちまた斎藤美子がでてきます(笑)




