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オーシャンピープルの復活 後

僕達は用心して、ニニユ岬からやや離れた浜辺から海に入りました。

ギョクコウの背の甲羅に僕達3人、ジゴさん、ヤンベさんと小型ゴーレム1体、オトヒメさんが乗っています。


「万一の時は置いてくゴーレムが探知できる! 最悪、野伏とモストリーテ地方の遺跡で待機してるノーム達と協力するんだよ?」


「よほどの状況になるまでナーンド国と交渉するのは待て! 混乱するからなっ」


「海魔を追い払ってくる!」


「あの・・行ってきまーすっ」


浜に野伏の皆さん、守人の方達、それから数体の探知や連絡用のゴーレムが残っていました。


「るぅううっ!!」


いよいよ海中に潜る段になると、ギョクコウの甲羅は不思議な泡の膜で覆われました。これで深海まで行けちゃいます!


「泳ぐ前に潜ることになるなんてね」


「というか海、暗いなっ」


「これを点けるといい」


ヤンベさんは全員に眼鏡みたいな機械の魔法道具を配りました。


付けると白黒ですが膜の向こうの暗い海の様子が見えました。凄い!



僕達は中程から海魔達よテリトリーになってるはずの海底洞窟は避けて、側面から直接神殿に突入する作戦です。

オーシャンピープル達を復活させれば神殿や各地の魔除けの祠が活性化して、この辺りの海魔達は一掃できるはずでした。


「・・来た!!」


小さな身体で黄金の槍を持っているオトヒメさんが警戒しました。

暗い海の無効に無数のゴマ粒のような物が見えましたが、ギョクコウと同調しているオトヒメさんにははっきり見えるようでした。


「ギョクコウ! 倒して!!」


オトヒメの指示に反応して、ギョクコウの巨体から聖なる水のマナが溢れ、発光現象を引き起こしました。

周囲の海水が荒れ狂い、ゴマ粒のように見えた海魔の大軍を擂り潰して壊滅させてしまいました!


「凄い・・」


「だからあたしが言ったろ? 海じゃ手が付けられないんだよ、ギョクコウは」


その後も、遠目にも形がわかる程の大型の魔物の群れを差し向けられても一方的に引き裂いてギョクコウは進み続けました。


進む過程でギョクコウが引き裂いた海魔や海魔が使役した魔物の大量の残骸の中を突っ切って行くので白黒状態でもとんでもない光景でしたっ。


「海、残酷賞!」


「いや特殊過ぎる状況だって」


そのまま本当に海底にあった神殿近くまで僕達は来たのですが、神殿はギョクコウの甲羅を覆う泡とよく似た半透明の膜で覆われていました。

と、周囲のヘドロの中から海蝎型のギョクコウよりも大きな魔物が這い出てきましたが、ギョクコウが一睨みすると、超水圧でぺしゃんこにされてしまいました。


「身も蓋もないね・・」


「俺よりせっかちだぜっ、へへ!」


僕達を乗せたギョクコウは膜の中へと入ってゆきました。



あちこち肉のヒダのような物が取り付いた状態の神殿から無数の海魔族達が浮遊して飛び出してきました。

距離が近いので今度ははっきり姿がわかります。水棲生物の特徴を持つ人型の生き物ですが、歪で、邪悪な気配でした。


「るぅううおおーーーっっっ!!!!」


激怒したギョクコウは数え切れない水の槍を発生させて撃ち込み、全ての海魔族を粉砕し、さらに神殿にへばりついた邪悪な肉のヒダもこそぎ落とし始めましたっ。


「ギョクコウ! ダメだっ、神殿が壊れちゃう! ちょっと待って!!」


オトヒメさんが慌てて止めて、何とかギョクコウの暴走状態は収まりました。


ギョクコウは入口付近で、オトヒメさんと共に待機することになりました。


「さっきの攻撃で内部のほとんどの海魔や眷属は滅びたみたいだけど、まだ深部から、海魔の反応をギョクコウが探知してる。増援はここで食い止めるけど、ロッカ達も気を付けて!」


「道中の残兵はゴーレム達に露払いさせよう」


ヤンベさんは機械のような杖を振るって、小さな転送門を作ってそこから小型の武装したゴーレム達を追加で十数体召喚しました。


「今、許された力で造り呼び出せる最大戦力だ。それなりのもんだよ?」


機械の眼鏡を外した僕達は武装ゴーレム達に護られて、マナ灯ではなく負の力の陰火(いんか)の燈台が一定間隔で灯る神殿内部へと突入しました。


「ヤンベ! 中は迷路になってるようだが、どうだっていい! 真っ直ぐ行こうぜっ?」


「ジゴ、賛成だね。オーシャンピープルどもが自分で修理したらいい」


武装ゴーレム達は敵と戦う前に砲撃で壁を撃ち抜きまくりっ、僕達は直線で深部を目指しました。


今回はせっかちな人が多いから進行が何だか速いです!


途中、生き残りの海魔や使役された魔物にも襲われましたが、僕達は武装ゴーレム達を消耗しながら深部まで一気にたどり着きました。


しかし、そこは・・


「水没してるね」


「泳げるらしいぞ?」


「嫌だっ」


広大な広間の中心奥の祭壇の間への入口が完全にたぶん海水で水没していました。中には海魔や使役された魔物がうようよいましたが、様子を伺って出てこようとしません。


「水の中の方が有利と見てるな。おい、マイサの電撃魔法で無理か?」


「う~ん、水の量が多過ぎて、無理!」


「祭壇の間まではヤツらは入れない。空気も・・あるね。ゴーレムに護衛させて一気に行くしかないよ?」


ゴーレムに計測させて言うヤンベさん。グズグズしてると神殿内から増援が来られるて挟み撃ちにされてしまいそうでもありました。


僕達は意を決して、残り7体の武装ゴーレムに護られながら水中に入りました。

一斉に海魔と使役された魔物達が襲ってきますっ。

ゴーレム達が応戦する中、最初から連れてる補助用のゴーレムの推進力で潜ってるヤンベさん以外の僕達は、必死で泳いで海水の中の入口を目指しましが、

水中ではやはり海魔達は強く、ゴーレム達は弱体化されます。徐々に囲いを狭められてゆく。


半分程潜った辺りで進み難くなってきて、仕方無く身動きならないなりに皆で応戦を試みだすと、ヤンベさんの補助用ゴーレムが身体中から細い縄状の腕を出してっ、簡単な造りの腕で僕達を掴み最大推進力で進み出しました!


それでも後少しという所で、背後の入口を護る聖なる光に背を焼かれるのにも構わず奇妙な僧服を着た海魔族が立ちはだかってきます。

水中でも何か呪文を唱える僧服。マズいですけど、


僕も準備していました。『風よ!』無詠唱(むえいしょう)になりますが、心の中で強く唱え、圧縮した風で構えていたスタンナイフを撃って、呪文を唱え終えようとしていた僧服の海魔の口に突き刺し、電撃で破裂させてやりました。


僕達は絶命した僧服の海魔を越えて、浄めの光の入口へと入ってゆくのでした。



そこはノームの神殿の祭壇の間同様、時間が止まったように何の破損もない清浄な空間。


「ぷはぁっ! 死ぬかと思ったっ」


「初、海水浴賞・・」


「お前、ゴーレムの腕でいけるなら最初からやれよっ」


「腕の強度と推進力に難があった。ギリギリさ」


「ふぅ~・・復活させよう。まだ入口ではオトヒメとギョクコウがいる」


僕はズブ濡れのまま、起き上がったて祭壇に向かいました。


やはり球形のオーブの中に、今度は5人の古風な服装のオーシャンピープル達が眠っていました。


ジェミニクレストを掲げます。


「目覚めて! オーシャンピープル!!」


閃光と共にオーブは砕け、目覚めたオーシャンピープル5名はゆっくりと降下してきました。


「おお・・」


「使徒か?」


「海魔とギョクコウの気配がする?」


「矛を納めし、オーシャンピープルの最後の王達よ」


例によってレイミーアズス神が降臨したマイサが語り掛けました。

すぐに察して、横座りするような格好で平伏するオーシャンピープル達。


「神の名において、貴方達から海の真理の多くと、海の聖獣達を使役する権利を剥奪します。各地で眠る同胞5万余りと共に、邪神とその眷属達の脅威の増す海の世界に平穏をもたらし、罪を償ってゆきなさい」


「レイミーアズス神様」


「仰せのままに・・」


どうやらオーシャンピープル達も大人しく対応してくれるようでした。


程無く、神殿と世界中の海の祠の魔除けが活性化して、海魔達は退けられてゆきました。



・・・翌日、僕達はニニユ岬に一番近い、かなり遠くに海が見えるくらいの所の遺跡にあった転送門に来ていました。


ヤンベさん、ジゴさんと御付きの2人の野伏さん達、そしてオトヒメさんと随分小さな、仔犬くらいの大きさのギョクコウが見送りに来てくれていました。


「次はドワーフかい、うんざりするねっ」


そう、次はドワーフ族の復活を目指します!


「順番が大事何です。今回もヤンベさんが居なかったら大変だったでしょう?」


「ジゴが起きたら手伝えとうるさく言うから引っ張り出されただけさ」


「え~っ」


そんな経緯で!


「今はまだ寝ぼけてる感じもあるが、オーシャンピープル達の方は任せろ。ギョクコウも付いてるっ。分体(ぶんたい)も出せるようになったしな」


「るぅっ」


頬擦りする小さなギョクコウ。そう本体は浄められた神殿の近くで眠っているそうです。


「頼みます、オトヒメさん」


「寝ぼけてるっていうか、ノーム達よりむしろ物分かりよかったよな?」


「うん、あっさりしてた」


「連中の場合、過剰な信仰とかは無いようだし穏健派ならあんなもん何だろ? どっちにしろ話が早いのはいいことだ! ハハハッ」


とにかく、落着ですね。


「じゃあ僕らは行きます!」


起動する転送門っ。次の目的地はドワーフ神殿のある極北の地です。よ~し、がんばろっ。

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