表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

八話:彼の知らない裏で

「一年で本当に神様を返せるかですか? それは分かりません。推測でしたので。しかし、あの場で言っておかなければ、神様の不信感は拭えなかったでしょう。最悪、国が滅びても行かないと言いかねない」

 白金で装飾された談話室で、王は椅子に座り自身のひげをさすっていた。その少々強い眼力はファリスに向けられず、恐らくはまだ見ぬ敵、未来を射抜こうとしてるのだろう。頬を晒して黙っていた。

 ここにファリスが居るのは予定通りの事で、神に関する話し合いがこれからなされるのだ。

「予定外の事が有ったのです。儀式場の時間が止まってしまいました。この事は参加者と神様、私しか知りません」

 王の硬質こうしつな手が止まった。数多くの死を見てきた目が、ファリスと絡まる。気圧され、気まずい雰囲気。止まった儀式場は、これからも増えるであろう予定外なのだ。そしてそれらは虫が沸く様に、ファリスたちを悩ませるに違いない。

「少し軽率だった気もするが、まあ良い。それで、どの神か分かったか?」

 王はまた視線を外し、あらぬ方向を向いた。幾分いくぶん気持ちが楽になる。見られるのは好きではない。

「今、調べさせている所です。これで分かれば幸運と言う所なのですが」

 言い終えると、扉が叩かれる音が聞こえた。

「私です。宰相さいしょう様もこちらに」

 魔術師長と宰相がやって来た様だ。「どうぞ」と入室を許可する。開かれた先から、二人の男が姿を現した。

「魔法を調べた結果をお持ちしました」

 ファリスと歳が変わらない魔術師長は、木の枝に似た腕で後ろ髪を掻き、ボソボソと話し出した。

「火、水、風、土は問題なく発動しました。光と闇は不明です」

 つまり、何も分からないと言うことだ。

 神様は六つ。火の嗜虐師しぎゃくし、水の癒しの海、地の聖騎士、風の自由なる羽、光の偏在者へんざいしゃ、闇の殺戮姫さつりくき。この六つ。でしたら貴方様は、この中のどなたなのでしょうね?

言った言葉を思い出す。あれは神に言うと同時に、控えていた参加者にも言ったのだ。魔法は神の力が無ければ発動できない。ならば、神が何も分からなければどうなるか。魔法は使えるのか。それを魔術師長に確かめてもらったと言う訳だ。しかし、結局は何も分からない。

 もしかすると、発動は出来るが効果が弱まるのかも知れない。だがそんな報告は無かった。光と闇のどちらかなのだろうか。それとも、この推測が間違っているのだろうか。光は魔法を使う時に失敗に近い形で動く。闇は何故か発動しない。発動したとは聞かない。

 正解が絞り込めない、情報が足らなかった。

「まあ、記憶が無ければ無いで、どうにでもなるでしょう?」

 腹の出た宰相が豪快に笑う。危機が迫っている状況にも関わらず、胆力たんりょくの有る男だった。

「セイニェには例の人選じんせんで?」

 魔術師長が疲れた様な、やる気の無い様な声を出す。異様に細い手足を持つ青年は、いつもこんな声だった。

「いや、一人追加する」

「それは?」

 魔術師長の言葉に、王が答えを出す事は無かった。代わりにファリスを見て。

「セイニェへの通行証を後で受け取れ。向こうで問題を起こしても何とかしてやる。ただし、神は守れ」

 ファリスは頷いた。

「これが終わったら、約束通り名前を返して頂けるのですね?」

 王は笑みも無く「もちろんだ」とはっきり言った。



 ファリスは部屋を出て、神の場所へ向かった。今頃カルチャが退屈させないよう、話し相手にでもなっているはずだった。ある意味危険な役目である。もし神が危険な存在ならば、機嫌が悪ければ、カルチャはもう死んでいるだろうからだ。そして、助けて欲しいこちらはそれをとがめられない。

 廊下の先で、扉の前に立つゴーンが見えた。向こうも気づいた様で、早めに礼をとる。これから一緒に行く仲なので、親しみを混めて挨拶、扉を開けてもらった。

 落ち着いた色調の室内、さりげなく自己主張する絵や壺、一貫して安心を命題とした部屋には、誰も居なかった。外面をつくろって後ろに声をかける。

「神様とカルチェは?」

「庭へ散歩に行かれました」

 ゴーンの顔には、何か問題でも? と書かれていた。

 頭が痛くなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ