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第38話「ハイブリッドビーチと暴徒鎮圧」

今日も今日とて就寝時間。

みんなドアを開けて寝てくれるらしい。

これはつまり、何も考えずに寝れば

誰かの夢にランダムで入ることになるってことだ。


今晩は特に約束もしていないし、

無理に誰かを思い浮かべる必要はない。

というか、みんな水着姿が印象的だったから

みんなを思い浮かべてしまう。

ここは流れに身を任せるとしよう——



夢に侵入。

目の前には異様な空間が広がっていた。

ビーチなのだが、左半分には日本人しかおらず、

右半分には外国人しかいない。

砂浜の色も海の色も、左半分と右半分で

くっきりと分かれている。

2つのビーチを切って貼ったというような状況だ。


なんだこれは…誰の夢だ?

海外っぽいビーチが含まれているということは

イヴの夢だろうか。とりあえず探してみよう。


なんとなく右半分に行くのは気が引けたので、

日本のものだと思われる左半分のビーチへ。



砂浜を適当に歩いていると、栞を見つけた。

水着ではなく、制服姿だ。

じゃあこれは栞の夢なんだろうか。

いや待てよ?イヴが見た夢の栞という可能性がある。

栞がいたというだけでは栞の夢とは言い切れない。

起きてから、この夢の記憶と経験を持っているか

確認するまで、わからない。

まあいいや。とりあえず声を掛けてみよう。


「おーい、栞」

「あ、兄貴!今日は私の夢に入ってきたか」

「やっぱそうなのか?」

「えー?違うの?」


特に不審な点はないが、やはり栞本人なのか

イヴの夢で生み出された栞なのか判断がつかない。

麗奈の夢の中でゲームソフトを買った時と同じで、

夢の主が知らないことであっても勝手に補完されるから、

判別するのはとても難しいのだ。


「これが栞の夢だとして、

こんな奇妙な夢を見ることあるか?」

「水着買いに行ったし、海の夢は全然見ると思うんだよね…

でも、正直右半分のビーチは全く心当たりない」

「うーん。勇気出して、海外っぽい

右半分のビーチにも行ってみるか」


俺は栞を引き連れて、右半分のビーチへと移動した。

まわりの外国人から、物珍しいものを見る目で見られる。

そもそも日本人だし、俺も栞もなぜか制服姿なので、

目立って仕方ないのだ。


が、そんな俺たちに負けず劣らず目立つ存在を発見した。


制服姿のイヴだ。


ブロンドの髪が、なんとも海辺に映えている。

これはイヴ本人か?それとも栞が見た夢の中のイヴか?

栞の時と同じで、やはり判別できない。


「おーい、イヴ」

「アオイ!今晩は私の夢にいらしたのですね」

「それが、わからないんだ。

見ての通り栞もいるから、どっちの夢なのやら」


栞とイヴは顔を見合わせた。

ちょっとかわいい。


「それに、俺たち3人が制服姿なのも不思議だ。

水着買いに行ったんだし、

水着着てる夢を見そうなものだけど」

「見たかったんだ?水着?」


栞が悪戯に笑う。


「そういうことじゃなくて」

「見たくなかったの?水着?」

「イヴのは見たかったかも」

「殺しま〜す」


安易に人の命を奪うな。


「アオイは私の水着が見たいんですか…?」

「大抵の男子は見たいんじゃないか?」

「だったら…見せてあげますよ」


突然制服を脱ぎ始めるイヴ。


「何してんだイヴ!?」

「下、水着なんですよ」


イヴは制服を脱ぎ捨て、ナインモールで見た

水着姿へと変貌を遂げた。下に水着を着ていても、

制服を脱ぐという行為は少しえっちだな…


「あれ!?私も下に水着着てるかも」


栞も制服を脱ぎ捨てた。

やはりナインモールで見た水着姿に。

お前胸にそんなフリル付いてんのに

気付かないことあるか…?

どおりで栞のくせに胸があるなと思ったんだ。


「兄貴はなんでそんなに死にたがりなの?」


栞に心を読まれることを忘れていた。


「あれ!?じゃあ俺も水着着てるんじゃないか?」


どうせ夢だし、思い切って制服を脱ぎ捨ててみたが、

普通にトランクスだった。


「は?」

「は?」

「アオイ…」


寄せては返す波の音が、やたらと大きく感じた。



////



俺だけ制服を着直して、仕切り直し。


「栞の夢だかイヴの夢だかわからないが、

せっかくだし遊ぼう。そうだイヴ、

スイカ割りってやったことあるか?」

「ありません。ですがルールは知っています」

「せっかく日本のビーチもあるし、やろう」


今度は3人で左半分のビーチへと移動し、スイカを探す。

氷水で冷やされたスイカを見かけたので、

そこらへんに落ちていた適当な木の棒とともに拝借。

ごめん、夢の中でスイカ割りしようとしてた知らない人。


「本当は目隠しをするんだけど…

ちょうど良い布が見当たらないんだ。

目を瞑ってプレイしてくれ」

「はい」


イヴに目を閉じさせつつ棒を渡し、

適当な場所にスイカを設置。


「栞、イヴに指示出してみてくれ」

「イヴ〜!とりあえず直進して」

「わかった」


イヴが凄いスピードで爆走していく。足速すぎ。


「ストップストップ!もう十分。

50cmくらい右!反時計回りに30°回って」


栞の指示も的確すぎるが、その数値分ピッタリに

動いているイヴも異常だ。

ボディガードってこんな能力もいるの?


「やれイヴ!そのまま正面のスイカを割って!」

「うん!」



ドゴシャアッ。



凄まじい怪力で殴られたスイカは跡形もなく飛び散り、

そこらへんにいたヤンキー3人組に

ドバドバ降りかかった。あっヤバい。


「栞はここで待ってろ」


俺は栞をその場に残し、急いでイヴに駆け寄った。

イヴはヤンキーに謝罪していた。


「本当に申し訳ありませんでした」

「可愛いからって調子乗ってよー?

ちょっと俺たちと遊んでもらおうか」


ヤンキーがイヴの手を引く。

ああ、そんな自殺行為を…


「すみません。その子、俺の家族なんです。

お詫びしますので、勘弁してもらえませんか」

「アオイ…」


守らないと(ヤンキーを)。


「アア!?男なら一発くらい殴ってもいいよなあ?

代わりに責任取れや」

「はい、どうぞ」


別に一発殴られるくらい構わない。

俺の監督不行き届きみたいなところあるし。

夢の中でも痛みは感じるけど。



ヤンキーの1人が俺に殴りかかってきた、その瞬間。


「私は殴っていただいても構わなかったのですが…

それだけは、許容できません」


イヴは手に持った棒で、

ヤンキー3人をボコボコにした。


目の前に転がる哀れなヤンキーたち。

いきなりスイカを浴びせられて、

あげく木の棒で気絶させられている。草…


「暴徒鎮圧用の棒があって助かりました」

「スイカ割り用だよ」


そのまま、夢が終わっていく。

なんだこの夢。

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