表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第3章 ローエンディア王国と士官学校
64/270

第3章 第17話 東迷宮の合同遠征(7)

 五十五階層の下り階段部屋


「はい、という訳で無事攻略済み階層の制覇が終わりました。代表のオフィーリアさん、この後の進行は《緋の戦乙女(ヴァルキュリア)》の皆さまがメインの戦いとなっていくのですが、何か一言お願いします」


 唐突なフリに尻尾を丸めて慌てるオフィーリア。無茶振り系アドリブ耐性は低いようだ。

「あ、えーと?皆怪我しないように頑張りましょう?」

 オフィーリアが困ってそうな気配を感じたのか、カイエが手を挙げて発言を求めた。


「はい、五十六階層以降は我々にとって未知の階層になります。地図を作りながらの進行になりますので、勝手に突っ走って罠に掛かったりしないようにお願いします。良いですか、マッパーの言うことを聞いて大人しくして下さい」 


「マッパーが複数いるなど贅沢な話だ」


 ここからはエイルとマツリは非戦闘員の護衛を担当のため、索敵警戒はしつつも基本はオフィーリア達戦闘組の応援である。カナリエとレーヴィアは、戦闘担当の組に入っているようだった。 


 この探索が終わればその時点までの地図を写させて貰えるため、是非頑張って進んで欲しい。

五十六階層は割と早い段階で下り階段が見付かったが、五十七階層は時間が掛かった。ようやく下り階段を見付けた段階で食事休憩となった。午後からの進行もマップ作製との同時進行のため、なかなか進まず、この日は五十八階層の下り階段部屋で仮眠を取ることになった。

 エイルとマツリは交代で休憩し、気配感知を強めて不意打ちを貰わないように警戒を怠らない。近くまで魔物が来たこともあったが、他の見張りにその場を任せてさっと処分して戻った。


 翌朝、再進軍で六十階層のボス部屋までなんとか辿り着いた。ボス戦も《緋の戦乙女(ヴァルキュリア)》の担当だが、危なそうなら手を貸す事で了承を貰ったため、何時でも飛び出せるように備えていた。

 ボス部屋に現れたのはストレイガル程の大きさの馬型で、全身が鱗で覆われており、鬣が燃えるように逆立ち揺らめいている。側頭からは黄色く艶のある角が前方に張り出しており、呼気に熱を感じさせる空気の歪みが見えた。東方諸島群に伝わる麒麟の姿絵に似ている。


 軍隊のように統制の取れた動きで立ち回る《緋の戦乙女(ヴァルキュリア)》は、楯持ち達が壁役となり突進を食い止め踏ん張り、後衛が魔法による砲撃や長槍で楯役の後ろから攻撃を加えている。

 やがて焦れたのか馬型の魔物が後ろ足で立ち上がり嘶きを上げる。前脚の着地と同時に頭を大きく振り回し、雷の暴威を振りまいた。角が帯電してバチバチを音を発している。

 電撃の直撃を受けた楯役が身体を痙攣させて倒れ込み、前線に穴が出来てしまった。欠けた壁に向かい炎のブレスを噴射し、後衛を壊滅させようとしてくるが、レーヴィアが即座に水属性の壁を噴出させてそれを堰き止めた。麻痺した前衛には金属性の針を飛ばし、身体に回った電撃の麻痺を針が吸い上げ、克服させる。


「(咄嗟の判断で五行相克をしてみせたか!)」


 レーヴィアの判断の早さと的確な処置に舌を巻く。


 麒麟擬きが再び後ろ足立ちになり角をバチバチと帯電させると、中衛に下がっていたカナリエが戦鎚ウォーハンマーに獲物を持ち替えて進み出る。麒麟擬きが前脚を振り下ろす勢いで頭を下へ振り抜くのに合わせ、カナリエが下からの全力の振り上げで迎撃してみせた。角に集まっていた電撃は霧散し、戦鎚ウォーハンマーのカウンターを顎先に喰らった麒麟擬きは、脚に来てふらつく。そこを攻め時と判断した全員が一気呵成に攻め立て、立て直しの間を与えず、オフィーリアの大剣の一撃が決め手となって見事に倒し切ってみせた。


 エイルとマツリは拍手して健闘を称えた。


「良い勝負だったな。レーヴィアの判断の速さも、カナリエの迎撃も見事だった」


 エイルとマツリは、後輩達の成長が決して錬気に限った事ではなく、地力そのものがしっかりと向上している事を思い知った。


 麒麟擬きは比較的小さいため、死骸の全体を持ち替える事にしたようだ。縄で結び複数人で引き摺りながら下り階段の部屋に向かっていった。

 

◆◆◆◆


 下り階段部屋に着くと、戦利品の整理が行われた。六十階層に辿り着くまでに拾得物はかなり厳選されていたのだが、ここにきて麒麟擬きを丸々持って帰りたいとなるとさすがに重量オーバーだった。


「今回の遠征はここまでですかね。五十五階層から六十階層までのルートも開拓できたし、このボスの高値で売れる場所が判れば、次に来た時に持ち替える内容を検討することもできるでしょう」

 と、オフィーリアが帰還の転移陣で戻ることを宣言した。


 帰還の転移陣から戻るとギルドに直行し、依頼カウンターに査定を依頼して解体所に運び込まれた。

 麒麟擬きの価値が判ったら後日教えてくれることになっていた。また、彼女達のマップの複製作りも後日である。ダンジョン帰りはやはり疲労が残るものだ。まずは良い食事と柔らかいベッドでの休息が必要だった。


「では、うちらはこれで先に帰らせてもらいますね」


 身体が兎に角休息を求めているようなので、≪黒絹≫二人は先に宿へと帰って行った。


評価、ブックマーク登録、いいね などの応援をお願いします。

モチベーションや継続力に直結しますので、何卒よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ