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【完結】方舟の子 ~神代の遺産は今世を謳歌する~  作者: 篠見 雨
第3章 ローエンディア王国と士官学校
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第3章 第16話 東迷宮の合同遠征(6)

翌朝。皆が起き出すと食事が始まり、賑やかになった。一日潜って疲れた身体も一晩休めばしっかり回復できたようだ。女性だらけとはいえ、流石は探索者という事だろう。


 食後、五十五階層まではまた《黒絹》が対応すると宣言した。五十六階層からは本来の合同攻略になる予定だ。



四十六階層から五十階層。


 四十六階層に甲冑型ゴーレム、四十七から五十階層まで、半人型系の魔物が出てきた。

アラクネ、ラミア、ハーピィなどだ。

 昨夜ので調子の上ったエイルが、機嫌よく敵を沈めていく。



五十階層ボス戦。鬼蜘蛛。

 形状としてはアラクネと同じ半人身の大蜘蛛だが人の半身は大袖鎧を着込んだ東方諸島群の様式の甲冑姿で、【】の一種だとされている。


 大陸で鬼がつくのは頭部に角状の突起がある人型のモンスターを指していて、東方諸島群におけるは怒りや殺意など負の感情に囚われた荒魂の一種を指す。

 となった荒魂は正に別格の存在であった。


 現れた鬼蜘蛛は人の上半身に大袖鎧を着込み、下半身にも装甲を纏い、その手には巨大な薙刀を持っている。


 多脚で音もなく間合いを詰めて来るのに対し、エイルとマツリが飛び出していく。

鬼蜘蛛は薙刀を横薙ぎに振り回し、二人纏めて弾き飛ばそうとしてくる。それをエイルが大楯を出して軌道を逸らし、マツリは全力で大戦斧グレートアクスを振りその多脚を落とそうとする。

 鬼蜘蛛は狙われた脚を一歩下げる事で回避したが、マツリは更に回転を上げて踏み込み、左脚を二本、叩き斬った。

バランスを崩しながらマツリに薙刀を突き込もうとするが、それをエイルが許さない。大楯で軌道をずらして地面を抉らせ、薙刀の背に足をかけて踏み締める。鬼蜘蛛が踏ん張りの利かなくなった左側の足に苦戦しつつも、薙刀を強引に振りかぶってエイルを浮かせる。エイルは薙刀を蹴り首元へ飛び掛かり、空中で一回転しつつ打刀を右薙ぎに斬り払った。振った刃は音もなく首を通り過ぎ、切断された頸動脈からの噴出する血液で首がズレ、地に転がった。


 咄嗟の一撃だったが、狙い通りの繊細な錬気の纏いで仕留めた事で、更にご機嫌になっていく。

「ラムザ大分調子良さそうだね。何か掴んだ?」

 マツリが聞いてくるのに対し、首肯で返す。

「後で教えるよ。もうちょい制御を慣らしていけばもっと伸びるかもしれん」



五十一階層から五十五階層。


 竜種擬きの大型の甲殻に覆われたトカゲが出てきた。

 二足歩行の強靭な後ろ脚と強く大きな顎を持つタイプから、四つ足で素早く動き、大きく張り出した前脚で獲物を捉えて捕食しようとするような動きをするタイプまで、様々だった。


 しかし上がり調子でご機嫌なエイルが、一刀一殺の鬼神の如き圧倒的な振る舞いをみせ、硬い甲殻ごと首を落としていく。



五十五階層ボス戦。

 ここまでに出てきた竜種擬きではなく、正しく竜種が現れた。翼腕が退化し地面を駆ける方が得意な地竜の一種だ。


「ハハハハハハッ!これは丁度良いッ!試し斬りじゃあッ!」


 ハイになったエイルが一人で突っ走って行く。マツリが慌てて追走し、フォローをするために大身槍の長槍を構えた。


 地竜は剛腕を繰り出してエイルを襲うが、更なる加速で懐に飛び込み、剛腕が掠めるに任せて突き進む。


「(完全にスイッチ入っちゃってる!)」


 マツリが苦々しく思いつつ大身槍の長槍で牽制をかけ、地竜の意識を散らす。地竜が目元を掠めてきたマツリに意識を持って行かれた瞬間、エイルの抜き身の大太刀が振るわれた。斬り落しの一刀目から金属同士が擦れるような高い擦過音が響き、更に一歩進みつつの切上げで刃を振り上げると、更に斬り落としに渾身の力を込めて振るう。


地竜が苦悶の声を上げる。

「Gyaaa!GAAAA!」


 エイルは止まらない。僅かに届かなかった筈の向こう側まで、混合錬気の刃が伸ばされその首を通り抜けて止まる。



 竜の首が重たい音をたてて沈み込んで転がり、全身を痙攣させて動きを止めた。

 ”竜頭落とし”が成った瞬間であった。


 エイルは残心を解き、呼吸を整えてから大太刀を一振りして血脂を飛ばすと、異空間収納に仕舞い込むと、【清浄】魔法で全身の返り血を飛ばし、スッキリしたところで漸くマツリ達の方に振り返り、満足そうな笑顔をみせた。


◆◆◆◆


 スイッチが入ってハイになったラムザが、竜の懐に潜り込む。

 遠目から固唾を飲んで見守った者達は、ラムザなら大丈夫、やってくれる筈だ。そう思いつつも、極度の緊張を訴えかけるように激しい動悸に見舞われる。

 懐に入ってからの勝負は速かった。たった三振りで竜の首を落としてみせた。


 このボス部屋までの道中でその片鱗はみせていたが、とうとう成ったという感慨が浮かぶ。返り血に塗れた姿のラムザは、【清浄】の魔法で汚れを飛ばしスッキリさせて機嫌良く満足そうな笑顔で戻って来る。その姿に余韻と共に魅入っていた。


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