第2章 第7話 ダンジョンデビューしよう!
リエルダ滞在 三日目。
朝食を済ませた四人は探索者ギルドに向かった。総合カウンターのサブマスターが暇そうにしていたので、彼に鉱山迷宮について訊ねてみた。
「リエルダから南西の方角にある鉱山で、坑道がダンジョンにつながってしまった所があります。そこから入れるダンジョンが、鉱山迷宮と呼ばれています。鉱脈がダンジョンに変質したのではと言われていて、ダンジョン内には鉱物を含んだ硬い魔物が多く出現します」
四人は頷き合い、ダンジョンにチャレンジしてみる方向で話を進める。
「なるほど。そこに行ってみたいのですが、鉱山までの道はすぐに分かりますか?」
道筋についても、サブマスターは淀みなく答えてくれる。
「南門から出て道なりに南下すると、徒歩で半日程のところに西への分岐点に石碑があります。そこを西へ進めば鉱山に着きますが、南門で貸し馬車を雇って行けば確実です」
「ありがとうございます。行ってみますね」
毎度丁寧な接客をしてくれるサブマスターにお礼を言い、ギルドを後にした。
探索者ギルドは西門の傍にあるので、南門までの移動中に屋台で食料や消耗品を買い込みながら歩いて行く。
「南門からは貸し馬車にお願いするけど、いいよね?代金は俺が払うから」
エイルの確認に全員が頷いた。
南門前の広場には貸し馬車が並んでいたので、四人で座れる箱馬車タイプを選んで、鉱山迷宮までの仕事を依頼した。
馬車が出発すると、エイルは空間安定化を掛けて早々に仮眠を取り出した。
貸し馬車での移動は特に問題もなく、昼頃に鉱山迷宮に到着した。
カナリエが貸し馬車屋から仕入れた情報によると、入口のあたりに有料でダンジョンまで案内するガイドがいるらしく、はじめてならガイドに頼むのが良いらしい。
エイル達も素直にガイドを雇い、ダンジョンの入口まで案内をしてもらった。
ダンジョンの入口は崩落防止に補強工事がされていて分かりやすかったが、辿り着くまでの分岐を考えると、ガイドを雇って正解だったと皆が感じていた。
ダンジョン内に踏み込むと、空気感が変わるのが分かった。これはダンジョン内の魔素が濃いために起こる現象なのだが、熟練者はこの空気感の違いでダンジョンが溜め込んでいる魔素の段階、つまり難易度が凡そで分かる。
エイルは踏み込んだ際の空気感の違いから、ダンジョン自体は「若い」と感じたが、入口付近の魔素の濃度だけではダンジョン全体の難易度は図れないため、ダンジョン初心者の三人が油断しないよう、敢えて言葉にせずサポートに回るつもりでいた。
「先にいっておく。女子組三人はダンジョン初心者だから、今日は三人が中心になって進めてくれ。折角だから初めての攻略を楽しんで、色々覚えて帰ろう。危なそうなところは俺がサポートする」
熟練者の引率で初めてのダンジョン攻略を行うと、危ないところの回避や何故そうするのか?といった、細かい部分を覚えずにさらっと終わってしまいがちだ。そういう経験からはじめてしまうと、大抵はダンジョンに対して油断を覚えてしまう。それは新人たちの教育に悪いという判断から、三人には自分達なりの攻略を頑張って貰いたいという思いがあった。
迷宮一階層目。
フォーメーションはマツリが先頭で斥候気味に動き、カナリエとレーヴィアが続く。最後尾はエイルが担当する。そのため、エイルは弓を手に後ろからついて行く。
暫くは一本道で魔物もいなかったが、T字路に差し掛かったところでマツリが止まった。
「生体感知に反応があった。右に曲がって少し進むと魔物が居る」
マツリの索敵にカナリエは感心する。
「マツリは斥候も熟せるのね。さすが黄金級……」
黄金級だから索敵ができる訳ではないが、そこには触れずに任せる。エイルは今回のダンジョン攻略では、できるだけ空気になるつもりだった。
マツリ達はT字路を右に曲がり、想定通り最初の魔物を発見した。
「陸亀……?」
見つけた魔物は陸亀だな。という形状をしていて、甲羅にゴツゴツと鉱物が張り付いているような姿をしていた。それがマツリ達に後をとらせたまま、のしのしとゆっくり歩いている。
無害そうなその姿に毒気が抜かれる思いをするが、マツリは大身槍を取り出して構えると後ろから近付いていく。間合いに入っても陸亀の魔物は一向に反応しないため、カナリエと軽く打ち合わせをする。
「とりあえず私が左足狙うから、カナリエは右足狙ってみて?」
タイミングを併せて同時に後ろ足へ攻撃を掛けてみる。両後ろ足にダメージを入れる事に成功したが、直後に頭と四足を甲羅に仕舞い込むように引っ込んでしまった。
「えー……。なんか無抵抗すぎて逆にやり辛い……」
マツリがエイルに助けを求めるように振りむいてきたが、無情にも首を横に振って返す。
肩を落としたマツリは陸亀の前面に回り込み、引っ込んだ頭に大身槍を突き込んでグリグリと捩じり押し込んだ。大身槍を抜いてみると、そのまま異空間収納に入ったことから、今ので倒せたようだ。
「……思ってたのと違う」
マツリのぼやきは女子三人の内心を表していた。
その後、分岐の度に右側に曲がりつつ進んでいく。出会った陸亀は全てマツリが刺殺したが、マツリの眼も同じくらい死んでいた。しばらく進むと行き止まりになったので、元の道を戻っていく。分岐を最初と逆の方に進んでいくと、新しい生体反応が見付かった。
「次のは陸亀じゃなさそう。もうすぐ見えてくると思う」
「了解」
カナリエが頷いてマツリの後ろに付いていく。見えてきたのは、人間程の大きさがありそうなトカゲだった。亀と同じく、背にゴツゴツと鉱物らしき物が張り付いている。トカゲはこちらに気付いたのか動きを止め、斜め前方に顔を向けたまま停止している。
まさかまた無抵抗なのか……?と近付いていくと、素早い動きで嚙みつきに来た。
「!」
マツリは即座に横に回り込みながら脇腹に大身槍を刺し込んだ。刺されたトカゲは暴れたものの、カナリエが逆サイドから首筋に長剣を突き立てたところで痙攣し、収納に消えていった。
無抵抗の亀より襲ってくる敵の方が圧倒的に気楽だった。
その後、何度かトカゲと亀に出会いつつ探索を進めていくと、下り階段が見付かった。
「おめでとう、一階層クリアだよ。二階層目も頑張ってね」
エイルが三人に労いの声をかけた。
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