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ある熟年夫婦の場合  作者: つよきち
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夫婦って何だろう

日常と言うのは簡単にひっくり返ってしまうものだ。

さっきまで、自分が信じていた日常が、実は違ったとしたら、何を信じればいいのだろうか。

誠一は祥子が祥子の言葉で話せるまで待った。

そして祥子はついに言葉を発した。


誠一が想像していたよりも、誠一も祥子も感情的にはならなかった。

きっと祥子ではない他の誰かが発した言葉であれば、それは感情的なものとなっただろう。

でももう祥子の言葉すらも疑うようになったら、誠一は何も信じられないということを本能的に知っていた。

だから誠一ができることと言えば、祥子が話してくれる言葉をただ信じることだった。

淡々と、祥子は謝罪の意味を話した。


誠一は祥子の言葉を一言も漏らさずに聞くつもりだった。

懸命に話してくれる祥子から目を逸らさずに、ただ集中した。

でも誠一にとってそれは難しいことだった。

誠一の意識は知らずに別のことを考えていた。

それは逃避と言うものだったのかもしれない。

自分がこれ以上もなく信じているものがそうじゃなくなってしまうというのに、誠一は意外と人間は強くできているものだと思った。

そして誠一は達観していた。

というよりも、それは悟っているという言葉の方が正しかったかもしれない。

誠一は誰よりも愛おしいはずだった、その妻に集中しなければならなかった。


夫婦って、何なんだろう。

それが、恋人の時以上の感情を持ち続けていたとして、その二人は一緒にいるべきなのだろうか。

誠一は辛かった。

どんなに相手のことを思ったとしても、その相手のことを知ることができるとは限らない。

その人を想えば想うほど、もしかしたら自分に都合がいいようにその人のことを信じたいと思ってしまうものかもしれない。

当然、想われる相手だって、無神経にただ一方的に愛されることができるとは限らない。

そう考えると相手の期待に応えようと、そうではない自分を偽るというのは、仕方がないことなのかもしれない。

仕方がないというよりも、むしろそれはそうさせてしまう原因に問題があるんじゃないか。

だから誠一と祥子の場合、それは誠一の方が問題なのだ。


祥子は誠一がちゃんと聞いているかどうか急に心配になったようだった。

誠一は、感情を見せないまでも、ちゃんと聞いていたのに、祥子はもう一度、それを繰り返した。

そして誠一はただそれをもう一度聞くことしかできなかった。


祥子は、横山に恋をしていた。

そのことについて、祥子はどうしても誠一に伝えなければならないと思っていた。

それが祥子にとっての誠一に対する誠意だった。


祥子は、そんな自分が許せなかったし、信じられなかった。

もしかしたら祥子は誠一に助けを求めていたのかもしれない。

でも誠一もどうすればいいのか分からなかった。

そんな出来事が、誠一の今までの想いに何の関係があるというのか。

誠一は、誰に対する怒りか分からない思いを持て余していた。

誠一にとって、それはそんなことだった。

でもそんなことのために、今までの全てがきっと違うものとなってしまうのだろう。

誠一は悔しかった。

誠一に出来ることと言えば、祥子から目を逸らさないことだけであった。

だから誠一はただ祥子を見つめていた。

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