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第1話 目が覚めたら猫である

新作投稿です。ジャンルはハイファンタジーになります。

とりあえず、毎日投稿で20話まで投稿します(10万字相当です)。


良かったら読んでみてください。

 目が覚ますと――真っ暗な世界にいた。


「......え?」


 どうしてかわからないが、視界が暗い。しかし少し頭を動かせば、そこが布の中とわかった。

 袋詰めにされたと疑ったが、それはないようだ。

 すぐに穴が見つかり、そこから外の様子が伺えたから。


「......知らない場所だ」


 視界いっぱいに広がる地面や草木――どこかの森のようだ。

 ハッキリと覚えている最後の記憶は店で飲んでたはず。まさか泥酔してここまで来て寝てたのか?


「くっ、あー......気持ち悪い。でも、起きないと」


 くるまっていた布から這い出た。一先ず木を支えに立ち上がると、断続的に続く痛みに頭を押さえる。

 その時、妙な違和感を感じた。妙に頭がフワフワしてるのだ。


「……猫?」


 怪訝に思いつつ、ふと手を見る――猫だ。

 フワフワな毛並み、プニッとした肉球……正しく猫の手そこにある。

 目が覚めたと思いきやこの姿、まだ夢の中なのだろうか。


「あれ、なんでここに服が落ちて......それにあのポーチって確か……」


 ふと視線を下に向ければ、なぜか服にズボン、靴、そしてポーチがあった。

 脱いだ記憶はない。脱ぎ癖は......なかったはず。


「――痛っ!」


 すぐに思い出そうとすれば......ダメだ、頭が痛い。

 頑張れば思い出せそうだけど、それ以上に胸の内側から気持ち悪さがこみ上げてくる。


「水、まずは水だ......」


 そう意識を切り替え、俺は状況把握を一先ず置いて歩き始めた。

 この先の方から川の音が聞こえてくる。

 だから、このまま歩いて行けば、必ず水場に辿り着くはず。



―――数分後



「つ、着いた......と、遠い......」


 川に着いた時、俺は息絶え絶えといった感じだった。

 気持ち悪さも相まってまともに歩けなかったのもそうだが、思ったより遠かったのだ。

 歩いた距離を考えれば、普通せせらぎなんて聞こえないはずなのに。


「......いや、そんなことよりも、今はとにかく水だ。

 水を飲めば、気持ち悪さもなくなるはず」


 そう思って四つん這いになり、川を覗き込めば、


「......え?」


 川の水面に顔が映る――猫だ。茶トラの猫がそこにいる。

 本来の見慣れた自分の顔がそこにはなく、代わりにいるのがその猫。

 手を見た時も疑ったが.....え、本当に? まだ寝ぼけてるわけじゃない?


「これ.....まさか本当に俺か? 猫だし、黒目が青色になってるし。

 だけど、俺のしゃべりに合わせて口が動いて、川も......うん、冷たい」


 え……?


「なんでこんな姿に!?......あ、頭が......」


 突然の状況に素っ頓狂な声を出せば、それが二日酔いの頭にガンガン響いた。

 もはやまともに立ってられる状況になく、とりあえずその場にペタンと座る。

 もう一度全身をくまなく確かめてみるが.......猫だ。どこからどう見ても猫である。


 まさか昨日の泥酔中に道端の変な物でも食ったか?

 それこそ、幻覚を見せるキノコだってあるぐらいだ。猫になるキノコぐらい......あるのか?


「……とりあえず、昨日のことを思い出してみるか。いや、その前に水」


 そう思って起き上がり、咄嗟に出たのは手ではなく――口だ。

 当たり前の話だが、猫の姿で両手で水をすくうことは出来ない。

 つまり、水を飲みたければ顔を水面に近づけろということだ。


 それを考えれば、水を飲もうとした時にすぐに顔を近づけた理由も頷ける。

 あれは体が無理なく水が飲める体勢に移行しただけだったのだ。


「クソ......なんたって俺がこんな屈辱を.....」


 水を飲まなければ、この喉のイガイガや胃の気持ち悪さは抜けそうにない。

 だから俺は仕方なく自分のプライドを折り、顔を近づけて舌を突き出した。


 当たり前だが、今までこんな飲み方したことないから飲み方などわからない。

 出来たのはせいぜい舌先でチョロチョロとしか飲むことぐらいだ。

 水を飲むだけでもやたら時間がかかる。ふ、不便!


 ともあれ、たらふく水を飲んだことで一先ずの気持ち悪さは落ち着いた。

 そこで俺はおっさんのように座りながら、腕を組んで昨日のことを思い出す。


 時間はかかったが、どうやら俺は酔っている時の記憶を思い出せるタイプのようだ。

 そしてそれを頼りに昨日の出来事を思い返した。



―――数時間前



「パーティー結成三周年記念、かんぱーい!」


「「「「かんぱーい!」」」」


 リーダーで剣士のディースが音頭とともに木製のジョッキを掲げる。

 それを合図に、重戦士の俺、魔術師ハイネ、僧侶スレア、盗賊リンデの四人もジョッキを掲げ、コンッとそれらをぶつけ合った。


「ゴクゴクゴク、ぷはーっ......いや~、一仕事終えた酒は美味いなぁ」


「ちょっとディース、おじさんくさいわよ」


「いや、でも実際そんなもんだって。トールもそう思うだろう?」


「あぁ、このために生きてると言っても過言ではない」


「そうだろうそうだろ! ってことで、久々に飲み比べするか。今日はそんな気分だ」


「いいね、乗った!」


「なら、私が見届け人になりますね」


「ちょっと僧侶のあんたは止めなさいよ」


 そんな楽しいやり取りを交わし、俺とディースは飲み比べを始めた。

 普段はやらないが、せっかくのディースからの誘いだったので断るのも野暮と思い、馬鹿みたいにハイペースで飲み進める。

 そしてそこそこ飲んだところで、ディースが一つの話題を振った。


「にしても、初めて森で出会った時はめっちゃくちゃビビッてたくせに、今ではこんなに立派になって」


「どうしたよ急に。つーか、やめろよ、恥ずかしい。でもまぁ......確かに懐かしいな」


 彼ら四人との出会いはもはや運命的だ。

 というのも、俺はもともとは日本からやってきた転移者で、名を「徹」と言う。

 こちらでは「トール」で通している。


 ひょんな出来事でこちらに来て、森の中で魔物に襲われていた所を助けられたのが四人との出会いだ。

 四人は俺に対して親切に接してくれて、そんな四人に恩返ししようと冒険者になった。

 タンク役の重戦士になったのもこのパーティーにとって必要だと思ったからだ。


 もっとも、最近は速度重視の攻略が増えたために若干置いてかれているけど。

 それでも気の良い奴らなので、俺はそんな彼らが大好きだった。

 そんな思い出話に花を咲かせ、何度目かの乾杯で俺は落ちた。


 落ちたといってもうっすら意識はあり、寝てはいなかった。

 頭がグニャグニャとした感じになり、視界がグルグル回る。

 飲むことはおろか動くことすら難しい酩酊状態になったのだ。

 その時、机に突っ伏した俺に対し、ディースが妙なことを言い出し始める。


「よし、落ちたな。ふぅー、クソ雑魚で助かったぜ。

 これでようやく邪魔者を排除できるってもんだ」


「もうしばらく前から、コイツは鈍重なただの的だからね。

 タンクが的になるのは道理だけど......っていうか別にもうタンク必要ないのよね」


「もうとっくに時代はスピードなの。現にディースが回避タンク兼剣士だしね。

 私達はこんな所で燻ってる場合じゃない。もっと先に行ける。

 トールの育成にかける時間なんて無駄だよ、無駄」


「ハッキリ言って邪魔です。目の前に居られても迷惑。

 せっかくの”迷い人”であるから期待していたのに.....もういいです。早く計画に移りましょう。

 すぐに起きることはないでしょうが、それでも用心したことはないでしょうし」


 ディース、ハイネ、リンデ、スレアの四人が順に言葉を重ねていく。

 それからディースとリンデが俺の肩を担ぎ、そのまま店を出た。

 向かった先は、俺が目覚めた森だ。そこに俺を寝転がせば、


「それじゃ、ハイネ。よろしく」


「えぇ、任せて。とあるパーティでは追放した仲間が逆恨みで復讐してきて、パーティが崩壊したって話もあるし。私達はそんなヘマはしない。

 コイツを人間以外の違う存在に変身させて二度と抵抗できないようにしてやるわ」


「それって黒魔術の類じゃなかったか? 今更だけど、僧侶の前でよくやるな」


「女神様も私達の覇道を願っておられます。故に、この罪は許されるでしょう。

 それに私達さえ黙っておけば何の問題もないですからね」


「わぁ、悪いんだ~。でもま、これがあんたの運命よ。

 せっかく迷い人で何か特別な力があると思って手塩にかけて育ててきたのに、結局何一つロクなスキルも見られないんだから」


「言うな~、ハイネ。だがまぁ、俺も同意見だ。

 俺達はお前を追放する。生かしてやるだけ感謝しろよ」


「何に変身するかはこっちでもわかんないから、せいぜいまともな生き物にでも変身出来るように祈ってなさい――<変化魔法(メタモルフォーゼ)>」



―――現在



「......は?」


 未だ鈍い痛みが続く頭で掘り起こした記憶に、俺は驚愕が隠せなかった。

 それこそ、今の気持ち悪さを遥かに凌駕する悪意によって気分がより悪くなる。

 え、マジ? これって......おいおい、嘘だよな? これこそ質の悪い夢だよな!? そうであってくれ!


 そう願っても俺の姿が全てを物語っている。水面に映る顔が何よりも動かぬ証拠だ。

 だとすれば、俺はこの事実を受け取めなければいけない......いや、受け止められるか。


「なんで......なんでなんだよ。確かに、俺にも至らなかった点はある。

 実力不足だったかもしれない。それも認める。

 けど......だけどさ、最初からそんな風に思われてたなんて......そんな裏切りあるかよ」


 俺は確かに違う世界から来て、そんな人物をこの世界では「迷い人」と呼ぶ。

 そして迷い人は何かしら強い恩恵を持っていることが多いとは聞く。

 所謂、ラノベ主人公みたいなチートスキルだ。

 そんな人物に比べれば、大した特殊スキルもないのが俺だ。


 それでもこの世界は閃きや熟練度でスキルを得られる。

 だからこそ、俺は慣れないながらも重戦士をやって、パーティに貢献しようとした。

 それに対して、この仕打ち。こんなのさすがにあんまりだ。


「もっとちゃんと言ってくれれば、俺だって直す努力したよ。

 だけど、アイツらは俺に対してこんな仕打ち。加えて、俺を人間ですら無くして。

 こんなことが許されるかよ。ふざけんなよ、チクショウ!.......って畜生は俺だ」


 おっさん座りをしながら、背中を丸くし、肩を落とした。

 もっとも、猫だからもともと猫背であり、なんだったら落とす肩もないけど。

 しかし、いい加減認めるべきだろう――俺はパーティを追放されたのだと。


 確かに、面と向かって追放されれば、俺は食い下がっただろう。

 ただでさえ、俺は助けられた身なのだ。その恩を返せないのは辛い。

 それを十分に返せてないとなれば、俺としてももっと頑張るつもりだった。


 だけど、それでも迷惑って言われたなら、恩人にそれ以上の迷惑かけるほど俺もクソではない。

 しこりは残っただろうが、大人しく受け入れただろう。


「もっとも、こんな姿なんかにされなければな......」


 心の中で全ての感情を吐き出すと空っぽの器に沸々と怒りを感じてきた。

 なんたってアイツらの平和のために、俺が人間を辞めさせられないといけないのか。

 ふざけんな、許せない! 絶対に復讐して――、


『――徹、ごめんね。でも、お母さんはずっと徹を見守ってるから。

 徹が幸せなら、それが私の幸せ。お母さんよりも長生きしてね』


『――徹、相手の言動に憎しみで返しちゃダメよ。

 あなた自身が醜くなってしまうから。これ、母さんとの約束ね』


 この世界に来る前、亡き母が俺に伝えてくれた言葉。

 それが脳裏に過り、一時的に思考が止まる。


「スー.....ハー.......うし」


 一度深呼吸して、真っ赤になった思考を一旦鎮めた。

 確かに、アイツらのした行動は許せない。思うことや言いたいことはたくさんある。


 だが、その憎しみよりも俺は母さんとの約束の方が大切だ。

 それが親不孝者が出来るせめてもの親孝行の一つだと思うから。

 それにせっかく母さんから貰った体なんだしな。


「もういい! アイツらなんかどうでもいい!

 今はただ人間に戻りたい......いや、絶対に人間に戻る!」


 二足歩行で立ち上がると俺は声高に宣言した。

読んでくださりありがとうございます(*^_^*)


「期待してる!」

「早く続きが読みたい!」


と途中で少しでも思っていただけましたらブックマークと↓にスクロールして★★★★★評価を入れていただけますと執筆の大きなモチベーションになります!

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