別れ
意識が戻る。私はああ、私は悠也兄さんの術にかかったんだっけ。しかし、特に身体の異常は感じられない。だが、何か違和感がある。••••••••••••あっ! リアムがいない! リアムがいないんだ。私は意識を心の中に向ける。
△△△
白い。真っ白い。ここは私の心の中だ。
「リアムー。リアムー。いますか? それとも居ないんですか? いやでも、あなたは私が生まれてからずっといましたよね? どうしていきなり出ていったんですか?」
返事が返ってこない。
悪魔であるリアムはいつでも私の中にいた。リアムは私が生まれた時から、ずっと私の中にいた。これは、私と母、悠也兄さんとの「秘密」だ。何故なら、もし生まれた時から悪魔が私の中にいたと神石家に知られれば、私は実験台となり、死ぬまで研究材料として実験を受ける事になるだろうからだ。また、もしかしたら、悪魔を持つ子を産んだ親として母も実験台になるかもしれない。だから、この事は私たちの「秘密」なのだ。私は必死にこの「秘密」を守ってきた。身体能力テストでは、普通の人は出来ないが、神石家の中では劣等の成績を残し、呪術では簡単な呪術しか使えないふりをしてきた。こうする事で、神石家の私に対する意識を逸らしてきた。しかし、もし悪魔が私から出ていったのなら、これからは問題なく過ごすことができる。だが、ただリアムが私の中から出ていったとは考えずらい。おそらく、悠也兄さんがかけた呪術が関係しているのだろう。そうであれば、はやく意識を戻さなければ、ならない。
△△△
私はベッドに横たわっていた。私はベッドから降りる。そして、すぐに母の元へ駆け寄る。
「お母さん! 悠也兄さんは? 悠也兄さんはどこ?」
お母さんは首を振る。
「もう、出ていったわよ」
お母さんは、ものすごい辛そうな顔をして言う。それだけで、私の嫌な予感が的中してしまったことが分かる。そうなると今すぐにでも、悠也兄さんの所に行かなければならない。
私が部屋から飛び出ようとすると、母に腕を掴まれ抱きしめられる。
「夜月。聞いて。貴女は強い子よ。私よりも強い。私より重い運命を背負って生きているのに、私なんかよりずっと強いわ。だから、きっとこの先も大丈夫。夜月ならきっと大丈夫だわ」
「お母さん、どうしたの?」
「夜月は私にとって自慢の子だわ。私の一番大好きな子だわ。私は夜月、貴女のことを世界で一番愛してる」
そう言って、母は私のことを強く抱きしめる。
「うん。私もお母さんが世界で一番大好きだよ。私の自慢のお母さんだよ」
お母さんは少し黙ってしまう。
「うん。ありがとう」
母は私を離す。
「お母さん! ちょっと私行ってくるね!」
お母さんがにっこり笑って
「行ってらっしゃい。気をつけて」
と、言う。
「うん!」
私は部屋のドアを開ける。
急いで、悠也兄さんの所へ向かおうとする。
すると、
「ごめんね」
と、母が聴こえるか聴こえないか分からない程の小さな声で言ったのが、聞こえた。
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