《時の魔術師》に永遠の幸せを
一つの大魔術で敵をせん滅後、城内に戻った二人はぐったりとしながらもナハトリ伯に報告しにいくと、そうかという言葉だけで済まされた。
老齢の辺境伯は自分自身が活躍できなかったという悔しさだけではないのだろうが、それでも一度に大きな魔術を行使するという発想がなかったようで、呆れながらも結果が出ればいいという考えのようだった。
その後、事務処理を終えたのが三日後。アレックスはただの居候にならないように、ヒルダやフレディにいろいろな作法や公爵夫人としてできる作業を教わった。
そして王都に帰還後、皇宮に出かけていく二人は正装をまとっている。今日はただの報告のためだからとそこまで着飾らないつもりであったのだが、エリックからこれを着てこいという文章とともに豪華な装い一式が届けられたのだ。
「アレックス、準備はできたかい?」
「はいっ!」
ヒルダとフレディに手伝ってもらったアレックスは、銀色の髪によく合うアイボリー色のドレスで、ルドルフは今まで数回しか着たことがないはずの儀礼用の正装。
二人とも現在の姿によく似合うものだった。
「綺麗だ」
「ありがとうございます。ルドルフ様こそ素敵です」
「そうか、ありがとう」
ホイットニー家のエントランスで二人は互いの姿に照れ臭くなるが、彼らが、とくにアレックスがもう迷うことはなかった。
皇宮に着くと、普段よりも数倍華やかに彩られており、南方にはついていかずにホイットニー家で待っていたモーリス、二人の結婚を後押ししていたエリック皇太子、かつて学園で共闘した皇帝、ヒルダ、そしてフレディが大広間に集合しており、彼らも着飾っていた。
「お前たち……――」
なぜ自分たちが着飾らせられたのか理解したルドルフは悪態をつこうとしたが、一切できなかった。
「おめでとう」
エリックを皮切りにおめでとうございますと口々に祝福された二人は前に進む。
エリックの前に来るとお前らいいなぁと羨ましそうな声を出したが、コホンという皇帝の咳払いではいはいと言いつつ、祝福の言葉をかける。
「今世紀最強の魔術師と《時の魔術師》に永遠の幸せを!」
これはかつて建国後に消えた魔術師の末裔のお話。
彼女はもう一人の建国を手助けした賢者の末裔と結ばれ、そして再び皇族を助けることになった。
Fin.
終わったー
投稿しはじめて2年越し、構想からは9年越しの完結です!
本当はもっと書きたいことや小ネタもあったけれど、ごめんなさいm(__)mもうこれ以上、書けないノダ(涙)
そしてなにより、二年越しの完結なので、中盤までと後半の書き方が変わっててごめんなさい!!
余談。
『時魔術』で最後に出てきたナハトリ辺境伯は、同じ世界観の作品である『どこまでもついて行きます!』にも出てきているんですよね。あの娘の実家としてね。もっとも『どこまでも』はすでに千年くらい経っているという設定であり、魔術はもうなくなっているので、アレックスが言っていた『寒く感じる』というのもなくなっているはずですね。