36.ルチェル暗躍
砂糖菓子を食べ、満面の笑みになる孤児院の子達。
でもまたすぐに飢えてくるわ。
ああ、人生ってままならないものね!
「アン、帰るわ。皆様、ご機嫌よう?」
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「ルチェル、孤児院はどうだった?」
栗茶色のサラサラな髪をかき上げ、タイを弛める王子。色素の薄い柔らかな瞳が私を見つめる。
本当、顔だけは極上なんだから。
口角が上がりしな垂れかかる。
「子供達が可愛くて。お菓子も喜んで頂けたわ!」
上目遣いで見つめ返して、王子の頬を両手で包む。
「王子に似た貴方の子供が欲しいの。ちょうだい?」
「っ」
王子の顔がくしゃりと歪み、私を抱き締める。
「ああ!ああ、ルチェル。私の唯一の妃。我が愛を貴女だけに」
甘く囁かれ口付けを落とされる。
世継ぎを産んで盤石にしたいのよね。
数日後、王直属の子飼いを頂いたわ。
ドルセンでは王族は自らの影を使い、情報戦や貴族の企みを制す為飼うのですって!
勿論、暗殺もお手の物よ?
早々に要らない親族は消してあげる。
お父様は……そうね、親族を御せないんだもの。利用されでもしたら、厄介。病気になって頂いて隠居。程よく幽閉が妥当かしら?
私の過去を消す為に、王子との未来の為に。
粛清だわ。病殺、自殺、他殺、まぁ、色々あるけど、プロに任せましょう。
でも、フィルトーレは簡単には殺してあげないわ。
まだ遊べるのよね?
子供染みた嫌がらせもしてあげるの。地味に応えるのよ。気力が削がれるて言うの?
面会だって許さないわ。
ルードだったかしら。しつこいったら!
王様も煩わしそうだったし。王子にも念を推すわ。
ルードとの面会は認めない。家族や従者も。
やはり里心が着いたら、張り詰めた心の琴線が震え切れてしまうかもしれないもの。
「ルチェルは優しいな」ですって!
王子は私の意のままね。
ルードはフィルトーレと誓約したのよね?
望まぬ限り……。
あの女は崇高な振りをするから、望まないわよ。心情はどうであれ。
やだ、私の一人勝ち⁉︎ 他愛ない。
私はとりあえず、悪巧みを考えてアンを呼んだわ。
じわじわと追い詰めてあげなきゃ。
ふふふ。
楽しいわ。
生きてるて、感じられるもの。




