Lood..022 赤眼の騎士(2)
「何で…スカルライダーの奴がここにいやがんだよ…」
「うぇえ~!?こ、こ、こ、こ、この御方がスカルライダーですかいな!?」
トモキの動揺しすぎでおかしくなった言葉には一切触れず、ヒート「そうだよ!」っとだけ返す。
「うわ~スカルライダーって本当にデカいですねー?タケシさん」
「そうだね――…って焦れってセキカワ!」
「バカかよお前ら!!そんな事言ってる場合かよ!!」
突如現れたスカルライダーに、完全に腰を抜かしたヒコマルが叫ぶ。
確かにその通り。スカルライダーの手にした大鎌の刃はヒート達を向いており、その刃は今まさに振り落とされんとしていた。
この攻撃の直撃を受ければ、チエコとヒコマル以外の低レベルプレイヤーのLGは確実に0となる…焦る気持ちを抑え込み、ヒートは立ち上がり声を上げた。
「オイお前ら!!逃げんぞ――…っ!?」
立ち上がるヒートの肩に、突然後ろからの手が置かれた。振り返るとそこにはチエコ。
「…大丈夫だよウサ吉…」
「いや大丈夫な訳ねぇだろ!?」
「…大丈夫…ここは安全区域だから…」
「は…?」
1人落ち着いたチエコの言動に、一瞬キョトンとなるヒート。周囲の4人は身動きすらも出来ぬまま、視界に映る大鎌が振り落とされるのを見るばかり。
「ギィイエェェェェェェッ!!」
「うわきたァーッ!!」
「何これガチ夢ぇー!?」
「それを言うなら『正夢』でしょ?トモキ」
「いやどっちも表現間違ってっからァ!!」
何ともわからぬ焦りの中、スカルライダーの大鎌が迫りくる。しかし「大丈夫」と告げたチエコは依然棒立ち状態。何かをしてくれる様子は微塵にも無い。
「ヤベェってチエコさん!!」
「…大丈夫…」
「いや何が『大丈夫』なんだって!?」
「くるぞヒート!!」
「うわッ、ヤベェ!!」
ガッゴォオォォォォォォンッ!!
振り落とされた大鎌。それは轟音を響かせ、ヒート達の真上…先まで天井のあった位置で止まった。
「なっ…!?」
鐘の反響するような音を響かせ止まる大鎌は、まるでバリアのように張られた薄い青の障壁によって阻まれている。何故に止まったのかはわからぬが、救われた事への安堵感から、その場にしゃがみ込むヒート。
「な…何で…?」
当然ヒコマルやタケシ達も驚きから、しりもちをついたり身を屈めたりの状態。するとスカルライダーの大鎌は、再びの奇声と共に振り上がる。
「ヤっベェ!またくるぞォ!!」
涙混じりの声に、しりもち状態でズルズルと後退りゆくヒコマル。その恐怖を掻き立てるように、金切り音にも似たスカルライダーの奇声が鳴り響く。耳を塞がずにはいられない程の奇声のまま、振り上がった大鎌の刃は再び轟音を響かせ落とされる。
ガゴォオォォォォォォンッ!!
大鎌は先と同様、薄い青の障壁により止められた。するとスカルライダーはすぐさま大鎌を障壁より離し、空へと浮かび上がる。そして天を仰ぐと、金切り音の奇声ではない、腹の底に響くような重低音の声を上げた。
「ブォオォォォォォォォッ!!」
その声に呼応するように、周囲を囲んだボーンナイトらが手にした武器を天に掲げ、天井に張られた障壁に飛び移り出した。
ガチャガチャ!っと渇いた物や金属同士がぶつかり合う音を鳴らし、ボーンナイトが天井の障壁を埋め尽くす。そして地下室の出入口の扉まで、何者かが押し寄せているように、ドンドン!っと叩く音が聞こえてくる。それはプレイヤーなどではない…渇いた音は骨の音。ボーンナイトである事は確か。天井を埋め尽くすボーンナイトは、張られた障壁を破ろうと武器を突き立てたり、体をぶつけたりなどをしてくる。
巨大なスカルライダーの威圧感とも違う、迫りくる圧迫感を感じさせるボーンナイトの波。チエコ以外のプレイヤーはもはやパニック状態。
「おいおい何だよこりゃ!?」
「タケシさんガチでヤベェっスよ!!何とかして下さいよ!!」
「いやいや無理無理!!ブロッコリーには無理だって!」
「ハハ、タケシさん、それネタだったらつまんないですよ?」
「お前は焦れよセキカワ!!」
バタバタしはじめた状況の中、1人首を傾げながら何やら考え込むチエコ。すると突然何かを思い立ったように、へたり込んだヒートを抱えてランタンの所に走る。
急に抱え上げられ驚くヒートを他所に、チエコはランタンに指で軽く触れた。するとランタンの少し上に、説明文のようなものが書かれたメニューウィンドウが展開される。
「…やっぱり…」
「は?『やっぱり』って、何がやっぱりなんだよ?」
「…これ…【朧火ランタン】…火を灯すと死者を導く朧火となり…だいたい1キロ圏内…そこにいる幽死体系のエネミーを呼び寄せるもの…」
「はぁ!?じゃあコイツらは…」
「…この朧火ランタンに呼ばれて…集まった…」
「じゃあ早く消さねぇと!」
「…それも無理…1度点けたら消せないのが朧火ランタン…」
チエコの言葉はヒコマルやタケシ達も聞いており、唖然とした視線を互いに合わせ、その朧火ランタンに集中する。ヒートは少し考え――…
「マジかよ…あれ?コレって確か――…っ!コラトモキ!お前何ちゅうモン見つけてきてんだよ!?」
「えぇ!?おれ!?違うって!見つけはしたけど、持ってきたのはヒコマルだって!」
「いや人のせいにすんなよ!『明るくなるから持っていこう』って言ったのブロッコリーだろ!?」
「言ったは言ったけど、ブロッコリーじゃなくてタケシだから!」
「ハハハ、だから『緑のアフロはヤメた方がいい』って言ったじゃないですかー?タケシさん」
「今ソコが論点じゃないだろセキカワ!」
っと揉め出すタケシ達を他所に、ヒートはチエコを見た。
「つーかヤバいだろこの状況!さっき『大丈夫』とか言ってたけど、あのバリアみたいなヤツとか何だよ!?」
「…あれは安全区域に張られたもの…エネミーの侵入を防いでくれるバリア…だから奴らはここには何があっても入れない…でもかなり危険かも…」
「『危険』?危険って何だよ?」
「…デッドロデオを呼んじゃうから…」
「はぃ?」
チエコからスカルライダーと2体のデッドロデオが合わさる事で、新たなボスエネミー『シルブファングランサー』となる事などを聞いたヒート。当然、同じように聞いていたタケシ達も唖然。
完全体のシルブファングランサーともなれば、スカルライダーの強さを遥かに凌駕したものとなるとの噂。ナツキやアイリを要しても、勝てるかどうかも怪しい。この安全区域にいれば、それはそれで安全ではあるものの、外にいるプレイヤーにとっては危険そのもの。ましてや完全体と成り得る状況を後押しすらしているのだ。
するとセキカワがゆっくりと朧火ランタンを持ち上げ、トモキに歩み寄ると…ポン!っと肩を叩いて、トモキの目の前に差し出した。
「トモキ。ダッシュ」
「あ~おれがコレ持って逃げれば――…ってくォラァ!おれを犠牲にするなァ!」
っと言いつつ朧火ランタンを手にしたトモキに、セキカワは親指を立てたGoodサイン。そのGoodサインは奇跡の(?)連鎖…タケシ、ヒート、ヒコマル、チエコへと連鎖し、皆笑顔。その光景にトモキはゆっくりと敬礼姿勢へ。
「ではお国の為…このトモキ!行って参りま――…って誰が行くかぁーい!」
ノリツっコみの如くに、手にした朧火ランタンを地面に投げつけるトモキ。その瞬間、チエコが今までに無い大声を上げた。
「ッ――…ダメッ!!」
…――パリィィンッ!!
トモキもそんなつもりではなかったのだろう。「あっ」っとした顔で朧火ランタンが粉々に砕け散るのを見送り、中の灯りがフっと消えた――…次の瞬間、砕けた朧火ランタンの破片が炎となり燃え上がる。
「うわ何だァ!?ガチで熱い!!」
燃え上がる炎の直撃を受けたトモキは、LGを半分以下の黄色ゲージに染めながらチエコの足元に転がりきた。
炎はランタンに灯っていた火とは比べものとはならぬ程の大きさ…キャンプファイアでもしてるかの2~3メートルの高さまで上がり、薄い障壁の天井まで達している。
すると突然、地面にへたり込んだ状態のトモキは胸ぐらを掴み上げられ、その身が地面から離れる位置まで持ち上げられた。持ち上げたのはチエコ。右手1本でトモキの体を持ち上げながら、余す左手でヒートを持ち上げ、自分の顔を隠すようにトモキとの間に置いた。
「へ?チエコさん…?」
「…っ!何してんのよこのバカ!!」
再び響いたチエコの声…しかも怒鳴り声ともなる声に、ヒート達は「えっ…?」っと動きを止める。だがチエコの怒声は止まらない。
「この朧火ランタンは火を消そうと破壊した場合、エネミーを呼び寄せる範囲が全フィールド8割圏内に拡大!しかもその炎が安全区域内で燃えた場合は、フィールド全域までに広がる!!」
「はッ!?マジかよそれ!?」
「しかも安全区域のバリアをも焼き、炎は巨大化していくのよ!!」
チエコの言葉に、ヒートやタケシ達が障壁のある天井を見上げると……小さな火種が紙を伝い燃え広がっていくように、徐々に徐々にと青の障壁が消えていっていた。
「バカみたいな悪ノリして!ここで全員殺す気かバカ野郎!!」
腹から出した怒声を響かせ、トモキを地面に投げ飛ばすチエコ。未だヒートで己の顔を隠して言葉を続ける。
「ヒコマル!早くメッセージ飛ばして救援要請!」
「え…」
「早くッ!!」
「え、あ、はいっ!!」
「3バカトリオ!」
呆然としていたタケシとセキカワだったが、自分達の事だと立ち上がり、両手両足を揃えた綺麗な姿勢で「はい!」っと答える2人。
「さっさと素材出して並べなさい!!そんな紙切れ装備じゃ突破出来ないわよ!!」
「「イエッサーッ!!」」
慌てたようにメニューを開き、タケシとセキカワが手持ちの素材を並べ始めると、チエコはゆっくりとヒートを地面に降ろし――…
「…あ~…怖かった…」
「いやそりゃコッチの台詞だっつーの!」
「…頭にくるとつい…めんごめんご…」
「古っ!いやでもあえて使う女の子も何か可愛いかも――…って違ぇ違ぇ…チエコさん、さっき『突破する』とか言ったけど、こっから突破する気なのかよ?」
「…うん…突破する…しないと…ワタシ達は全滅するだけ…」
そう言って天井の障壁を見上げるチエコ。
「…あの朧火が…ボーンナイトの侵入出来る穴を開けるまで…あと1分あるか無いか…だからワタシが囮で天井から出る…そしてスカルライダーと…出来るだけ多くのボーンナイトを引き付ける…ウサ吉はヒコマルと一緒に…3バカトリオを守りながら出入口から逃げて…」
「はぁ!?囮って…それに出入口からって、あそこにもボーンナイトがいるんだろ!?無理だって!」
「…ワタシ以外に戦えるのはヒコマルだけ…でもウサ吉と3バカトリオは守れない…だから…3バカトリオより強いウサ吉が手伝って上げて…」
チエコはヒートの手を取り、ヒートのメニューを操作し出した。そして先程〔練金鍛冶場〕で作った武具を装備させる。
「…頼りにしてる…頑張れウサ吉…」
「オレを…頼る…?」
するとあきらかに緊張した面持ちのヒコマルが、ヒートとチエコの元に歩み寄り、手にした鉄製の杖を両手に握り締める。
「俺…あんま接近戦とか得意じゃないから…悪い、背中任せるわ…」
「ヒコマル…でもオレは…」
「チエコさんの案が、今出来る最善の策だと思う…だから頼むよ、ヒート…」
杖を握る手は小刻みに震えている…当然だ。ここにいても朧火が空ける穴により、いずれはボーンナイトが室内に雪崩れ込む。突破するにも外はエネミーだらけ。ましてやあのスカルライダーもいる状況。そして1番は、『GAME OVER』=『死』の恐怖。
「チエコさん!!」
すると突然、場の空気を呑み込む程の大きな声が響く。「何だ何だ?」と皆が見渡すと、トモキが部屋の隅の方で土下座の姿勢。その姿に、タケシが首を傾げながら視線を送る。
「ト、トモキ?何して――…」
「タケシさん!セキカワ!ヒート!ヒコマル!そしてチエコさん!おれのせいで危険な展開になり、本当にスイマセンでしたァ!!だからチエコさん!!」
深々と下げた頭をガバッ!っと起こし、チエコをまっすぐに見るトモキ。
「その囮!おれにやらして下さい!!」
っと、声高々に要請するも――…
「いやそりゃ無理だろ」
ヒート、タケシ、セキカワにヒコマル。全員の声が揃って却下。
「お前…筋金入り(のバカ)だわ…」
「先輩として恥ずかしい…」
「同級生として恥ずかしい…」
「中学年の俺でも無理ってわかるぞ…」
4人の冷めた視線に、「えー…」っと存在が霞みゆくトモキ。とどめと言わんばかりに、目を合わせてくれていたチエコすら、プイっとそっぽを向いた。
古典的な『ガビーン』の文字を頭に落とし、崩れ落ちたトモキの前に突然、カラン!っと転がる赤柄の1振りの刀。その延長線上には、物を放ったように手を上げた状態のチエコの(後頭部)姿が。
その刀を拾い上げ、チエコと刀を交互に見るトモキ。
「え?コレって…?」
そうトモキが問い返すと、チエコはサっとヒートの後ろに身を隠し、ヒートの耳元でボソボソ…つまり代弁しろと意味であり、ヒートも小さくため息。
「あ~えっと…『エリコに小太刀作って上げようとしたのに、間違って出来た【"長刀"紅桔梗】。エリコは長刀扱えないから、出世払いの100,000Elkで売ったげる』…だってよ」
「しゅっ、出世払い…?」
「『まっすぐなバカは嫌いじゃないから、特別割引の価格。それ持ってウサ吉と一緒に戦え』だってよ……オレもうウサ吉固定なんだな…」
ガクっと肩を落とすヒートには構う事なく、チエコは天井に向かい燃え上がる炎を見た。
「…時間が無さそう…早く装備作らないと…」
そう呟き、タケシとセキカワが並べた素材の元へと足を進め、手にした〔練金鍛冶場〕の金槌を振り上げた。
「…4つ同時に…やってやる――…いけっ…!」
カァンッ!! カァァンッ!!
…――カァァァンッ!!
三度打ち鳴らす金槌が、一瞬の眩い白光を放つと、並んだ素材は――…
「…あれ…失敗…」
その言葉通りなのか、まるで焼け終えた薪の跡…黒の炭のような物が4つ並ぶだけだった。
これにはタケシにセキカワも、キョトーンっとした表情のままに固まってしまう。当然ヒートも同様の反応。
「って何やってんだよ、チエコさん…てか失敗とかあんのかよ?」
「…人間だもの…」
「み○をかよっ!」
「…4つ同時はやっぱ無理みたい…すぐ作り直す…同じ素材なら持ってるから…」
「なら早くやってくれよ!そろそろ上ヤベェって!!」
ヒートの言った通り、天井の障壁は炎より僅な隙間をもち、円形の火の和が広がり障壁を焼いている。それを見てか、ヒコマルは杖を構えて迎撃態勢。つられるように、トモキもチエコより受け取った刀を抜いて構えた。
そしてチエコが素材を取り出し、すぐさま金槌で打ち付ける――…その1発目と同時に、天井に伸びた炎の中から1体のボーンナイトが、その身に炎をまとうようにして飛び出してきた。
瞬間、ヒコマルの持つ杖から放たれる光の矢。
「追撃頼むぞ3バカトリオ!!」
「え?『バカ』はトモキだけだぞ」
「セキカワァー!!」
「ソコはいいからやるぞ!!」
光の矢がボーンナイトの額を貫き、グラついた瞬間を機に、一気に駆け出したタケシにトモキ、セキカワの刃の連撃がボーンナイトを斬りつけた。元々炎自体にもダメージ判定はあったのだろう。3人の連撃にボーンナイトの身は砕け散り、光りのエフェクトを舞わせて消えていった。
「うおっ、スゲっ!」
急に手慣れた感のある攻撃に、ヒートはただ驚くばかり。
するとチエコが打つ武具が完成。タケシとセキカワに無言のまま投げ渡すように、それぞれの武具を放り投げた。慌てキャッチしようとするも、武器と兜や鎧などの大小様々な武具を1度にキャッチするなど不可能。武具の何かしらが頭や体に当たり、「痛い!痛い!」っと声を上げて武具に潰されるタケシとセキカワ。
その姿を見るか見ないかで、チエコはヒートを再び自分隠す盾代わりにし、後ろでボソボソを話し出す。
「え?…あ~お前ら、あの、その…『さっき失敗したから、その装備のお代は要らない。早く装備して、さっき言った突破作戦実行。スタートするから、10秒前』――…ってはぁ!?『各自数えて』ってもう始めんの!?」
驚いたように振り返るヒートに、チエコは手の親指を立てたGoodサインを返し、余す手でヒートの頭を撫でた。
「…先に行くから…幸運を祈るよウサ吉…生きてまた会ったら…モフモフさしてね…」
「え…あっ、オイ!」
そう言うと、チエコは燃え上がる炎に向かい走り出し、天井障壁の穴を突き抜けていくように飛び出した行く。
すると室内にも響き渡るスカルライダーらしき奇声。そしてボーンナイトらが一斉に群がるような、ガチャガチャとした音。それに続き聞こえるのは、まるで爆発でもしたかの轟音に大地を揺らす地響き。これには思わずヒートも炎に向かい走り出す。
「オイ!チエコさん!!」
「待てヒート!」
すぐさまヒートの肩を掴んで止めるのはヒコマル。
「俺らはチエコさんに言われた通り、扉から出て突破するんだ!」
「けどやっぱ1人じゃ危なすぎんだろ!!」
「行ったってスカルライダー相手だ!足手まといになるだけだ!!」
足手まとい…確かにそうなる事はわかっている。アマチュアとはいえ、ボクサーとして…強い男として生きてきたヒートにとって、自分達を逃がす為に女性に危険な道を進ませるなど、現実世界ではあり得ない状況。ましてやチエコを抜いた今、レベルで言えば最年少であるヒコマルを頼らねばならぬ現状に、苛立つように地面を蹴った。
「クソッ!!情けねぇクソウサギじゃねぇかよ!オレは!!」
「これがレベル制RPGの宿命だよ…レベルが強さの全てになる。だから今はチエコさんに託すしかないんだ」
「ヒート君!ヒコマル君!そろそろ10秒!!」
そう言うのはタケシ。ヒコマルの言葉通り、今はチエコに囮をしてもらい、低レベル者を逃がす…これが最善とは理解する。「行くしかない…」っと、行く意思を伝えるべく振り返るヒート。
「…――ブっ!タケシお前っ…ブハハハハハっ!!」
っと突如大笑いするヒートに、つられるように笑い出すヒコマルにトモキとセキカワ。
それはタケシの新たな装備――…兜にあった。タケシの髪型は緑のアフロ。その頭に装備されたのはカメレオンの頭蓋骨型の仮面てあり、耳の上を通すベルトと、頭の頂点を縦に通す逆さの『T』字のベルトあるという点だ。アフロをその形状のベルトが通ると……
「お前それ『緑のミッ○ーマ○ス』かよ!」
今までの緊迫感をブチ壊すタケシの装備に、新たに骨の装飾のついた黒のマント。頭には同色のベレー帽を被ったセキカワが、腹を抱えながらもタケシの背中を指差した。
「タケシさん背中…背中に可愛いモノが…!」
骨の素材で作られた軽鎧の背中…そこにいたのは、ピンクのドレスを着た20センチ程の長い金髪を生やした白骨人形。これは今気づいたのか、己の背中を見て体をビクつかせるタケシ。
「うわっ!何だよコレ!?」
「それは人形術師の武器、【ダンシング・ホラーベイベー】だ…くっ…クハハハハハっ!」
堪え切れぬ笑いに、自分の膝をバシバシ叩くヒコマル。
新しい装備になったというのに、完全な笑い者となった状況に、タケシは心を無にして目を閉じた。
「…うん…早くトーキョウでショッピングしよう…」
そうタケシが呟いた瞬間、チエコが飛び出していった天井障壁からガチャガチャと音を発て、複数のボーンナイトが落下してきた。炎の中に消える者もいれば、炎をまとい転がる者も。
「マズい!!早く扉から脱出するぞ!!ヒート!トモキ!後衛頼む!!」
「おっ、おう!」
彼らの存在に気づくボーンナイトが武器を構えて迫る中、タケシとセキカワを挟むように、ヒコマルを先頭に走り出すヒート達。
「扉は魔法で破壊するから、後は死ぬ気で地上まで行くぞ!!」
杖を出入口の扉に向け、ヒコマルはその杖先を白く光らせる。
「こんな所で死ぬもんか…っ!だァアァァァッ!!」
歯を喰いしばり、腹の内から響かせる雄叫びを上げて撃ち放たれる、拳程の光の玉が次々に扉にヒット。爆竹でも鳴ったかの音を発て、出入口となる扉を破壊。巻き起こる爆煙に向かい、先頭のヒコマルが飛び込む――…瞬間!
ドスッ――…
…――ドスッ!ドスッ!ドスッ!
爆煙に飛び込んだはずのヒコマルの体が、爆煙に跳ね返されるように再び現れた。しかもその体には5~6本の錆びた剣が刺さり、腹から背中へなど貫いている。
「っ…ぐはっ…!」
ヒコマルを貫く刃の先…爆煙より身を乗り出すように姿を現すボーンナイトの軍勢。
「ヒコマルッ!!」




