15話 しゅうごう、みゃ!
*** 登場人物 ***
・ハチ
未来から来た小さな猫。賢いが、小さな体が行動に追いつかない。わりとドジ。
・七彩七海→ナナ
護衛をしているピンク髪のギャル。
弓月の内縁の妻。籍は入れていない。
・ベル→ベル(本名は明かせない)
唯一の現代人。
"書き手"というレア能力から命を狙われやすい。
長い金髪。恭介の婚約者。
・来栖恭介→キョウ
医者。茶髪。ベルの婚約者。
たまにぽんこつになるが冴えている。
・百目鬼弓月→ユヅ
リーダー兼護衛。少し長めの黒髪を結んでいる。
七海の内縁の旦那。妖艶で顔が良い。
・服部半蔵→ハンゾー
過去人。護衛をしているが、畑の世話とかもするらしい。
顔が良すぎるため、両目をみたら誰もがめろめろになる。
灰色の髪で、前髪を片方伸ばして片目を隠している。
・若王子王子→おうじ
七海の兄でこの中の年長者。猫耳のニット帽を常にかぶっている。
努力型の天才で、パソコンやスマホでハッキングなどできる。
・黒羽フリル→ふりる
上品なお姉様で美人。ゴスロリの服を着ている。
紫の髪をくるくる巻いている。
元々、沖田と同じ組織に属してベル達と敵対していたらしい。
・沖田総司→そーちゃん
過去人。とある事情で沖田蒼と名乗っている。メンバーの中で一番若い。背が高く麗しい。
水色の髪をサイドテールに結んでいる。
そーちゃん……なかないで、みゃ。
みゃあは、よく、おねつ、でる、み。
みんなとあそぶのたのしくて、いちにち、ろっかいの、おひるね、おさぼりしちゃった、みゃう。
みゃ。このまくら、ままのにおい、する、みゃ……。
まま……ま、ま……。
みゃあ、みんなと、いっしょに、いたい、みぃ。
みんなに、なかないで、ほしいみゃあ。
みんなに、わらってて、ほしいみゃあ。
……みゃ? そーちゃん、さっきより、いっぱい、あめふってる、みゃ。
なみだ、かなしいのあかし、みゃあのせい……みゃ。
そーちゃんの【あめ】、みゃあにもふってきた、みゃ。
そーちゃんの【あめ】、からだのおねつとって、きえていく、みぃ。
そーちゃん、だいすき、みゃ。
おきたら、みゃあが、よしよしと、ぎゅうと、いいこいいこをいっぱいしてあげる、み。
まっててみゃ。そーちゃん!
***
ハチは、沖田さんの流した涙がどんどん落ちていったのを――おててで触れた。
「ハチ……! 起きているのか?」
沖田さんは涙を拭いながらハチに問いかけると、ハチは耳をぴくり、と動かした。
沖田さんが、見逃さずにハッとして、動いた耳に触ろうとして、やめる。
「きっと起きてるよ。沖田さん、あのね。私、ハチの心の声が――」
聞こえてくるって言おうとしたけど、階段からドタバタ足音が聞こえてきて、ガウンを脱ぎながらキョウ、服部さんが飛び込んできた。危ないよ!
「ベル! 無茶しやがって!」
キョウは私の肩をぐあんぐあん揺らした。
私はぐあんぐあんしながら話したいことを話す。
「それどころじゃなっ! キョウっ! ハチっ! てんてっ! きっ! し、て!」
「キョウ殿! ハチ殿に点滴の治療でござるよ!」
私を揺らすキョウを止めてくれると、服部さんは沖田さんに「これで安心でござるな」と声をかけた。
「はい……半蔵兄さん」
服部さんも涙でうるうるになっていたけど、沖田さんは何も言わずにハンディファンを取り出して「これは使えるかもしれないです」と涙を誤魔化そうと真剣なふりをしてた。
風でハチの毛がふわふわ揺れる。
「みゃ……」
(かぜ、きもちい、みゃ)
「沖田さん、風気持ちいいって! ハチが言ってる!」
「ベル姉さんわかるのですか?」
「ああ――ベルはな、」
キョウがそう言いかけた瞬間、どてばたがしゃん、という音を鳴らしながら、階段のドアからナナがツインテールを華麗になびかせて、頭には花瓶、体にはリボンや包帯、足先には壁に飾っている写真立てをマグネットのようにつけて、体を横にしながらスライディングしながら飛び込んできた。私も言っていて意味がわからないよ!
え、ナナ、どうなってるの? どうやってるの?
スライディングしたナナは、そのままハチの布団の横でピタリと止まって、「ハチっち」と小さな声で呼んでから、色んなものを落として、沖田さんに抱きついて泣き出した。落としたものはキョウと服部さんが「何やってんだ馬鹿ナナ」「これまた見事にデコレーションされてるでござるな」と言いながら、落ちる前に拾ったり取ったりしてた。
ユヅさんとフリルさんが、頭を抱えながらとぼとぼと近づいてくる。やだもう、普通に来てくれると安心する!
ユヅさんが腕を組みながら「何から言おうか迷うが、七海はハチが苦しんでいることと、そこへ沖田さんと服部さんを置いて行ってしまったことを心配していてな。感情が爆発しているんだ。すまない、沖田さん」
沖田さんは泣きながらユヅさんに微笑んだ。
「自分、ナナ姉さんの気持ちはわかっているつもりです。背負わないで下さい」
その言葉がきっかけで、ナナはわんわん泣き出した。「病人の前で大声出すな」と言うけど、ナナは止まらなかった。声高い! キンキン響くよう、ナナ〜〜〜! 泣き止んでっ!
私はナナの声に負けじと大声を出した。
「だっ大丈夫だよ、ハチが点滴で治るって言ってたの!」
すると、ナナはぴたっと泣き止んで「そうなんスか! 良かったっスね、ハチっち!」と言ってハチをしゅぱっと抱き上げた。沖田さんが慌てて「ハチを降ろしてください」と止めてくれる。
ユヅさんが心配のあまり暴走するナナに、ポケットからお菓子を出して放ると、一瞬釘付けになってから、ナナはハッとして止まった。そして、かわいらしくちっちゃくなったナナは、はいはいをしてハチのところに戻ろうとしたところを――拘束された。ナナったらたまに小さくなるよね?
「あにゃ……はちっちぃ……」
ナナはびくりとしたからか、小さくなったまま、ぬいぐるみのようにユヅさんの腕の中にいた。ひょこ、と顔を出していて、目はうるるると涙の海が溢れそうになってる。
女性陣は、あららとナナを気にしているが、キョウは現実を見ていた。
「それが良いな。だからハチの時間を止めなかったのか」と頷く。
「うん、今もハチは、私の心に訴えかけてくれてるの」
オペの後で疲れているであろうキョウの顔が緩む。「こいつがベルに伝えたことはなるべく教えてな」って言って、「お前も頼んだぞ。ハチ」って呼びかけてた。
こうして話している間に、沖田さんは「フリル姉さんっ! フリル姉さん……無事で良かったです」と感動の再会をしていて、私とキョウは、はてなを浮かべた。
「ワタクシはこう見えて強いのですのよ?」
「知っています。でも、だから自分、無茶しないか心配で……」
沖田さんが私とキョウに言えなかったことのお話なんだと思う。説明している暇はないから、お互いに話さないし、聞かなかった。
ユヅさんが気を遣って私たちのはてなを解消すべく話してくれた。
「色々あったんだ。僕達もベルにハチが『心に訴えかけている』こともハチの記憶も気になるが、今の優先順位は、ハチの治療だな。恭介、続けてくれ」
待って。ユヅさんはナナを頭の上に乗っけてるから話が入ってこない。助けてぇ! ナナはきゃっきゃとユヅさんの髪を結んで遊んでる。かわいいけどなんなのっ⁈
キョウは頷いてから飛び出して行った。一階への階段を駆け上る音が聞こえる。きっと、点滴を用意しに行ったんだ。
オペ室での点滴が安心だけど――ハチを連れて行かなかったのは、ハチが一人になりたくないはずで、私たちも見守りたいことを知ってるからだよね。
ユヅさんもハチを覗き込む。そして私と服部さん、沖田さんの後ろに正座して話した。
「次の優先順位は、七海の件だな。ベルが時間を止めてくれているから、フリルさんの安全は確保されたし、ある程度戦闘や取引が減りそうだ。な、王子くん。――王子くん?」
そういえばいないねぇ。って思ったその時――王子くんは、息を絶え絶えにしながら、階段から滑り落ちてきた。一回ずつお尻を打っているのを見かねて、服部さんがお姫様だっこをする。
「……や、あ☆ ベルちゃ……記憶域から、おか、えり……」
「む、無理しないで、お、王子くん……」
ぜえ、はあ、と呼吸をしながらハチの名前を呼び始めた。「ハチちゃん……ハチ、ちゃ」
そんな服部さんを馬跳びの要領で肩に手を置いて、キョウが飛んできた。
こらっ! 何してるの! すごいけど!
服部さんは、キョウに「すまん、服部さ……王子くん⁈」と服部さんに謝った後、どさりと床に落ちて意識も落ちた王子くんを見て「うわ、マジですまん」ってまた謝ってた。
「王子殿は――一度寝せてあげたほうが良かったでござるから、ちょうど良いでござるな」
「そうですわね……頑張ってくださってましたから」
「ああ。脳の使いすぎでどうにかなりそうだったからな」
いやいや、服部さん、フリルさん、ユヅさん!
何かあったんだろうけど、寝たっていうより気絶じゃん!
キョウは、救急バッグに詰め込んでた点滴を取り出して、こめかみを三回叩いた。その音にハチの耳がぴくり、と反応する。
「み……」
(キョウ、みゃ?)
その鳴き声にみんなが反応して、ハチの周りにしゃがみ込んだ。
「ハチっち!」ナナが叫んで、ユヅさんの頭から跳んだ。ハチの横に着地して、顔を近づけてる。近いよ!
キーンとしたナナの声に耳をやられちゃいそうになっていると、キョウに背中を叩かれた。
「ベル! ハチの通訳!」
「うん! 『キョウ、みゃ?』って言ってる。多分治療してくれるって安心してるんだよ!」
「なんで……ひくっ……わかるんスか……っひくっ……ウチのことも呼んでほしいっスようぅ」
ナナが鼻水をみょーんと伸ばしながら訊いてきた。
ハチは「みぃ……?」と微かに鳴いて瞼を開けた。ナナを見ると、鼻水が迫っているけれど避けれなくて、また瞳をぎゅっと瞑った。ああっハチーーーーー!
「馬鹿野郎! 七海! 鼻水がハチにつく! 菌が入ったらどうするんだマスクをつけろ」
ユヅさんはポケットからマスクを出して、ナナにマスクを装着した。
「ちべたいっス」
「ナナうるせえ! 先輩なんとかして下さい」
ユヅさんは困った顔をしながら、今度は沖田さんの腰に手を回したままのナナを「すまない、沖田さん」と言って引っ張った。
「フリルさんッ! 僕の体と七海の体をを何でも良いから覆ってくれ! 『アレ』で黙らせるッ」
意図を汲んだフリルさんは、なでなでしていた沖田さんの頭から手を離して、予備の布団のシーツを二人に被せた。すぐに沖田さんの耳を塞いで反対側を向かせる。
服部さんも耳を塞いで自主的に沖田さんの横に来て、未成年二人は何も見ないように、聞かないようにしてた。
今二人が何をしているかは重要じゃない!
ユヅさんは力でナナに敵わないから、黙ってもらう時は"こう"するしかないの〜〜〜っ!
「あにゃあ……にゃへへ……にゃ」
ナナは、にやにやして、目がハートになって、猫耳としっぽを出して、めろめろになっている。
ユヅさんは、そんなナナを王子くんの横に何事もなかったかのように寝かせた。ついでに二人にブランケットをかけてあげてる。ざ、雑!
キョウは、おかまいなしに既にハチに点滴してあげてた。
「頑張ったな、ハチ。針刺してごめんな……終わるまで針がちくちく痛かったら場所変えような」
キョウは、次に熱を取るジェルを貼ってあげてた。「貼ったばかりだけど、耳のやつ取り替えるぞ。次は手のやつな」と言って、耳や肉球にジェルを貼って熱を取り、剥がすを繰り返してる。
熱を常時測ったり、脈拍を測る機械も置いてた。それはハチの足のところに、そっと巻かれてた。ナナ専用に用意してた、怖くないやつ。ふわふわした緑のやつで、ヘビの顔が描かれてた。『ザ・医療』って感じがしない。ヘビは邪魔にならないように長めで、もちろんハチがあんよを動かしても大丈夫な設計になってる。ナナ用だし。
「ベル! ハチに話しかけてくれ!」
私は、額をちょん、と触ってからハチに声をかけた。
「ハチ、何か言えるかな? 体のこと、教えてくれるかな?」
「みゃあうん……。みゅう。み、みゃ……みゃあ」
(ぷにぷにのゼリーきもちい、みゃ……。てんてき、いたくなくて、みゃあびっくりした、み)
「ぷにぷにのぜりーが気持ち良いって。点滴も、痛くなくてびっくりしたって言ってる!」
ハチは私が通訳し終えてすぐ、「ぴ……みぃ……みゃ……」と鳴いた。
「えと……みんな、大丈夫? 泣かないでってハチが……」
私はその言葉で――限界を超えちゃった。
「ハチ、大丈夫だよ。みんな大丈夫。だから、ハチも大丈夫ってなって、ね」
「みゃ」
ハチは、ゆっくり手を挙げて、おててをぴっとした。
(みゃあ、よくおねつでる、み。きにしない、みゃ。みんななかないで、みゃあ)
「えと……ハチは、よく熱が出るから……っ気にしないでって……みんなに泣かないでって言って、」
言ってるよ――!
(みゃあ、おねむなった、みゃ。ベル、また、つうやく、まかせる、みゃ)
ハチはみんなに囲まれながら、うとうとしてる。寝れたかな? わかんないけど、すぅすぅ聞こえるし、どくどくって見てわかるくらい脈打ってた体は、さっきよりマシに見える。足に巻いた脈拍と体温チェックのヘビさんの感触が気に入ったのか、たまにあんよを擦り合わせて、「みゅい」と機嫌いい時の鳴き声で鳴いてる。
さっきと違って穏やかな表情。瞼をぎゅっとしていないの。たまに、なんかぺろぺろして寝てる。このタイミングに合わせて、キョウがスポイトでお水をあげた。あっ、上手くペロってした! ふふ、良かった。
私もお手伝いとして、熱を取るジェルを耳から剥がすと、ぴこぴこんっと動かすけど、ハチは「みみゃん」と寝言を言った。もし寝れてたら、良い夢だといいな!
「で、先輩。何があったんです?」
キョウがハチのジェルを確かめながら訊く。
「ああ、簡単にまとめるぞ。予想通りベルを狙って敵が襲ってきた。敵のほとんどは沖田さんと服部さんがすぐに片付けてくれたが、厄介な能力者がいてな。息を止めている間、姿を隠せる能力者だったんだよ。奴は桜さんを人質にしていたから、フリルさんが急いで変わってくれたんだ」
フリルさんは「ええ」と言ってユヅさんの話の続きをしてくれた。
「ワタクシは、元"黒の書き手"ですから、ベル様を狙っているのであればワタクシに価値があると思いまして」
沖田さんが心配してたのってこのことだったんだ――!
「ああ。それで二人が手を出せないまま動けなかったところで、ベルが時間を止めてくれたんだ。フリルさんも抜け出せた。桜さんは、右山さんが抱きしめて離さなくてな。二人ならうさぎ仮面の独身寮に避難させたから安全だ。だが……もう未来の約束の時間が迫っている。奴らは時間稼ぎも兼ねてやってきたんだ」
電話で脅された「お金を持っていく」約束の時間だ!
「自分と半蔵兄さんが倒したのは手応えの全くない、一般人でした。人数だけは多かったので苦戦したんです」
「そんなことがあったのか!」
ハチの頭をさわさわしながらキョウが驚く。ハチはみるみるうちに熱が下がり――あれ?
私の視界がぐるりと回って、何かふわふわを感じで、意識が遠のいていった。
「あぶねっ! ハチにぶつかるところだった! ベル、おいっベル!」
キョウの声が聞こえた気がした。
ステッキが、チクタクと音を立てて、能力が解除されていくの感じる。
私は、「みゃ……」という小さな星が瓶の中で転がるような愛おしい鳴き声を聞きながら――意識を失った。
***
みゃ……ベルもねんね、した、みぃ?
みゃあといっしょに、ねんねするみゃ!
ベル、がんばった、みゃあ。
こんどは、みゃあが、【いいこいいこ】する、み。
みゃあは、ベルのほっぺにおててあてるみゃ。ベル、はみゃあのぷにぷにのにくきゅう、すき、み。ごほうび、サービスみゃ。
いまのみゃあは、おねつあるから、きっとあったかい、み。
ベル、よしよし、みゃあ!
でも、おきてみゃ……。そーちゃんがよんでるみゃ!
みゃあは、ベルをぎゅう、すると、そーちゃんが「無理をする約束です! 起きてください、ベル姉さん……」って言ったみゃ。
みんな、とめてるみゃ。キョウ、ふりる、ふたりとも、そーちゃんおこらないでほしいみゃみゃあ!
そーちゃんがもうおこられないように、みゃあが、ベルおこす、みゃ。
***
ベルが倒れた――ちくしょう。もう一生無理をさせないと誓ったのに、婚約者のくせに、医者のくせに、俺は何してるんだ!
沖田さんは倒れてすぐ「ベル姉さん!」と呼んで体をゆすった。何をしているんだ……?
「沖田さん、どうしたんだ……! ベルが起きちまう」
「そうですわ、能力を使って限界が来たのですわね……リビングの状況を見ますの!」
フリルさんは小走りで備え付けられた液晶画面を見る。俺も遠くから覗いたが――敵がきょろきょろと彷徨いていた。ドアに気がついたらしい。鍵を閉めているが、ここに来るのも時間の問題だ!
ユヅ先輩がフリルさんに指示をする。
「フリルさん! ここは"シェルター"だ。オートモードで敵を撃つ! 王子くんが取り寄せた鉛玉で攻撃できるんだ。横の緊急攻撃ボタンを押してくれ!」
「はいですの! ――まさかそんな設備があるだなんて……! まあ、沖田さん!」
一度やめたのに、沖田さんはまたベルの頬を叩き始めた。
沖田さんは必死に「約束しましたよね! ベル姉さん! 自分が支えますから! 無理してでも起きてください!」と頬を叩いていた。
「何言っているのです! 沖田様! おやめなさい!」
「沖田さん! ベルを離してくれ!」
「ごめんなさい、キョウ兄さん……大切な婚約者のベル姉さんの頬を叩いてしまって……でも! ベル姉さんが『無理をさせてほしい』って言ったんです! だから、自分は、自分は……っ」
フリルさんは、何も言わずベルを叩いていた沖田さんの手を握った。
それでも振り払おうとして、沖田さんは動けなくなってしまった。
ハチは、耳をゆっくり動かしたあと、よろよろと起き上がった。ベルにもっと近づいて、手の甲に――爪を突き刺した。
ベルは「はち、おきたさ……ありが、と……」と名前を呼びながら目を覚ました。
「今能力を使う、から……!」
ステッキにベルは手を伸ばした。まずい!
俺はステッキを奪った。これ以上能力を使ったら体がどうなるかわからない。
能力には副作用がある。俺も診察するたびに激しい頭痛に襲われる。
だが――ピンクと黒の何かが飛び込んできた。
「そうね。ベルちゃんにはもう少し頑張ってもらわないと。サクちゃんも私も困っちゃうわ〜」
「お姉様⁈」
「桜さん……ハチのお母さん!」
黒いドレスを纏った右山さんは、桜さんを抱いて瞬間移動してきた。桜さんは右山さんから飛び降りて、ハチの所へ走る。
「ここの座標飛びにくいわね〜疲れたわ〜」
いつもは右山さんに対して、ナナがツッコミを入れるが――いなくなっていた。あいつ、能力使っていつのまにか出ていったな!
液晶画面を見ると、ナナのツインテールが解けて、赤い血液とピンク色の髪が不規則に舞っていた。
ベルは、「キョウ、ごめんね。許して……時間よ止まって――」と沖田さんと一緒にステッキを持って時間を止めた。ハチもステッキの端にちょん、と触れている。
――ベル! もう、無茶はしないでくれ……。
俺はもう、お前を失いたくないんだ……。
更新お待たせしました。ストックしてありますのでご安心を!
ナナは冗談抜きで最強です。ただ、命を奪わないために配慮しながら戦っているので、侵入者である透明人間も一瞬で倒すこともできましたよ。すごいですね!
ユヅさんには愛をもらいすぎてメロメロになって倒れたそうです。何をしたかは私も知りません!




