第3章 愛憎
「お嬢様は、俺の事がだーいすきなんですよ。悪魔とか関係なしに、俺の事が今日も明日も明後日も。永遠にずっと大好きになるんです」
泣き疲れた少女の頭を愛おしそうに撫でながら、ネオは刷り込むように囁く。
命令なしでも精神を繋ぐなら、飴と鞭が効率的なのをネオは知っていた。だから、時に脅し時に甘やかし。少女の中の正常なモノサシを壊していく。少女には自分しかいないのだと分からせ、自分だけが愛し大切にしてあげられると。他人を落とし自分を上げ、心にヒビを生ませてつけ入る。
「俺はこんなに愛しているのに、父親殺しただけで逃げ出されるなんてたまったもんじゃないですよ。本当に」
「ぅ、ん……んん」
「まぁ怯えてた相手の前で、寝れちゃうくらい危機感ない子で可愛いですけど。……許せるかと言われたら許せないしなぁ」
寝返りを打ち自分に背を向ける少女を眺めながら、ネオはベッドに腰をかけ後ろ首を掻いた。なにかに執着したことも、失敗したこともなかったせいで自身の気持ちにすら整理がつかない。それでも心は、深海よりも暗い感情が渦を巻き続ける。
「……どうしてあげよっかなぁ」
少女の首につけていたチョーカーを消し、頭を捻る。数秒経った後、ネオは徐に自身の手首を透明な糸で切り始めた。陶器のような白い肌を伝う真っ赤な血。それを指で撫でてから小さな輪を描く。
「でもきっと、お嬢様は俺のこと本当に好きだと思うし。……そうだ、少しでも好きならその感情が増幅して何も考えられない魔法を考えればいいのか」
俺ってやっぱり天才〜と口角を上げ、ネオは真っ赤な指輪を生み出した。手のひらで遊ぶように転がしては、ちゅっとそれに口付ける。
「どうせなら、俺を憎む度に好きになる魔法も追加しようかな。その方が、憎いのに好きになって混乱するお嬢様も見れますし」
なんて月灯りの下でネオは妖美に笑う。悪魔に魅入られた少女は花飾りの加護を失い。悪魔は少女の痣がついた手首にそっと爪を立て、静かに流れるその血液からもう一つの指輪を作り出し自身の薬指に通す。
「明日、仲直りしましょうね。お嬢様」
そして、その真っ赤な指輪を少女の左手の薬指にそっと嵌め、触れるようなキスを落とした。
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