表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神Killerー錆色の処刑人と贖罪のタルタロスー  作者: スギセン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/9

エピローグ 新たな一日

 三日後――。


 スラム六十六番地。

 街外れの古びた事務所には、今日も静かな時間が流れていた。


 窓から射し込む朝の光が、木製のデスクを淡く照らしている。

 その椅子へ深く腰掛け、アグロは新聞を片手にゆっくりと足を組んでいた。


 事務所に併設されたガレージのシャッターは開きっぱなしだ。

 そこには、一台のバイクが静かに佇んでいる。


 キャシー。

 車体へ刻まれていた深い裂傷は、今ではほとんど跡形もなく修復されていた。

 パールブラックの塗装が陽光を受け、穏やかに鈍く輝いている。


「旦那、珈琲入りやしたよ」

 ダズが湯気の立つマグカップを机へ置いた。


「ああ」

 アグロは礼だけ返すと、黒い液体を一口だけ含む。


(……苦ぇ)


 顔には出さない。


(砂糖二つ……いや、三つ。それとミルクも欲しい)


 だが、それだけは絶対に言えない。

 死神たるもの、ブラックコーヒーくらい平然と飲めなければ格好がつかない。


「…………」


 無言でもう一口飲む。


(やっぱ苦ぇ)


 今日もプライドが勝った。


「でも、いいんですかい?」

 ダズが机へ肘を付きながら首を傾げる。


「今回の報酬、ほとんど被害者の会へ回しちまって」

 アグロはマグカップを静かに置いた。


「……まあ、俺より必要な奴らがいるからな」

 少しだけ視線を窓の外へ向ける。


「残された子どもも、父親も。 金で解決できる問題じゃねぇが、それでも生活の足しにはなるだろ」

「……そうですかい」


 ダズは嬉しそうに笑った。


「まあ、旦那がそう言うんなら」


 しばらく穏やかな沈黙が流れる。


 やがてダズはガレージへ目を向けた。


「キャシーさんも、大分よくなりましたねぇ」

「ああ」


 アグロも同じ方を見る。


「俺たち死神は、魂を刈り取れる」


 その声は静かだった。


双子トゥーマンの魂を刈った分を、あいつの補修へ回した。 もともと、あいつの動力源が魂だからな」

「へぇ……」


 ダズは感心したように頷く。


「それで動くなんて……なんだか不思議な力ですねぇ」

「……そうだな」


 アグロは小さく笑う。


「……まあ、この世界だって似たようなもんだろ? 不思議なことなんざ、そこら中に転がってる」

「ははっ、違いないですなぁ」


 ダズも豪快に笑った。

 そして何かを思い出したように引き出しを開け、一枚の依頼書を取り出す。


「あぁ、不思議と言えば――こんな依頼がありやして」


 アグロは新聞を畳み、依頼書へ視線を落とした。


 また一つ。

 死神の仕事が始まる。


 * * *


 ――知ってるか?

 スラム六十六番地の片隅に、小さな死神事務所があるらしい。

 依頼さえあれば、どんな怪物だろうと狩りに行く。


 そこにいるのは。


 お喋りなバイクに跨り、錆色の鉄仮面を被った、とびきりハードボイルドな死神。

 ……らしい。


 聞いた話じゃ、()()()()()()なんだとか。

 事務所で飼ってるって聞いたぞ。

 この前なんて、ハンバーガー屋で律儀に列へ並んでるところを見たって奴もいた。

 案外、普通の男なのかもしれない。


 いや。

 普通のやつは、死神なんてやらないよな。


 乾いた風が、今日もスラムの路地を吹き抜ける。

 誰かが笑い。

 誰かが泣き。


 そして今日もまた、どこかで一つ。

 新しい悲鳴が産声を上げる。


「キャシー――執行(ショータイム)だ」

『ええ、アグロ!』


 グオンッ――!!

 エンジンが低く唸りを上げる。


 ダークオリーブのトレンチコートが風を纏い、一台と一人は街へ飛び出した。


 死神アグロ。

 錆色の処刑人。


 彼は今日も街を――そして世界を駆け巡る。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

これにて、死神Killerは完結となります!

ここまで読んでくださり、ありがとうございましたm(__)m

少しでも面白い、と思っていただけましたら、評価や感想など、お気軽にいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ